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toukoさん
平均点: 6.16点 書評数: 241件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.101 7点 新世界より- 貴志祐介 2009/11/30 21:26
SFではよくあるテーマを扱っているのですが、冒頭はまるで和風ハリポタ。児童文学風の文体、刺激的でゲームちっくなイベント・戦闘てんこもりで、リーダビリティはすごく高い。かなりの枚数の長編ですが、あの手この手で楽しませてくれるので、飽きません。
ラストはたいていの読者は予測出来るであろう、某古典映画を思い起こさせるお約束の展開……とはいえ、未来人である主人公たちは過去と断絶しているので、真相を知ったらどう反応するのかにワクワクすることはできます。
謎より、倫理的な命題について考えさせられる作品でした。

No.100 5点 ミミズクとオリーブ- 芦原すなお 2009/11/30 21:12
男性にとっては理想的な伴侶像なのでしょうが、どうしても奥さんがサザエさんのフネさんでビジュアルが浮かんできてしまいました……でも天然ボケのダンナさんは波平氏ではなくマスオさんで浮かんでくる(笑)。
夫婦というより母子っぽい関係だからかな? 夫婦なら男性にとっては美化された理想なんだろうけど、こういう感じの母子ならば現実にもいそうだしなあ……それでも、あまりに浮世離れしているので、最初は猟奇的な設定での脳内奥さんの話? とか、絶対裏があるはず、騙されないぞ! なーんて構えてしまったくらいです(近年のミステリに毒されすぎですね;)
このノスタルジックでふんわりほっこりしつつも、どこか強烈なフェティシズムを感じさせる世界は、疲れている中高年男性のための萌え系ライトノベルってとこなんだろうなあ。

文庫本の解説にもあったけれど、男性はかくも女性のことを知らないというのにはびっくり。
そういう作者が書いているんだから仕方ないと言えば仕方ないんですが、ミステリに絡めて女性ならではの視点を提示する役でもあるはずの奥さんが女としてありえない言動が多々あるのはどうかと……たとえばファウンデーションは普通、下着のことを言うので、メーク用品ならファンデーションと言って欲しかったなあ(笑)。

No.99 7点 クリムゾンの迷宮- 貴志祐介 2009/11/30 21:03
すごく面白いとは思うんですが、ミステリー要素は皆無に等しいし、ラストは肩透かしなので、このサイトではこのくらいの点数にしておこうかな?

大風呂敷広げて、思わせぶりな伏線は回収しないんだけど、読んでいる時はメチャ面白いって、なんか浦沢直樹の漫画みたいかも!?

No.98 6点 七回死んだ男- 西澤保彦 2009/11/26 21:27
現実ではありえないルールを1つ付加した上での本格ミステリー。
そのありえないルールがありになれば、他にいくらでもやりようがあるだろうってところを回避するための描写が強引すぎる上にくどすぎ。
とはいえ、うまくまとまっていると思います。

No.97 5点 十字屋敷のピエロ- 東野圭吾 2009/11/26 21:06
うーん、ピエロ視点かあ……某後発作品のカカシ視点みたいに視点自体にオチがあるわけでもないし、全体的に平板で盛り上がらない感じがして、個人的にイマイチでした。

No.96 7点 チーム・バチスタの栄光- 海堂尊 2009/11/26 20:58
第一作はそれなりに時間をかけて、書いたのでしょうか。

現役医師である作者が、医療を取り巻く状況に対して物申すために、キャラクター小説&サスペンスの形式を明らかに利用するようになってからは、その熱い主張はともかく、文章は読みづらいし、プロットはいきあたりばったりだし、ギャグもすべっていて寒いしで、ちょっと……というのも多いのですが、これは万人が楽しめるエンターティメントに仕上がっていると思います。

No.95 8点 法月綸太郎の功績- 法月綸太郎 2009/11/22 00:13
設定も人物もトリックも無理がなく、読みやすく、楽しめる作品ばかりでした♪

No.94 6点 頼子のために- 法月綸太郎 2009/11/22 00:11
ハードボイルドよりは本格や探偵小説の古色蒼然とした様式美の方がはるかに好きな私でも、文庫本版のハードボイルド好きで本格嫌いの方の解説にあったように、もしこの作者は本格を意識しなければ、もっと登場人物の心理を書き込め、不自然さが軽減されるタイプの作家だというのであれば、本格にこだわらなくてもいいように思いました。
読者に動機や犯人を見抜かれないために、こんな無茶な人間関係を表面的になぞっただけで終わるなんて、後味悪いですよ……オチも安直だし。

とはいえ、本格と人間ドラマを両立させることだって出来るということは、この作家は他作品で実証していると思います。

No.93 5点 邪馬台国はどこですか?- 鯨統一郎 2009/11/17 20:43
ここでの評価が高かったので読んでみたのですが、設定やキャラが安直すぎるので、ただトンでもネタだけをポンと投げ出されても……って感じで、あまり楽しめませんでした。

この本はまがりなりにもエンタメフィクションなのに、真剣にこの手の説を唱えているノンフィクションーいわゆるトンデモ本やムーなどのオカルト雑誌の類ですら、これに比べれば、読者を説得するために(あるいは騙すために)語り口や構成を工夫したり、自説に都合のいい恣意的な資料の提示にしても、いかにそれと気づかせず、もっともらしく思わせりぶりにやっているんじゃないか? と思えるくらい、そのまんま、なんだもの。
書きようによってはいくらでも面白くなりそうなのに(純粋にアイディアだけならベストセラーになった松本清張の「陸行水行」や「ダヴィンチ・コード」に匹敵しそうなのもあるので)、酒場での与太話という動きのない設定+古典的探偵小説における全知全能の神的な存在である真実を提示する探偵役(しかも安楽椅子探偵)と化している主役のキャラがまったく立っていないせいか、これじゃあ電波な人がただ演説しているだけじゃん……3人いる聴衆のうち、1人はただいるだけだったりとまったく使いこなせていないし。

奇想とアイディアに溢れた短編集だけに、バカネタこばなしとしてだけ浪費してしまうのはもったいなく思いましたが、新人時代の作品らしいので、アイディアはあっても、それをいかす筆力がない(なかった)ってことなのでしょうか。

No.92 7点 オルファクトグラム- 井上夢人 2009/11/17 19:30
異常に嗅覚の鋭い主人公のサスペンスと言えば、一般的にまず思い出されるのは、映画化もされた戦後ドイツ最大のベストセラー、パトリック・ジュースキンドの「香水ーある人殺しの物語」ではないかと思います。
「香水」は個人的に大好きな作品ではありますが(もし点数つけるなら10点です)、中世を舞台に異常嗅覚ゆえに猟奇殺人犯となる主人公の特異な精神世界を嗅覚に関しては正攻法で描いた、ダークで重い寓話仕立ての作品で、この「オルファクトグラム」はまるでポジネガのように、猟奇殺人犯を追い詰める役が主人公の明るくライトで前向きで現代的な風俗描写の多いSF仕立てのサスペンスです。嗅覚の世界を視覚であらわしているところもユニーク。
あまりに好対照なので、作者は言及していませんが、「香水」も意識して書いたんじゃないかな……もしそうだったら、通り一遍に過ぎる猟奇殺人犯の描写も、もうちょい頑張って欲しかったかも。
いっそ追い詰める方も犯人も異常嗅覚者だったら面白かったのに……なーんて、この設定では無理だろうけど。

それでも嗅覚という普通の人間にとってあまり意識されない世界を描いた話は面白いものですねえ。

No.91 6点 四隅の魔- 三津田信三 2009/10/01 20:31
このシリーズは、オカルト好きのティーンズ向けのライトノベルだと思います。
そういう観点から評価すれば、よく出来ている方なんじゃないかと思うんですが、今時のラノベにしてはちょっと地味?

No.90 8点 時計館の殺人- 綾辻行人 2009/10/01 20:28
館シリーズは20世紀に出たものは当時、全作、読んでいたと思いこんでいたのですが、これだけ読んでいなかったことに最近、気づきました;

館シリーズの中では、なぜこんな妙な館なのかに一番説得力があり、メイントリックには驚かされましたが、殺戮マシーンと化していたわりに、犯人像と動機がちょっと弱いかな……もっと狂気を感じさせて欲しかったかも。

No.89 7点 魔神の遊戯- 島田荘司 2009/09/27 20:18
あら、やられた……セオリー通り、犯人と思しき人物は除外するとして、これだけのヒントと違和感バリバリの記述があれば、当然わかるはずの真犯人が見抜けませんでした;
脳科学の専門家という設定ではありますが、結構いい加減なのはともかく、アル中の作家のキャラやその他のキャラも立っていて、楽しめました。

No.88 7点 女王国の城- 有栖川有栖 2009/08/31 21:27
楽しめたし、トリックや動機も納得できるものだったのですが、いかんせん無駄に長いです。
本筋と関係ない脱線が多すぎで、それがまた、特に作者の思いいれや見識も感じられず、本編との関連性もない有名作品のただの引用や解説に過ぎないので、基本的には脱線や薀蓄が好きな私でも、このあからさまな枚数稼ぎと本の重さには閉口しました。

出版社との約束等で、どうしてもこの長さが必要だったのかもしれませんが、それならもっと工夫して欲しかったです。

それにしても、人気作家のシリーズものの久々の書き下ろしって、こういうパターン(枚数稼ぎ)が多いような……それでも既存のファンには歓迎されるし、売れるからなのかもしれませんが、作品完成度や新規ファンの開拓という面ではもったいない気がどうしてもしてしまいます。

No.87 5点 竹馬男の犯罪- 井上雅彦 2009/08/27 22:33
江戸川乱歩とかが好きな人にはお勧め。
ですが、レトロな少年向け怪奇小説調の設定と暴走族等のエピソードがミスマッチで、世界に入っていけず、つくりもの感が鼻について、個人的にはイマイチでした。

No.86 7点 悪意- 東野圭吾 2009/08/27 22:29
よく出来ていると思うし、面白かったです。

No.85 6点 青の炎- 貴志祐介 2009/08/23 16:00
つまらなくはなかったのですが、主人公に感情移入も同情も出来なくて……。
映画の方が、各キャラに好感が持てて、よかったかも。

No.84 5点 ラットマン- 道尾秀介 2009/08/23 15:52
1時間強で読めてしまう読みやすさとライトさ、ドンでん返し、欝展開からなんとなくいい話に回収されるラストと、売れ線要素がたっぷりなのに、これは惜しいところで失敗作になっていると思います。
男性にしかウケない危険あり。


ネタバレ注意かな?


作中にもありましたが、姉と妹に有意差がないので、若い方に流れただけの印象になってしまっているんですよね……10年以上付き合った30女を捨ててこの展開って、女性読者を敵に回しかねませんって(笑)。
もっとどうにでも描きようがあったろうに。。

No.83 6点 ハリウッド・サーティフィケイト- 島田荘司 2009/08/22 17:37
ハリウッドセレブのスキャンダルを書いた本は数あれど、日本の中年男性作家の手にかかると、スポーツ新聞のエロ小説コーナーにでも連載してたのか!? と思えるほど、おやぢ向けの俗っぽいエログロ描写に……そのへんは若干辟易しましたが、みんな大好き・ありがち○○○陰謀論からケルトの薀蓄、最先端医療等を強引な設定・展開に結びつける手法や団塊特有の暑苦しい主張等、いかにもーな島田節が堪能できました♪
IQ200以上(測定できるのか!?)の登場人物たちの話のわりに、真剣に読むと、確実にIQが低くなっていきそうな作品(笑)、ではありますが、この天然なトンデモっぷりと大風呂敷の広げ方(回収の仕方も)は個人的に好き。

で、私もレオナと同じことをずっと疑っていたんですが、弁護士の派遣のくだりで否定されたとばかり……レオナの女優っぷりに騙された!

No.82 10点 海を見る人- 小林泰三 2009/08/19 21:34
悪夢のようなグロテスクなホラーをメインに、SFやミステリと多彩なジャンルの本を出している作家の、この本はハードSFの短編集です。
ですが、この作家のミステリとして出された本は、私には全部つまらなかったので; 大好きなこの本を登録してみました。

この中に収められている「独裁者の掟」がミステリにはよくある手法、そしてSFにもよくあるアイディアを使っているのですが、これが素晴らしい出来栄えで、その手のミステリの手法なり、SF的アイディアは、この作品を世に誕生させるために創案されたのだ……と思ったくらい!?(大袈裟)
ミステリとして書かれているわけではないので、フェアではないかもしれませんが、この感動や切なさは、あるトリックがなければ、成立しなかったと思うと、いやもうミステリに感謝です!?

その他の作品もいつものグロさもなく、むしろ泣ける話までありますし、数式だけで成立するというフェアな作品(?)もあったりして、ロジカルなものが好きな人には、SFですが、読みやすいんじゃないかと思います。

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toukoさん
ひとこと
ミステリマニアではないんですが、読書は大好きで、特にジャンル問わずなんでも読みます。ミステリもそれなりに読んできているとは思うんですが、内容をすぐ忘れてしまうのが難点……。
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