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[ 本格/新本格 ]
悪霊館の殺人
弥生原公彦シリーズ
篠田秀幸 出版月: 1999年04月 平均: 7.00点 書評数: 4件

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角川春樹事務所
1999年04月

No.4 4点 nukkam 2011/09/29 14:02
(ネタバレなしです) 問題作と評価された「蝶たちの迷宮」(1994年)から5年を経て1999年に発表された、弥生原公彦シリーズ第1作の「読者への挑戦状」付き本格派推理小説です。タイトルといい、本の分厚さといい二階堂黎人の「悪霊の館」(1994年)を意識した作品かと思いましたが意外と共通点はありませんでした。それどころか舞台があちこちと変わるので悪霊館の存在感が希薄でした。重厚長大な物語の中に多くの謎と仕掛けを用意した力作なのは認めますが、小粒な謎解きの積み重ねに終始してしまった感があります。せめて1つぐらいインパクトのある手掛かりか推理があるだけでも随分と読後の印象が違うのですが。

No.3 9点 測量ボ-イ 2009/10/09 19:47
大作、かつ力作、秀作です。
導入部からの展開、怪しげな人間関係の中で起こる連続殺人、
そして「読者への挑戦」、探偵と真犯人の対決から意外性を
含む解決まで、探偵小説の王道を行く作品であり、僕の好み
の範疇にかなり近い作品です。
事件解決の鍵となる「心理の矛盾点」の解釈にやや不満(人
の主観が大きい?)があるも、さしたる減点要素ではありま
せん。

氏の作品は、デビュ-作の印象が良くなかった為長い間遠ざ
かっていましたが、このレベルの作品を書いてくれるのなら
以後も見逃せないです。
大満足の作品です。「一作家一作品」に限定すれば、国内編
のマイ・ベスト10に入れても良いかも。

No.2 7点 江守森江 2009/09/19 08:27
名探偵・弥生原公彦シリーズ第一弾。
シリーズ全作が好物の"読者挑戦物"である事を知り順次読破する事にした。
乱歩、横溝、彬光、安吾、クイーン、ダイン他諸々の古典的傑作群から(トリック〜犯人指摘の論理まで)良いとこ取りし、現代風にアレンジした作品。
嗜好のド真ん中である懐かしの「探偵小説」現代版復活を目論んだ作者を賞賛し本来なら、客観的評価の満点(8点)を献上したいが、解決編を含め所々で既読感(特に安吾「不連続〜」)を感じる不満があり減点(-1点)した。
決して読みにくい訳ではないが、詰め込み気味でボリュームがあり、随所に細かな伏線が張られ、挑戦を受けて立つと読み飛ばし出来ない為、読書体力を要する。
私には、それも心地よい疲労感ではあった。

No.1 8点 E-BANKER 2009/08/16 00:44
弥生原公彦シリーズ。
横溝作品に深く影響された作者こだわりのシリーズ第1作。この後10作近くシリーズは継続されますが、本作がNO.1の出来なのは衆目が一致するところ。
平成5年7月下旬に始まり、ひと夏かけて不気味に進行した挙句、9月14日の深夜、ある悲劇とともに突如として終結した「小此木家霊魂殺人事件」。白マスク男、密室殺人、交霊会、幻影の塔・・・次々と現れる謎に挑む、精神科医にして名探偵の弥生原公彦。複雑にして因縁絡む人間模様に潜む遠大なる
罠とは何か?・・・実に魅力的です。
とにかく、過去のいろいろな作家の「いいとこどり」をしたような作風。であれば、当然素晴らしい作品になっているはず。(「いいとこどり」ですから)
これは別に皮肉でもなんでもなく、確かに重厚かつサプライズ十分な作品に仕上がってます。おまけに「読者への挑戦」までも挿入するサービスぶり・・・
まさに、平成の現世に、古き良き探偵小説を蘇らせたいと願った作者の思いは叶ったといっていいでしょう。
特に、ラストの真犯人指摘のシーンは、良質なミステリー特有の緊張感、何ともいえないワクワク感を満喫できます。
というわけで、マイナーな作家ではありますが、本格ファンであれば、是非手にとって欲しい作品という評価となります。
(ワトスン役の築山の造形がちょっとウルサイ。あまりにも凡人に書かれているので、読んでてちょっとかわいそうになる。石岡和己と同じですね)


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