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makomakoさん
平均点: 6.17点 書評数: 876件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.116 6点 死神の座- 高木彬光 2010/02/17 18:44
 30年ぶりぐらいに読み直してみた。ストーリーはすっかり忘れて再読という感じではなくそれなりに楽しめた。逆に言えばはじめて読んだときの感想がほとんど心に残らなかった作品とも言える。
 占星術、かぐや姫のパロディー、さまよえるオランダ人、暗号解読と盛りだくさんそして舞台は昔懐かしい軽井沢とサービスがしてある割にはもうひとつ内容の濃さが感じられない。目だったトリックがなくストーリがやや単調だからなのかもしれない。推理小説としては正統的で読んでいて決して不愉快でもなく退屈でもないのでまずますといったところ。

No.115 8点 過ぎ行く風はみどり色- 倉知淳 2010/02/11 15:37
 きちんとした推理がありトリックもちゃんとしている。人物もそれなりに描いてあるしロマンチックなところにも過不足ない。猫丸先輩はあまり好きな探偵ではないが、でも嫌いでもない。霊媒やそれを暴こうとする超常現象の研究者など怪しげな人物も登場しなかなか面白い。読後感も悪くない。
 要するによく出来た推理小説なのだと思う。今まで読んだ倉知淳の小説の中で一番よかった。なのに満点でないのはすべてに平均点以上といった優等生的なところでインパクトに少しかける気がするからかな。

No.114 6点 林檎の木の道- 樋口有介 2010/02/07 09:14
 「ぼくとほくらの夏」とほとんど同じ感じ。登場人物も名前は違うが原則的に同じ。もちろんストーリーは違うのだが続けて読むと何だか同じ小説を繰り返し読んでいるような感じになる。シリーズものならだんだん主人公や周辺の人たちに愛着を感じるてくることも多いのだが、違う小説で同じような内容だと作者の限界を感じてしまう。
 読書感のよい小説なのだが二番煎じといった感じを受けたので評価はこの程度。

No.113 9点 エコール・ド・パリ殺人事件- 深水黎一郎 2010/01/27 23:09
 面白かった。エコール・ド・パリの絵画と事件が密接に結びついていて、びっくりするような手段が用いられていたりして、そしてなによりエコール・ド・パリ派への主張のある解説にもなっていたりして、ちょっと得をしたような気分にさせられる。私は絵画が好きなのでとても楽しく読みました。

 スーチンはどうかなあ。あんなへんてこな絵を飾っていつもみていたら頭が変になりそう。佐伯も個展で沢山の作品をみたときには暗くて重い訴えが強烈でぐったりしてしまった。家に飾るならやっぱりモジリアニのほうが良いが、といういのは素人の感覚なのでしょうね。
 
 

No.112 6点 メビウス・レター- 北森鴻 2010/01/24 15:10
入り組んだ構造でいろいろなトリックが盛り込まれたかなり複雑なストーリー。この頃の作者はまだ若く懸命に考えて書き込んだことは間違いないが、だからこそミステリー好きのなかでも好き嫌いが分かれそう。悪くはないと思うが、私としてはもっと後の北森の作品のほうが好きかな。

No.111 8点 ぼくと、ぼくらの夏- 樋口有介 2010/01/20 21:07
こういった青春春推理小説は何といっても爽快さと若さゆえのほろ苦さにどれだけ共感できるかが私にとって大切なところ。そういった観点からするとこの小説はとても共感できる。読み始めるとなかなか止まらず久しぶりに深夜まで読みふけってしまった。作者が同世代でもありそういった共感度が高いこともあるかもしれない。
 多少の違和感は高校生でみんながタバコを吸うは酒は飲むわといったところと主人公が高校生なのに恋人に対して実にさめた冗談をしばしば口にするところ。こんなかっこいい表現はもう少し経験をつまないと出来ないような気がするのだが(まあできるひともいるかもしれない。きっとそんな子はもてたんだろうなあ)。

No.110 8点 螢坂- 北森鴻 2010/01/17 10:22
 香菜里屋シリーズはきれいな表題名が多いが、「蛍坂」とはまたきれいな表題で内容もそれに劣らず美しい。「雪待人」もとても素敵だ。このシリーズのなかで最も美しい作品と思う。残念ながらその他の作品がやや落ちるので採点はこのぐらい。

No.109 8点 桜宵- 北森鴻 2010/01/17 10:14
 香菜里屋シリーズで出てくる謎は殺人などのような大事件はほとんど無い。すべて店に来る人が持ち込む日常に起こりうるような出来事を常連さんたちがいろいろ推理していき、最後に名探偵の店の主人が解決するというパターンの話。連作となると途中で飽きて仕舞いがちであるが、読み進むにしたがって常連さんたちが親しく感じられ、暖かくそして孤独で寂しい世界へ引き込まれる。作者の力量が高いのだろう。ちょっとはまってしまった。
 

No.108 9点 花の下にて春死なむ- 北森鴻 2010/01/13 21:49
短編連作推理ものは謎解きにかけるスペースが少ないのでどうしても問題と回答といった小説となりがちであまり好みではなかったが、この小説はとても切れ味がよくしかもかくし味も効いていて作者の力量が並々ならぬものであることを知らされた。

No.107 7点 吾輩はシャーロック・ホームズである- 柳広司 2010/01/13 21:36
パスティーシュは作者の思い入れがたっぷりと入るため、読むほうの感覚が一致しないとどうしてもしらけてしまう。この作品はよく出来ていると思うが、原作に対して私が抱いている感覚と多少異なるところもあるためかしっくりこないところもあった。面白いは面白いのですがね。

No.106 8点 深淵のガランス- 北森鴻 2009/12/31 09:28
このシリーズの探偵佐月恭壱は作者の薀蓄がたっぷりと入っているにもかかわらずいやみでなく、何となく暖かくしかも覚めて孤独な興味深いキャラクター。文庫本では表題作と血色夢の二つの中篇と凍月という短編が入っているが、深淵のガランスがことに好きだ。ストーリーもよいが雰囲気も楽しめる素敵な小説だと思う。

No.105 7点 月夜の晩に火事がいて- 芦原すなお 2009/12/29 19:16
作者得意の讃岐の田舎が舞台。登場人物が素直で好感が持てる。主人公ふーちゃんはちょっと気弱で心も病んでいる(ここがミミズクとオリーブとちょっと違う)が、何とか解決にたどり着くストーリー。その内容について巻末の解説者は「Yの悲劇」との関連をあげていたが、私はむしろ映画「シェルブールの雨傘」の影響があるのではないかと感じた。結構込み入ったストーリーなのにさらりと読ませるのは芦原すなおの良い所だろう。なかなかよい推理小説と思うが、あまりにも不要と思われるところが多くて結果として長すぎる小説となってしまった。ことに推理に大切な部分でとてもへんてこりんな表現しか出来ないおばさんとの会話が延々と続くのにはちょっと閉口した。これが減点でこの評価です。

No.104 7点 人形はなぜ殺される- 高木彬光 2009/12/23 19:27
30年以上前に読んだ小説だが、新装版が出ていたので懐かしく購入再読した。大分昔に読んだため犯人もトリックも大半は忘れてしまって新鮮な気持ちで読んでいたが、佳境に入ったところは覚えていてはじめて読んだ衝撃はやや少なかった。密室物のほうが時間トリックより好きなので刺青や能面のほうが好きではあるが、こちらのほうがさらによく出来た小説であることは間違いなく十分に楽しめた。

No.103 2点 三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人- 倉阪鬼一郎 2009/12/23 19:17
これはぜんぜん私の好みではない。トリックのみの小説は数学の問題集みたいなものだ。当然ながら登場人物の人間性など無くただの問題の数値のようなもの。トリックと伏線だけの小説とは私にとってはうそつきのいうこと長々と聞いているようなもので願い下げですな。この作者の評価が高い方もおられるがこういった小説はどうしても好みがはっきり分かれるところなんでしょう。

No.102 4点 『アリス・ミラー城』殺人事件- 北山猛邦 2009/12/15 21:00
 本来推理小説は作り物ではあるが、これはちょっとひどいのでは。
 探偵たちはは人間らしい感受性なし。どうして殺されに集まってきたかも不明。
 作者はトリックはそれ自体が美しいといっているそうだが、人間をばらばらにきざんだり顔を焼いて腹を割くのが美しいと思えるのだとしたらちょっと危ない人だなあ。
 本格推理物が好みなので途中の推理などはまずまず楽しんだのだが、最後に来てまたむちゃくちゃの結論となりいやになってしまった。

No.101 7点 メイン・ディッシュ- 北森鴻 2009/12/06 08:15
 連作小説なのでひとつずつがそれなりの決着がある上に全体としてのストーリが展開するのは当然ではあるが、途中の話で結論と全く違う話がでてくる。あとでそれなりに訂正されるような展開とはなっているが、ちょっとうそをつかれたような感じがした。ユーモアもあり食のこだわりもありなかなかよいのだが、同じようにユーモアと食の話を交えた芦原すなおの「ミミズクとオリーブ」を読んだ後だったのであまりの個性の違いにちょっとびっくりした。ミステリーとしてはこちらのほうが断然上。私が読んだ北森の小説はいずれもどこか寂しく孤独な感じが漂っているが、本作品は孤独感はユーモアが交えてあるだけに余計につらいところがある(これが好きな人も当然あるだろう)。

No.100 7点 天使のナイフ- 薬丸岳 2009/12/06 08:00
作品が重いテーマではじめのうちは読んでいて憂鬱になるが、よく考えられたストーリー展開に途中からはひきつけられた。確かにあまりに同じ犯罪を犯した人たちがこんなに集まってくるのは不自然な感じはあるがまあよいでしょう。こういったテーマをあつかう小説はあまり好みではなく最初の部分を読んだときに読むのは止めようかと思ったが、途中からは一気に読んでしまった。社会の矛盾を訴えるような小説が好みならすごく感動すると思う。

No.99 8点 わが身世にふる、じじわかし- 芦原すなお 2009/11/27 22:00
 ミミズクとオリーブシリーズも3作目となるとすんなり物語りに入り込めて独特の楽しさを味わうことが出来た。暗号トリックなどあってミステリー度は一番高そうだが、例によって名探偵の妻によってあまりに簡単に解決されてしまうので推理の楽しみはあまりない。このお話は河田と僕と妻のユーモラスな会話とおいしそうな香川の郷土料理、そしてアイデアに苦しみ締め切りに追われながらもゆったりした生活といった雰囲気を味わうものなんだろう。とても気に入っている。次が出たらぜひ読みたい。

No.98 7点 嫁洗い池- 芦原すなお 2009/11/22 12:13
前作のミミズクとオリーブより多少ミステリー度は高いかな。相変わらず主人公と河田と奥さんの掛け合いがユーモラスでほんわかとして楽しい。食事や酒についても、すごくおいしそうにいただいているところがまたよろしい。毎日忙しく仕事に追われている自分にとっては、よい奥さんとよい友人に囲まれたゆっくりした素敵な生活のお相伴にあずかったようで読後感はとてもよかった。

No.97 7点 ミミズクとオリーブ- 芦原すなお 2009/11/15 10:18
 この作品をミステリーとして読むともうひとつであるが、洒落た会話やふんわりとした雰囲気は好きです。名前を覚えるのが苦手な小生にとってはほとんど名前が出てこない(主人公も探偵役の奥さんも名前が出ない)のもありがたい。
 それにしてもこの奥さん素敵だなあ。友人の奥さんがこんな人なら私も酒と肴を持って押しかけそう。

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makomakoさん
ひとこと
歴史ミステリーや、本格物が好きです。薀蓄も結構好き。変人が登場するのは嫌いではないが、冷たい人間が出てくるのは肌に合いません。外国ものは登場人物が理解不能であったり翻訳文が合わないことが多くあまり得意で...
好きな作家
鮎川哲也、山田隆夫、綾辻行人、法月綸太郎、高田崇史、伴野朗
採点傾向
平均点: 6.17点   採点数: 876件
採点の多い作家(TOP10)
高田崇史(38)
有栖川有栖(31)
樋口有介(30)
アガサ・クリスティー(29)
東野圭吾(28)
太田忠司(27)
東川篤哉(25)
北森鴻(24)
米澤穂信(17)
今邑彩(17)