皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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makomakoさん |
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平均点: 6.17点 | 書評数: 876件 |
No.696 | 6点 | 彼女の色に届くまで- 似鳥鶏 | 2020/05/15 20:51 |
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作者はちょっとおふざけな感じの軽いお話を書いているものと思っていましたが、これはだいぶん違っていました。
十分に美術ミステリーといってよい内容なのです。内容だけなら結構深刻で本格の美術ミステリーで十分通ると思います。 作者はかなりの美術愛好家のようで、その方面に詳しい方が作った本格物なのです。 ただ作者が入れた訳注が結構あり、これを見るとやっぱりおふざけを加えないとおれないようです。さらに無駄に長いあとがき。 せっかく魅力的な女性探偵と個性的な若者を登場させたのですから、このお話の中ではおふざけはできるだけおさえてほしかった。 こんなお話は好きなんです。できればシリーズ化してほしいぐらい。 |
No.695 | 5点 | マツリカ・マジョルカ- 相沢沙呼 | 2020/05/09 19:59 |
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かなりへんてこりんなお話でした。
主人公のマツリカさんは極めて傲慢、それに従う柴犬君は何とも優柔不断。読んでいてイライラさせられます。 一応推理小説となっていますが、マジョリカさんの推理がうまく述べられていないのか、私にはわかりにくいお話もありました。 もともとあり得ない設定なのですからこんなもんでよいのかもしれません。一番良かったのはマツリカさんのセクシーシーン |
No.694 | 7点 | 海に消えた神々- 今野敏 | 2020/05/08 21:33 |
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前作の「神々の遺品」はUFOやピラミッドといった超有名だがかなりいかがわしいものも多い謎を取り上げていたので、推理小説としてはもう一つとの印象でしたが、本作品は謎のいかがわしさが少ないせいか、愉しく読めました。
これなら次作が出てもまた読んでみたいといった内容です。 お話もひねりが効いており、どんでん返しというほどではないが、意外な結論になっています。ただ謎を解く道筋がかなりご都合主義的なところもあるので、そこがちょっと減点かな。 |
No.693 | 5点 | 神々の遺品- 今野敏 | 2020/05/06 11:46 |
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古代文明の謎に迫る推理小説と宣伝されています。
こういった話は好きなのです。巻末にある参考文献らしきものも結構読んだことがあります。ただし私はそういった話を信じているのではなく、たんに興味がある程度なのですが。 作者はベテランで語り口もうまいので、かなり期待して読みました。 読んだ感想はもう一つ。 超古代文明とそれにかかわる謎の巨大組織が強い力を持っているというお話となると、どうしても推理小説というよりは昔でいう伝奇小説のほうが向いていそうです。 伝奇として書いたなら結構面白そうなのですが、ずいぶん昔に否定されたことなどもごちゃまぜにしてあると、推理小説としてはちょっと興味をそがれます。 |
No.692 | 7点 | 素敵な日本人- 東野圭吾 | 2020/05/03 08:32 |
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短編編集ですが、それぞれのお話が全く別のもので何のつながりもありません。
本格物から、SFまであります。 こういった内容ですと多くは出来不出来が気になることが多いのですが、さすが作者は語り口がうまくどの作品もスラスラと読めます。 逆に言えば、凄い、といったものもあまりないのですが、平均点高く粒ぞろいとも言えます。 |
No.691 | 4点 | アリバイ崩し承ります- 大山誠一郎 | 2020/05/01 18:03 |
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ほかの方も書いておられるようにクイズの出題と答えといった感じを強く受けるお話でした。
登場人物が全然現実感がなく機械のような感じがします。作者ならもっと膨らませて魅力的な女性に描けそうに思うのです。わざとこんな風にしたのでしょうか。 作者の新しいトリックを追及するという姿勢は大いに買っているのですが、こんな風にしてしまうと面白くも何ともありません。 以下ちょっとネタバレ 第1話は絶対成立しません。事件があった時間をずらす画期的方法のようにみえますが、人間の生理機能を無視した話です。つまり成り立たない。さらに末期すい臓がんなら解剖を行って見逃すなんてことはあり得ませんね。 第2話もパクリとのことですが、これもちょっと無理がありすぎます。 それ以後の話は無理やりのところはありますが、まあ全体成り立たないというわけではないので許せる範囲ではあります。 |
No.690 | 7点 | 天上の葦- 太田愛 | 2020/04/27 20:08 |
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社会派推理小説が好きなら、ぜひ読んでみてください。
力作です。 かなり長いが、物語は二転三転してなかなか本筋が見えてこない。 読者は都会の中から忘れられたような島へ、そしていつのまにか戦争の時代へとめまぐるしく変化するお話に翻弄される。これでもう終わりかと思ったら起死回生の一撃で立ち直り、でも相手もなかなか降参せず新たな手を打ってくる。 このようなお話なので、さぞやハラハラドキドキとなりそうなのですが、思ったほどドキドキとはなりません。 これはシリーズものなので主人公たちが死んでしまったりはしないということがはっきりしているのと、お話の中での「良いもの」と「悪いもの」がはっきり分かれているため、読んでいて安心感があるのですが、どんなピンチになっても最後は正義が勝つことが約束されていることが感じられるせいなのでしょう。 |
No.689 | 6点 | 赤い博物館- 大山誠一郎 | 2020/04/19 12:55 |
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最初の2作(パンの身代金と復讐日記)は比較的無理がなく、内容もひねりが効いていて面白かった。
最後の「死に至る問い」は賛否が分かれているようですが、私にはこれはいくらなんでもちょっと無理やりすぎると思いました。 しかしこれだけしっかり内容を盛り込んだ作品を並べて見せてくれたのはすばらしい。 こういった短編集だとどうしても出来不出来が気になってしまうけど、次作に期待が持てますね。 |
No.688 | 5点 | 暗幕のゲルニカ- 原田マハ | 2020/04/12 08:26 |
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私も楽園のカンヴァスが良かったのでこの本も読んでみたのですが、やはりこちらのほうがちょっと落ちるように思います。
作者のピカソに対する思い入れは十分にわかるのですが、私のような絵画の門外漢にとってはゲルニカがそこまでの力があるかどうかは不明です。ちなみにスペインでゲルニカのホンモノをみましたし、ゲルニカへ行って町の記念碑のようになっているコンクリートでできたゲルニカも見てきましたが(その程度の関心はあるのです)、迫力を感じつつもアートが一番の力か否かはよくわかりませんでした。 私にとって価値観の根本的なところで多少のずれがあるため、お話の内容への共感が十分ではありませんでした。勿論作者のこういった姿勢に反対するものではなくむしろ賛成に回りたいのですが、そこまでの情熱が出ないということなのでしょう。 したがって評価もちょっと下がります。 |
No.687 | 7点 | ヴァイオリン職人と消えた北欧楽器- ポール・アダム | 2020/04/10 20:50 |
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好みの探偵ヴァイオリン職人ジャンニシリーズの第3弾。
今回は北欧の民族楽器ハルダンゲル・フィドルという知らない楽器がお話の中心に添えられます。聞いたことのない楽器だったのでネットで検索するとヴァイオリンと似てはいるが全く異なった音がするようです。 主たるシチュエーションはノルウェイのベルゲン。夏に近いのに寒くて毎日雨ばかり降っているが、私が以前訪れた時はほとんど晴れていてとても美しかったが。 今回はジャンニは刑事さんだけでなく、恋人のマルゲリータと一緒に旅をする。大変ロマンチックなところもあり、歳をとってもこんなロマンが味わえるなんてすてきだなあ。 お話は意外な展開となる。物語の面白さもさることだが、主人公の感じのよさがこのシリーズの最高に引き付けられるところです。 |
No.686 | 5点 | チェーンレター- 折原一 | 2020/04/07 15:59 |
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折原氏の作品は以前は結構好きで読んでいたのですが、しばしば改題されて新作と思ったら実は以前読んだことがあるものを買わされることが重なり、あまり手を出さなくなっていました。ちゃんと確認しない方が悪いとも言えますが。
本作品も得意の?改題ものです。幸い改題前のを読んでいなかったので今回は騙されずにすみました。 相変わらず複雑な構成となっておりいったん事件が解決したはずなのに同じような事件が繰り返し起こるという不思議なお話です。 以下多少のネタバレ 不幸の手紙のような棒の手紙を送りつけるといったあたりは読むのに良い気分にはなれません。犯人がわかり事件解決後同じ状態が続くといったあたりはさすが折原一といったところではありますが、こんなに都合よく同じことをする人が連続するとはなかなか思い難いなあ。 |
No.685 | 7点 | すみれ屋敷の罪人- 降田天 | 2020/03/29 17:47 |
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こういった一つの事象に対してかかわった人が次々と証言していくという形式は、推理小説の中では古来よく使われてきた技法のひとつです。
この方法は述べる人物が変わることによって、登場人物の性格やお話そのものががらりと変わってしまうことがあるため、お話が極めて意外な展開となりますが、一つ間違えると作者がご都合主義的にお話を捻じ曲げてしまうといった印象を受けてしまいます。 この作品は良く練り上げたプロットで読者にこういった不満が起きることなく上手にまとめ上げていると私的には感じました。 登場人物もエキセントリックそうで実は普通の感覚を持っており、読んで共感が得られました。 なかなか良いです。 |
No.684 | 7点 | 楽園のカンヴァス- 原田マハ | 2020/03/25 20:05 |
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絵画のミステリーは時折見かけますが、これほど名画の裏事情に切り込んだ作品は初めてでした。絵画が好きな人はこれ程絵にのめり込んでいくのかとある意味感心しました。お話は殺人事件など衝撃的な事件は全くでてきはしませんが、充分に興味深く刺激的です。
女性が書いた作品らしく理性的なのにそれを無視するようなロマンチックなところもあります。特に主人公の冷徹なまでの性格と学識、そして容赦なく相手を叩きつぶす激しさと、しばらくして見せる女らしさとある意味での弱さはまずなかなか男の作家には書けないでしょう。 最後がちょっと甘いがなかなか素敵な作品と思います。 |
No.683 | 6点 | ネメシスの使者- 中山七里 | 2020/03/15 08:57 |
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中山氏の活躍ぶりは目を見張るものがあります。多作なのに内容が充実している。すごく忙しく執筆しておられると書評に良く書いておりますが、内容が伴わった上での多作というのはなかなかできないものと感心しています。
この作品も巧みな展開で決して読者を飽きさせません。内容も濃く素晴らしいのですが、私としては岬の息子さんが活躍する作品のほうが好みです。 この作品は小説として完成度が高いと思いますが、作者の主張が強く反映されており、それが間違っているとは思いませんが、必ずしも全面的に共感するに至らないからかもしれません。 小説としては素晴らしいと思います。 |
No.682 | 7点 | 濱地健三郎の霊なる事件簿- 有栖川有栖 | 2020/03/07 07:27 |
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霊的能力のお話は本格物とは対極のような気がしますが、有栖川氏の作品はそれを感じさせない、というよりこういったお話が大好きな方が書いていると思えてきます。
作者の幽霊もの?はどれも全然怖くなく、その世界で見事に完結しているのでミステリーとして読んでも興味深いのでしょう。 相手役のユリエさんもなかなか素敵です。 |
No.681 | 5点 | アンデッドガール・マーダーファルス2- 青崎有吾 | 2020/03/04 21:18 |
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本格ミステリーの若手として作者には期待しているのですが、こういったお遊びのような作品もきっと書きたいのでしょうね。こちらのほうが肩に力が入らず好き勝手(失礼)に書けそうですから。
こちらのほうは適当にして、是非本格物の長編をお願いしたいです。 |
No.680 | 6点 | 月長石- ウィルキー・コリンズ | 2020/02/28 19:55 |
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推理小説の古典として昔から知っていたのですが、あまりの長さと古さのため今まで読むのをためらっていた作品です。ようやく読む勇気?が出たので今回頑張って読みました。
色々な人が違った角度から一つの物語を述べていくという形をっとっています。立場によってこんなに受け取り方が違うんだということがよく分かりますし、とんでもないキリスト教狂信者(本人は敬虔なキリスト教徒と思っている。彼女から見れば私など野蛮な異教徒)のお話が長く続くところは正直うんざりしました。でも100年ぐらい前のイギリスではこんな人もいっぱいいたのでしょうね。当時のイギリスを知るといことではとても有用でした。 はっきり言って無駄に長いところもあり、抄訳が発行されたこともあるというのもうなずけます。だからといってつまらないのではありません。古典的名作としてよいお話と思います。もっと短くすっきり書いてあれば私の評価も上がったのですが。 |
No.679 | 5点 | メゾン・ド・ポリス4 殺人容疑の退職刑事- 加藤実秋 | 2020/02/02 15:10 |
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このシリーズも現在出ている最終巻となり(この本の終わり方からすると続編が出るかもしれないが)登場人物の色々な過去がかなり明らかになってきました。
今までこのお話は読んでいる分にはまあ面白かったのですが、4冊目ともなるとさすがにマンネリ化してきたようです。 もともとこうやると受けそうだという作意が見え隠れするところがあるのですが、だんだんストーリのご都合主義が目立つようになり、それを日常の人情話的要素でカバーしているといった感じとなってきました。 このお話はこのぐらいでおしまいとしたほうがよいのかも。 |
No.678 | 5点 | メゾン・ド・ポリス3 退職刑事とテロリスト- 加藤実秋 | 2020/02/01 07:26 |
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シリーズも第3作となり読む側も大分親しさが増しました。
今回は初めての長編です。 テロリストというけど勿論国家混乱を狙うような大したテロリストではなく、初めは愉快犯とも思われる偽装爆弾程度だが、最終的には多少の殺傷力を持つ爆薬も仕掛けられます。 元刑事のおじさん方の活躍が主体で、それに新米女性刑事が絡むといった話は相変わらずですが、親しさが増してきたとともにちょっと飽きてきたのも否めません。 読んでいる間はそれなりに面白いです。時間つぶし程度なら絶好でしょう。 読んでしまえば多少ふんわかして気分がよく、決して悪いお話ではありませんが、読んでしばらくすると内容を忘れてしまいそうな感じです。そろそろぼけてきたせいもあるかもしれませんが。 次の4作で終了のように思われますがこのあたりで打ち切りが妥当でしょう。 |
No.677 | 6点 | メゾン・ド・ポリス2 退職刑事とエリート警視- 加藤実秋 | 2020/01/29 18:40 |
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第1作が面白かったので次作も読みました。これも連作シリーズです。
2作目は読むほうも登場人物のキャラクターがわかっているのでスムースに読んでいけます。相変わらずの展開なのですが、主人公のひよりの身体的特徴が浮かんでこない。普通若い女性が主人公なら必ずといってよいほど身体的特徴がのべられるのに変だなと思って調べてみたら、作者は女性なのですね。 それがわかれば人物描写で化粧や髪型がやたら詳しく、私には理解不能な服の名前などが出てくるのに,ひよりが胸が大きいとかおしりがどうだとかが全く述べられていない(端役のナナちゃんは胸が大きくスタイルがよいように描かれていますが)のだと納得してしまいました。 現在4作まで出ているので次も読んでみましょう。 |