皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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こうさん |
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平均点: 6.29点 | 書評数: 649件 |
No.189 | 7点 | マジックミラー- 有栖川有栖 | 2008/08/17 04:22 |
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アリバイトリック、時刻表トリックは苦手なため初読時は全く推理せず読み飛ばした記憶がありますが、トリックは優秀だと思います。アリバイ講義も面白かったです。
また犯人が利害関係のないその時点での容疑者を救おうとアリバイ探しをすることが、被害者の妹の疑いの目を向けさせる所などうまいと思いました。 |
No.188 | 6点 | 21人の視点- 石沢英太郎 | 2008/08/17 04:09 |
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三人称多視点の小説ですがタイトル通り21人の視点で描かれている作品です。多視点描写は現在ではありきたりですが当時としては意欲作と思います。30年前の作品でやはり社会派ミステリではありますが面白かったです。
プロローグで汚職事件で父親が自殺したのは4人の人物が陥れたためだ、と告発する手紙が示され、次の章から多視点描写でそれぞれの人物の出来事が示されてゆきます。 ストーリーとしては父親を自殺に追い込んだ子供が4人に復讐するのだろうな、と容易に想像がつきますが誰がその4人なのか、犯人は誰なのか、ということは当然明かされず進んでゆきます。キーになる人物はわかりやすいですが次々に死んでゆきます。3人称のためか人物描写は淡々としており、内容も含め社会派全般が合わない方には向かないかもしれません。 容疑者は2人に絞られますが、そこで軽い叙述トリックというか伏線があり、ミスリードされるようになっています。 本格臭は強くありませんが個人的にはなかなか面白かったです。 |
No.187 | 6点 | 真夜中の詩人- 笹沢左保 | 2008/08/17 03:45 |
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誘拐を扱ったミステリです。冒頭で大手デパートの孫が誘拐されたことが説明され、半月後ヒロインの主婦が同様の手口で息子が誘拐される。いずれも犯人から身代金の要求が全くなく時間だけが過ぎてゆく。その後突然ヒロインの母親がひき逃げされ死亡する。犯人は見つからず、ヒロインは息子を見つけるために真相を探ってゆく、というストーリーです。
よく考えられたストーリーですが最終的にヒロインは真相にたどり着くわけですが個人的には警察が無能すぎるとしか思えませんでした。ヒロインの最終的な推理がすべて正解なのも御都合すぎる気がします。 また犯人の一連の行動も納得しづらいです。2つの事件の関連性があからさまだったためにヒロインの追及が生まれたわけですがそもそも関連性をアピールする必要性が全くなく不自然でした。 そもそもの誘拐事件の動機は興味深いものですがメインキャストのヒロインの家族以外の登場事物たちのの心情、行動は理解しづらいです。犯行も杜撰と思いました。 動機については他にはないものでストーリーも読みやすいと思いますが個人的にはヒロインにもあまり共感できずまあまあ、といった所でした。 |
No.186 | 5点 | 暗い鏡の中に- ヘレン・マクロイ | 2008/08/17 03:25 |
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有名なドッペルゲンガーを扱ったミステリです。
女教師が突然赴任早々に解雇を言い渡される。本人も理由が全くわからないが、周囲の人間は彼女が同じ時間に2か所にいるのを目撃し学生、職員が次々に辞めてゆくための処置だとわかる。そして彼女が退職後同僚の女教師が学校で不可解な死亡を遂げ、他の場所にいたはずの彼女を見た、という目撃者があらわれて、というストーリーです。 ドッペルゲンガーを扱っていることが作品途中で示されておりこれをどうまとめるのかが非常に興味がありましたが明らかにアンフェアな真相でした。 詳細は控えますが作品中の人物に通用したと説明されても納得できない真相です。またメインキャストの女教師の経歴も事件の鍵となり事前に少し伏線もありますが根本的な真相が実現不可能なため話がうまくつながっていると納得することはできません。前半の部分の雰囲気が良かっただけに残念でした。 |
No.185 | 6点 | ヨギ ガンジーの妖術- 泡坂妻夫 | 2008/08/17 03:09 |
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タイトル通りヨギ ガンジーシリーズ第一作です。不動丸、美保子が仲間(?)になってゆくエピソードも書かれており、しあわせの書の世界が気に入っている方なら読む価値はあるかと思います。作品の雰囲気は一貫しておりとぼけた感じがいいです。
ただ「超能力を暴く」というテーマの短編集ですが内容は普通です。(しあわせの書も内容は普通ですが) |
No.184 | 6点 | この闇と光- 服部まゆみ | 2008/08/11 00:39 |
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主人公は盲目の姫、レイアでレイアの視点で王である父、侍女のダフネを中心に物語は進んでゆきます。
そして二章目で物語が突然動き出します。 「実は〇〇だった」というパターンの作品はいろいろありますが、初めてのパターンだったため驚いた覚えがあります。 作品の後半~結末部分はさほど面白みがありませんでしたが 「実は〇〇だった」という部分だけでも堪能できました。 ただ個人的には読後のカタルシスは得られませんでしたが、作品上仕方ないかな、と思います。 |
No.183 | 5点 | 顔のない告発者- ブリス・ペルマン | 2008/08/11 00:26 |
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これも佐藤圭氏の「100冊の徹夜本」というガイド本で激賞されて読んだ作品です。
仲の悪い中年夫婦のうち夫が自宅にとどまり、妻のみが出席したパーティの帰り道、車の運転中事故に遭い即死する。 その後警察に匿名の投書が届き、警察が調べると車には細工が施されているのがわかって、というお話です。 ガイド本には「読者は絶対に犯人がわからない」「犯行のトリックに茫然自失する」と書いてあり、期待して読みすすめてゆきましたが結局小振りでした。 登場人物は少なく話も短いのでさっと読めますしまあまあ楽しめました。ただ確かに犯人はわかりませんでしたが、トリックも含めてさほど感心するものではなくだまされた爽快感が味わえる作品ではありません。 |
No.182 | 8点 | 苦い林檎酒- ピーター・ラヴゼイ | 2008/08/11 00:13 |
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日本ではおそらく「偽のデュー警部」が最も有名な作家ですが個人的にはこの作品が最も気にいっています。
主人公は戦争中の小児期に疎開先で殺人事件に遭遇する。裁判で不利な証言をしたことが誘因となり米軍兵士が死刑になる。19年後主人公の前へ死刑になった米軍兵士の娘が現れ、父親の無実を証明するための協力を仰ぎ、そこからストーリーが展開してゆきます。 最終的に主人公の証言の誤りもわかってくるわけですがどうして誤ったのか、実際の真相は、という所は読みごたえがあります。 真犯人が判明、19年後の結末もありますが、そこの部分が必要ないと感じる程でした。 「猟犬クラブ」など日本の新本格か?と思わせる作品ですし、現代では稀で貴重なイギリス本格作家だと思います。近作は読んでいませんが「偽のデュー警部」の頃の作品群はいずれも面白かったです。 |
No.181 | 8点 | 証拠が問題- ジェームズ・アンダースン | 2008/08/10 23:56 |
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叙述トリックものの秀作です。プロローグで殺人がおこり、一章目で一人で家にいた主婦の描写があり、そこに出張中の夫が予定より早く帰宅する。その夜中に刑事が訪問し(冒頭の)殺人現場で目撃された夫を容疑者として逮捕して、という展開のストーリーです。
その後夫の無実を証明するために妻が奔走し、ストーリーが二転、三転してゆきます。 解説は有栖川有栖氏が書いていますが、解説通りで作品に示された叙述トリックを見破れるかが主眼でしょう。犯人自体の見当はつきやすい作品ですが、叙述トリックを見破って疑えるかどうかだと思います。個人的には犯人の予想はつきましたが叙述トリックには初読時全く気付きませんでした。 結末もありきたりの展開ではなく、皮肉が利いています。 尚、ある登場人物の行動が有栖川氏のある作品の犯人の行動に非常に似ていると思われこの作品がモチーフとなっているかもしれません。そういう意味でも有栖川氏が解説しているのもわかる気がします。 またジェームズ・アンダースンの他の作品も言えることですが殺人事件を扱っているのに全く暗さがなく明るい作風の中物語が進行してゆきます。 全作品お薦めの作家だと思います。 |
No.180 | 10点 | 火車- 宮部みゆき | 2008/08/10 20:42 |
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リアルタイムで読んだ読者としては、今でも宮部みゆき最高傑作だと思っています。
もちろん本格ミステリではなく典型的社会派ミステリではありますが、犯人を追跡してゆく主人公が追及してゆく謎、主人公の家族のサイドストーリーいずれも面白かった記憶があります。 ラストシーンも作者があえてああいう形にしているのは明らかであり個人的にはあれ以外はありえないかな、と思います。 主人公(犯人が主人公なのかもしれませんが)の刑事が追跡してゆく発端の動機などは正直リアリティがなく社会派小説であることを考えるとまずいかな、と思いますが、作品そのものは満足でした。 |
No.179 | 7点 | 死者の輪舞- 泡坂妻夫 | 2008/08/10 20:31 |
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連続殺人もので、一人目の殺人の犯人が二人目の被害者で、二人目の犯人が三人目の被害者で、ということが作品序盤で明らかにされるストーリーが独特の泡坂ワールドの中進行してゆきます。何人も次々と死亡が確認されますがあまり深刻にならずおかしみにあふれているのは泡坂作品らしいですが、やはりリアリティには欠けると思います。しかし真相というかこの輪舞のまとめはよく考えらていると思います。
作品の瑕としてはこの作品は「病院での同室者」ということがキーポイントになっていますが現実には一般患者(意識のある患者)の男女混合病棟はありえないため「同室者」であることが作品の成立に重要なポイントであるためまずいと思いました。 |
No.178 | 5点 | 片想い- 東野圭吾 | 2008/08/10 20:21 |
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重いテーマである「性同一性障害」を扱っている作品です。よく事前に調べられているのがわかりますが読者側にテーマへの理解力がないと推理も難しいと思います。
軽視できないテーマなのは理解できますが、ありふれたテーマでないため読んでも実感がわかなかった、というのが正直な所です。 テーマを考えるといわゆるサスペンスストーリー仕立てにして犯人あてにしなくても良かったのかな、とも思います。 |
No.177 | 5点 | 卒業−雪月花殺人ゲーム- 東野圭吾 | 2008/08/07 01:46 |
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青春ミステリとして登場人物が丁寧に描かれていると思います。またラストの部分の「中身のない封筒」などうまい表現かと思いますし日記に書かれていた伏線などもうまいと思います。
ただメイントリックについては残念ながら一般読者にはまずわからないのではないでしょうか。 ミステリとしての評価は個人的には同じ青春ミステリでは「学生街の殺人」のほうがわかりやすく、個人的には気にいっていますがこの作品も読後感は悪くないと思います。 |
No.176 | 7点 | 皆殺しパーティ- 天藤真 | 2008/08/07 01:31 |
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どうみても一番殺害される動機のある主人公ではなくその周りで次々に人が死んでゆくストーリーですがこれだけ死んでも暗くならず、ユーモアあふれるストーリーになるのは天童真ならではだと思います。
真犯人を当てることそのものよりも主人公の辿る結末までを読んで楽しむ作品でしょう。 メイントリックは前例も後発例もありますが、よく考えられていると思います。 ストーリーは現代の女性読者の共感は得られないかもしれませんが個人的には面白かったです。 |
No.175 | 3点 | 美しき罠- ビル・S・バリンジャー | 2008/08/07 01:15 |
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これまでの邦訳作品の中では煙で描いた肖像画に近い作品でした。
ノンフィクション作家が主人公で第二次大戦前取材でお世話になった刑事ラファティに戦後会いにゆくと誰も彼のことは語りたがらず、2年前の新聞を読めと言う。そこに書いてある事実が信じられず、主人公は関係者に話を聞きラファティの半生を追跡してゆく、というストーリーです。分野としてはサスペンスクライムに入ると思います。 一人の人間の悲しい半生を描く筆致はうまいですが「歯と爪」や「赤毛の男の妻」のような叙述トリックは皆無でありその点もの足りなく感じてしまいます。 またカットバック方式はとられておらずサスペンスストーリーではありますが一本調子な展開でした。 解説はいかにもバリンジャーを好きそうな折原一氏が書いています。 |
No.174 | 7点 | 放課後の記憶- 森真沙子 | 2008/08/04 23:56 |
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ガイド本で折原一氏のお薦めがあり読んだ本です。「25年前の高校」で起きた学園祭での「マクベス」公演後クラスのヒロインが失踪、死亡したことがメインストーリーで25年後、当時の担任が教え子に会い、ヒロインの死亡の真相を究明してゆく、といういかにも折原氏が推薦しそうなストーリーです。
ロジックメインの作品ではなく担任と教え子の会話でわかってくる所が多く所謂本格とは言えないかもしれませんが真相は興味深く、アンフェアではないものです。強いていえば作中人物が真相につきあたるまでのお話を読んで楽しむ作品で真相当ては難しいかもしれませんが個人的には面白かったです。 |
No.173 | 7点 | 変調二人羽織- 連城三紀彦 | 2008/08/04 23:45 |
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これもトリッキーな連城三紀彦らしい短編集です。「戻り川心中」のような雰囲気は全くなくトリックに力点が置かれており個人的にはこの作品集や「夜よ鼠たちのために」が気にいっています。但しすべてが及第点とは言えず不満の残る作品もあります。
トリッキーさでは「メビウスの環」、「依子の日記」が気にいっています。 |
No.172 | 8点 | 火の接吻- 戸川昌子 | 2008/08/04 23:38 |
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寡作家ですが力作が多い戸川昌子の現時点では最後の長編です。
26年前、火事で画家が逃げ遅れて焼死した。出火原因として画家の息子を含む3人の幼稚園児が原因と考えられた。 26年後決まった日に放火が起きて、放火魔、刑事、消防隊員の3つの視点で物語は進み、途中で26年前の放火事件とつながってきて、という話です。 読んでいくと当然放火魔=犯人なわけですがそこから過去の真相、現在の放火の真相も含めて二転、三転するストーリーは読みごたえがあります。強いていえばやはり死人が多く殺害動機として弱いものもありますが作品自体は非常に面白いです。 全ての真相を当てるのは正直不可能かと思いますが、記述的にはフェアな作品だと思います。 またラストには皮肉の利いた結末まで用意されており一読の価値があるかと思います。現在、簡単に文庫が手に入る状況でありおそらくそのうち絶版になると思いますので今のうちに手に入れるのをお薦めします。 「大いなる幻影」へのオマージュもありこちらを読んでいる方には一か所面白い所もあります。 |
No.171 | 7点 | 不安な産声- 土屋隆夫 | 2008/08/04 23:23 |
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動機に焦点を当てた力作だと思います。千草検事シリーズの最終作でもあります。
大手社長宅でお手伝いが強姦、絞殺され、医大教授が犯行自供、逮捕されるが殺害動機は明らかなものがなく、何故彼は殺人を起こしたのか、というストーリーです。 動機一本の作品ですがこういう動機での殺人もあるか、と納得できる力作です。 500ページ弱と長く、犯人の手記を読まないと読者には動機を見破るのは難しいと思いますが、一読の価値は十分にあるかと思います。 |
No.170 | 10点 | 弁護側の証人- 小泉喜美子 | 2008/08/02 02:42 |
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小泉喜美子の処女長編です。タイトルからわかる様にクリスティの検察側の証人がモチーフとなっています。
玉の輿で財閥の一人息子と結婚した元ストリッパーがヒロインで嫁いだ豪邸の中で殺人事件が起きて、という作品です。 人物設定はさすがに古めかしく、屋敷内での殺人というのもいかにもお約束通りですが新本格全盛の今でも通用する作品だと思います。 気をつけないと見過ごしてしまう叙述の工夫もあり、昭和38年作ということを考えると当時では非常に斬新だったのではと思います。200ページちょっとと短めですが一気に読ませます。小泉作品はこれと「血の季節」しか読んでいませんがいずれも面白いです。 |