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nukkamさん
平均点: 5.44点 書評数: 2849件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.229 6点 奇蹟のボレロ- 角田喜久雄 2011/05/06 11:25
(ネタバレなしです) 1948年発表の加賀美捜査課長シリーズ第2作で、同じシリーズ作品でも「高木家の惨劇」(1948年)とは趣きが異なる作品でした。アリバイトリックものという点では共通していますが、容疑者全員が椅子に縛り付けられていて動けなかったというアリバイは古今東西例を見ないのではないでしょうか。前半は音楽界を舞台にしたプロットですが、中盤以降は奇術色が濃くなるのも特徴です(ある奇術の図解入り解説まであります)。トリック自体はそれほど優れたものとは思いませんが、複雑な人間関係が絡むどんでん返しはスリリングな謎解きを生み出しています。角田喜久雄(1906-1994)はミステリーよりも時代小説の方が多く、この魅力的なシリーズも長編2作と短編7作のみで終わってしまい、ミステリー作家としては同時代の横溝正史や高木彬光ほどの名声を得られませんでした。

No.228 6点 死が二人を別つまで- ルース・レンデル 2011/05/06 09:36
(ネタバレなしです) 1967年に出版された本書はウェクスフォードシリーズ第2作目にして異色作ともいうべき作品。解決済みの事件を再度調べ直す本格派推理小説は、アガサ・クリスティーの「五匹の子豚」(1942年)や「マギンティ夫人は死んだ」(1952年)、エラリー・クイーンの「フォックス家の殺人」(1945年)、レジナルド・ヒルの「甦った女」(1992年)などいくつもありますが、最初に解決していたのが名探偵(ウェクスフォード)という設定が非常に珍しいです。17章の最後で明かされた真相には肩透かしと感じる読者もいるかもしれませんが、ウェクスフォードを第三者の視点から描写したり、アマチュア探偵の何とも心もとない行動を描いたりと本書ならではの読みどころが沢山あります。

No.227 5点 マスグレイヴ館の島- 柄刀一 2011/05/06 09:12
(ネタバレなしです) 2000年発表の第6長編にあたる本格派推理小説で、光文社文庫版の(乾くるみの)巻末解説によれば重厚でとっつき難いというイメージを打破する作品とのことですが、確かにそれまでの作品に比べれば読みやすいです。とはいえ文章が平明過ぎるというのか、物語としてのメリハリがなくて盛り上がりを欠いています。密室内の墜落死とか食料に囲まれた餓死者とか謎の魅力は十分以上で、更には「読者からの挑戦状」(「読者への挑戦状」ではありません)に大胆なトリックなど本格派推理小説の傑作となり得る要素は持ち合わせているのですが小説として味気ないのが大変惜しまれます。人称切り替えの導入も実験精神は評価されてもいいかもしれませんけど、それほど効果的ではなかったように思います。

No.226 7点 サンタクロース殺人事件- ピエール・ヴェリー 2011/05/06 08:35
(ネタバレなしです) 1934年発表の本書は7つの長編に登場する弁護士プロスペール・ルビックを探偵役にした代表作で、1941年には映画化もされています。犯人当て本格派推理小説としてはアンフェアな部分があり、自力で謎解きをしたい読者は少なからず不満を覚えるかもしれません。しかしその欠点を補って余りあるほどの魅力があり、ファンタジーとミステリーの融合という点ではかなりの成功を収めた作品と言えるのではないでしょうか。舞台が田舎町なので大都会のような派手なイルミネーションや巨大なツリーこそありませんが、昔風のクリスマスの雰囲気が豊かです。子供たちが遊びまわり、城館での舞踏会があり、当然サンタクロースも登場します。お約束事の雪もちゃんと降っています。謎解きとしても凝っていて、シンプルなプロットの裏に豊富なトリックと思わぬどんでん返しが仕掛けてあります。子供が読んでも大人が読んでも楽しめます。

No.225 6点 丹波家の殺人- 折原一 2011/05/06 08:06
(ネタバレなしです) 1991年発表の黒星警部シリーズ第3作ではありますが丹波家の人々の描写が中心で黒星の登場場面が少ないためかユーモアがほとんどないのが珍しいといえば珍しいです。ユーモア不足は通常なら弱点ではないのですけれど、このシリーズが好きな読者には物足りなく感じるかもしれません。もっとも丹波家の描写も意外とあっさりしていて、個性が記憶に残りません。その分すらすらと読めるのですから一長一短かもしれませんが。本格派推理小説としてはどんでん返しの謎解きが効果的で、密室トリックもややご都合主義的なところもあるけれど十分に合理的だと思います。

No.224 5点 死体が歩いた- ロイ・ウィンザー 2011/05/06 07:49
(ネタバレなしです) ロイ・ウィンザー(1912-1987)は米国の放送作家として有名ですが本格派推理小説も3作書いており、本書は1974年発表のアイラ・コブシリーズ第1作です。事故で即死したと思われる死体が現場から離れた池の中で発見される事件を扱い、大変魅力的なタイトルだと思いますが(英語原題もずばり「The Corpse That Walked」です)ジョン・ディクソン・カーのように不可能トリックに挑戦とかオカルト風な演出があるわけではありません。誰も死体が歩くなど本気で考えず、誰が何のために死体を移動させたかを議論しているオーソドックスなプロットの本格派推理小説でした。犯人当てとしては可もなく不可もなくといったところですが、犯人の正体が判明した後に「死体が歩く」謎が再度脚光を浴びる構成と皮肉な真相は印象的です。せっかくナンタケット島を舞台にしているのですからもう少し島の風土描写に力を入れてほしかったです。

No.223 5点 ダージリンは死を招く- ローラ・チャイルズ 2011/05/06 07:36
(ネタバレなしです) 米国の女性作家ローラ・チャイルズが2001年に発表したミステリー第1作です。冒頭に置かれた作者の献辞文を読むと、心理サスペンスの巨匠メアリ・ヒギンズ・クラークを尊敬しているようですが本書はサスペンス小説ではなく、コージー派ミステリーです。ティーショップを経営するセオドシアが探偵役ですが推理要素は少なく、場当たり的に解決してしまうので本格派推理小説の謎解きを期待するとがっかりするかもしれませんが、叙情的と言ってもいいほど繊細で色彩的な文章は大変魅力的で、まさに紅茶を飲みながら読むのには最適の一冊かと思います。

No.222 6点 湯殿山麓呪い村- 山村正夫 2011/03/10 08:05
(ネタバレなしです) 作者の最も有名なシリーズ探偵は滝連太郎ですが、その中でも1980年発表の第1作である本書は映画化もされたほど有名です。結核で早逝した音楽家の瀧廉太郎(1879-1903)を連想させる名前ですが、こちらの探偵は巨漢で大食漢という面白い設定です。横溝正史の伝奇本格派推理小説を継承したいという意欲が滲み出ており、伝奇要素と現代要素が巧みに融合されています。謎解き伏線も丁寧に張ってあり、ミステリーを読み慣れた読者には犯人当てとしてはやや容易に感じるかもしれませんが、難易度はほどほどの方が幅広く読者受けしやすいと思います。ただ重苦しい余韻を残す結末は好き嫌いが分かれそうですが。

No.221 5点 列車消失- 阿井渉介 2011/02/26 01:57
(ネタバレなしです) 1990年発表列車シリーズ第5作の本格派推理小説で、島田荘司の「奇想、天を動かす」(1989年)に触発されて書かれただけあって謎の凄みでは勝るとも劣らない作品です。走行中の列車から車両1台が抜き取られた?列車に飛び込んだばらばら死体の胴体だけがはるか離れた場所に出現して列車を再停止させた?列車の中に運び込まれた胴体が今度は大勢の目撃者の前を歩きだす?(手足がないので「歩く」という表現には微妙な違和感もありますが)、等々。とはいえ犯人当てとして楽しめるプロットではない上にトリックについても不満点が多く、竜頭蛇尾の感が強く残ってしまいましたが。人物描写も個性がなく、せっかくの複雑な動機が読者の心に訴える力が弱いのも惜しいです。

No.220 6点 「独り残った先駆け馬丁」亭の密会- マーサ・グライムズ 2011/02/15 20:28
(ネタバレなしです) 1986年発表のリチャード・ジュリーシリーズ第8作はこれまでのシリーズ作品でもっともコンパクトですが内容的には十分面白く、名作「『「跳ね鹿』亭のひそかな誘惑」(1985年)とは別の意味で劇的な結末は強く印象に残ります。とはいえ謎解き説明が一部曖昧なままに感じられたのは残念です。自分の理解力不足を棚に上げますが、私のようなお馬鹿な読者でもわかるような明快な説明をしてほしかったです。

No.219 6点 フェミニズム殺人事件- 筒井康隆 2011/01/27 20:25
(ネタバレなしです) SF作家として有名な筒井康隆(1934年生まれ)は1970年代からSF以外の領域にも意欲作を多数発表するようになり、ミステリーの分野にも進出します。1989年発表の本書は雑誌掲載時には「読者への挑戦状」が挿入された正統派の本格派推理小説です(私の読んだ集英社文庫版では挑戦状は削除されています)。フェミニストの女性が登場しますが常識的な人間として描かれており、他の人物の方がよほどエキセントリックに映りました。お堅い学識的な部分もありますが一方で美味しそうな料理や色彩的なファッションの描写にも冴えを見せている作品です。多少強引な推理もありますが謎解きもしっかりしています。

No.218 8点 オリエント急行の殺人- アガサ・クリスティー 2011/01/25 16:57
(ネタバレなしです) 世界で最も有名な国際列車オリエント急行を舞台にした1934年発表のエルキュール・ポアロシリーズ第8作はアンフェアと批判されても仕方のない仕掛けの本格派推理小説です。しかしやはりこのアイデアの衝撃度は半端でなく、フェアかアンフェアかという問題さえどうでもよくなってしまいそう。好き嫌いはもちろんあるでしょうが、本書を推理史に残る傑作(或いは問題作)と位置づけられのに異議ありません。事情聴取場面が単調な繰り返しになって中盤まで読みにくいのはつらく、そこがちょっと減点理由です。

No.217 5点 狐の密室- 高木彬光 2011/01/25 16:25
(ネタバレなしです) 1977年発表の本書は神津恭介と大前田英策の共演作品(前者にとってはシリーズ第13作、後者にとってはシリーズ第4作で最終作)で、雪密室が登場するなどネタ的にはかなり面白そうですが思ったよりも淡白な本格派推理小説でした。もともと派手な言動とは縁遠い神津恭介の天才ぶりを際立たせるのは簡単ではないのですが、本書の合理的だけど小粒なトリックでは謎解きのカタルシスを得るのは難しいです。他の作品感想で駄目ワトソン役の松下研三の大袈裟な驚きぶりを私はあまりにも不自然だと何度か批判していましけど、彼が登場しないとそれはそれで何か物足りないですね(笑)。

No.216 5点 パーフェクト殺人- H・R・F・キーティング 2011/01/25 15:04
(ネタバレなしです) 1964年に発表された本書はゴーテ警部シリーズ第1作の本格派推理小説でCWA(英国推理作家協会)のゴールド・ダガー賞を獲得した本格派推理小説です。近代捜査法を導入しようとするゴーテ警部がインド社会の伝統や因習の前に悪戦苦闘して捜査が思うように進展しないのを面白おかしく描いているのがユニークです。例えばゴーテ警部の取調べをのらりくらりとはぐらかす事件関係者が「〇〇のお告げ」の前では「青菜に塩」状態になってしまう場面なんかは結構楽しめました。ただ謎解きとしては結末が腰砕け気味なのが残念で、ゴールド・ダガー賞は過大評価ではないかと思いますが。

No.215 5点 白と黒- 横溝正史 2011/01/25 14:49
(ネタバレなしです) 1960年発表の金田一耕助シリーズ第24作の本格派推理小説ですが当時台頭してきた社会派推理小説を意識したような作品でもあり、集合住宅とその住人たちの人間関係を重厚に描いた異色作です。金田一耕助シリーズでこのような都会風な作品が書かれるとは驚きです(都会風といっても洗練とかお洒落とかとはちょっと違いますが)。シリーズ中最も大作のボリュームですが人間関係を複雑にし過ぎて謎解きのサスペンスが少ないのが惜しまれます。

No.214 8点 乙女の悲劇- ルース・レンデル 2011/01/25 12:52
(ネタバレなしです) 1978年に発表されたウェクスフォード警部シリーズ第10作の本格派推理小説です。犯人の正体にはそれほど驚きませんでしたが(でも私は当てられませんでした)、逮捕後にウェクスフォードが酒場で語る真相には驚きました。実際にあった事例まで紹介しての推理は個人的には十分納得できるものでした。「罪人のおののき」(1970年)と「偽りと死のバラッド」(1973年)で私が感じた不満点を解消しており、お気に入りのシリーズ作品です。

No.213 6点 招かれざる客- 笹沢左保 2011/01/25 11:46
(ネタバレなしです) 生涯に350作以上の作品を世に出した笹沢左保(1930-2002)の1960年発表のデビュー作で本格派推理小説です。犯人の正体は早い段階で見当がついてしまい犯人当てとしては楽しめませんが、メインの謎解きであるアリバイ崩し以外にも凶器、暗号、動機など実に様々な工夫が織り込んであり推理も丁寧です。デビュー作ゆえかまだ文章にロマンは感じられず、特に報告調の前半はむしろ素っ気無いほどですが謎解きの魅力で最後まで押し切ったような印象を受けました。

No.212 4点 象は忘れない- アガサ・クリスティー 2011/01/25 11:39
(ネタバレなしです) 1972年発表のポアロシリーズ第32作となる本格派推理小説です。この後シリーズ最終作として「カーテン」(1975年)が出版されましたがそれは死後発表用として(結果的には存命中に発表しましたが)ずっと以前に書かれており、執筆順としては本書が最後に書かれたシリーズ作品です。後期の作者が得意とする「回想の殺人」を扱っていますが沢山の容疑者の中から犯人を探す通常タイプのミステリーではありません。12年前に崖の上で撃たれた死体となって発見された夫婦のどちらが相手を殺したのかという風変わりな謎解きになっています。謎解きに関しては不満点が多く、特にコナン・ドイルの某作品のネタをそっくりそのまま使っているのはいかがなものかと。とはいえ本書で作者が試みたのは人間ドラマとしてどう決着させるかであり、そのために真相がご都合主義的になったのも納得できました。ルース・レンデルの「死が二人を別つまで」(1967年)をちょっと連想しました。

No.211 7点 仮面舞踏会 伊集院大介の帰還- 栗本薫 2011/01/24 11:24
(ネタバレなしです) 「天狼星」三部作で作風の大きな変更を見せた伊集院大介シリーズですが、「伊集院大介の帰還」の副題を持つ1995年発表のシリーズ第8作の本書は本格派推理小説の良作です。ネット社会が描かれていますがネットに精通していない私でも十分楽しめた内容でした。顔の見えない人間同士の微妙な人間関係と犯罪の原因となりかねない危険性を提言した社会派推理小説要素もあり、また新手の安楽椅子探偵ものとしても評価できると思います。ただネット会話の言葉遣いがあまりにも乱暴で時に低俗になるのは少々うんざりしましたが(それもある意味リアルさを感じさせますけど)。

No.210 7点 蛇は嗤う- スーザン・ギルラス 2011/01/20 18:01
(ネタバレなしです) 英国の女性作家スーザン・ギルラス(1911-没年不詳)については経歴がそれほどはっきりしていません。世代的にはエリス・ピーターズ(1913-1995)に近いのですが亡くなるまで執筆を続けたピーターズに対してギルラスは1950年代から1960年代までとごく限られた期間に7作品を発表したのみでした。そのミステリーはライアン・クロフォードとゴードン警部を主役にしたシリーズですが最終作(つまりシリーズ第7作)となった本書(1963年出版)を読む限りではかなりの実力を感じさせる作家です。抑制の効いた異国情緒と個性的な人物描写の組み合わせが魅力的です。陰謀の影がちらつくスリラー小説風な雰囲気と本格派推理小説としてのしっかりした謎解きプロットのバランスも絶妙で、これはなかなかの掘り出し物でした。モロッコのタンジールを舞台にした本格派推理小説というとカーター・ディクスンの「赤い鎧戸のかげで」(1952年)がありますが、文体は異なれど結構共通する描写もありますので比較しても面白いかも。ロマンチックな幕切れも印象的で、続編が書かれなかったのが非常に残念です。

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nukkamさん
ひとこと
ミステリーを読むようになったのは1970年代後半から。読むのはほとんど本格派一筋で、アガサ・クリスティーとジョン・ディクスン・カーは今でも別格の存在です。
好きな作家
アガサ・クリスティー、ジョン・ディクスン・カー、E・S・ガードナー、D・M・ディヴ...
採点傾向
平均点: 5.44点   採点数: 2849件
採点の多い作家(TOP10)
E・S・ガードナー(82)
アガサ・クリスティー(57)
ジョン・ディクスン・カー(44)
エラリイ・クイーン(43)
F・W・クロフツ(32)
A・A・フェア(28)
レックス・スタウト(27)
ローラ・チャイルズ(26)
カーター・ディクスン(24)
横溝正史(23)