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こうさん
平均点: 6.29点 書評数: 649件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.469 6点 金庫と老婆- パトリック・クェンティン 2010/05/01 01:37
 法月綸太郎氏の「わが子は殺人者 」での素晴らしい評論を見て期待して数年前に手に取ったのですがこの作品集を読む限りこの作者は長編の方が持ち味を発揮しているな、と感じた覚えがあります。アンソロジーなので仕方ないのかもしれませんが同じような家庭内の隠された悲劇(?)の様なものを扱っているせいか読了するとさすがにげんなりしてきます。なんとなくヘンリイ・スレッサーを更に意地悪くした様な作品集のように感じました。
 個人的には一作目の「ルーシイの初恋」が一番楽しめました。

No.468 6点 我らが隣人の犯罪- 宮部みゆき 2010/05/01 01:27
 作者の作品の中でもとりわけアットホームな優しい作品集で読み心地がいいです。
 個人的には宮部作品で「ぼく」が出てくる作品は何となく違和感を感じあまり好きではないのですがこの作品集は気に入っています。
 「サボテンの花」と「祝・殺人」が中でも楽しめた覚えがあります。
 R.P.G.以降は読んでないのですが読ませる社会派作家であることは間違いないと思います。

No.467 8点 ケインとアベル- ジェフリー・アーチャー 2010/05/01 01:17
 この作品の面白さには全く異論はありません。作者が「サーガ」と読んでいるスケールの大きい主人公の半生~一生を描いたエンターテインメント小説の中でも一番の出来だと思います。ただコンゲーム小説である「百万ドルをとり返せ!」 やサスペンス、スリラーとして「ロシア皇帝の密約」「大統領に知らせますか?」などは入るにしてもこのカテゴリの作品をミステリに入れることには個人的には躊躇があります。
 「ミステリではない」と思い減点しましたが作品自体は10点ものだと思います。
 尚「ロスノフスキ家の娘」はこの続編であり元々続編ではなかった「大統領に知らせますか?」も改訂され続編の趣きがありますので作者はよほどこのシリーズもしくはフロレンティナ(アベルの娘)に思い入れが強いのでしょう。
 いずれにしろ読んで損はない作品だと思います。

No.466 7点 たけまる文庫 謎の巻- 我孫子武丸 2010/05/01 01:04
 先に書かれた方々と同じですがミステリの出来と関係なくフェニックス木下の復活が一番笑えて面白かったです。三兄弟の「裏庭の死体」は三兄弟が登場していること以外に読み所はなかったですが。
 あとの作品では「車中の出来事」が良かったです。途中で落ちが読める作品が多かったですがさっと楽しめました。
 点数はミステリの出来と関係なくフェニックス木下の復活に対してです。

No.465 7点 夕萩心中- 連城三紀彦 2010/04/26 01:19
 花葬シリーズ3作品とユーモアミステリが併録されている作品集です。ハルキ文庫なら「戻り川心中」に花葬シリーズが一挙収録されています。
 戻り川心中の世界に浸りたい方にはお薦めできる作品で相変わらず抒情性たっぷりです。
 ユーモアミステリの方は個人的には「運命の八分休符」もそうですが作者の本領ではないと思いますが読み心地は悪くないです。 

No.464 7点 わたしの愛した悪女- パトリック・クェンティン 2010/04/26 01:09
 パトリック・クェンティンお得意の家族の悲劇を扱ったサスペンスです。
 アンドリュウ・ガーヴ の某作品の様に今まで知らなかった人物像が明らかにされるストーリーですが描き方はこの作者らしくこってり描かれています。
 タイトルが露骨すぎ先入観が与えられるのが不満ですし元々の「The Green eyed monster」の方が秀逸なタイトルだと思います。ストーリーを読む限り主人公だけ知らないのはいくらなんでもおかしすぎる展開ではあります。本格的手がかりがあるわけではないのもいつも通りですがラストの部分はうまくまとめられていると思います。
 個人的にはパズルシリーズや 女郎ぐもを是非復刊してほしい作家です。

No.463 5点 危険な関係- 新章文子 2010/04/26 00:57
 ずっと家で積ん読になっていたものを読みました。笹沢左保の「招かれざる客 」に競り勝ち乱歩賞を受賞した作品です。
 死亡した父親から全財産を譲ると指名された大学生高行が主人公で彼の家を中心に起こるトラブル、人間模様が描かれています。
 メインの殺人トリックは正直いくらなんでも直前にもう一度確認したら未然に防げますし本当に実行するなら誰にもしゃべらないでしょうからそもそもトリックとして成立しているのか疑問ですし犯人もこの人しかいないというその人です。また「ひき逃げ」の下りも杜撰すぎる印象です。また遺言の下りも弁護士の対応もおかしいです。(50年前ならOKだったのでしょうか)犯人の動機については海外ミステリ的で当時としては奇抜だったのかもしれません。
登場人物の描写は確かに優れ所謂「人物を描けている」のかもしれませんが読んでいて感情移入できる人物はほぼ皆無でした。面白みで言えば「招かれざる客」の方が上の様な気がしますがまあまあ楽しめました。

No.462 6点 クリスマス黙示録- 多島斗志之 2010/04/26 00:33
 アメリカ留学中に子供を轢き殺してしまった日本人留学生と復讐を誓った元警官の母親と留学生を警護をするFBI日系捜査官を軸にしたサスペンスストーリーでした。
 既に映画化されている様ですが確かにハリウッド映画にできそうな展開、ストーリーだと思いますがどこかで見たような展開、プロットでそういう意味では多島作品らしくはありません。またメインキャラクターの掘り下げ方も希薄な所もらしくない感じです。
 スピーディであり一気に読ませる力はあり個人的には楽しめました。
 多島氏の未読作品がどんどん減ってきているのが残念です。 

No.461 9点 密約幻書- 多島斗志之 2010/04/26 00:23
「龍の議定書」同様国際謀略小説のお手本と思える作品で巧みなプロットが光ります。ラドラムの初期作を彷彿とさせる作品でした。ただ「龍の議定書」同様あまり当時でも今でも需要のなさそうなテーマではあります。
 エンターテイメント小説としては最高なので是非再販してほしいです。

No.460 4点 光媒の花- 道尾秀介 2010/04/14 01:31
 帯に書かれている通りの「連作群像劇」です。所々ミスリードを誘うような描写があったとしても本筋ではなく各章の人物のストーリーがメインでミステリとは言えない気がします。
 読みやすいことは読みやすいのですが読んで楽しくなる小説ではありません。
 特に第2章の虫送りの展開は正直言って不満です。やったことはどちらにしろ取り消さないにしてもトラウマになるようなことを「お前が言うな」という感じでした。
 「カラスの親指」までの様な作品とは明らかに違っており「群像劇」そのものに圧倒されて楽しめる方もいると思いますが個人的には道尾秀介氏の作品というだけで読む前から展開、作風を勝手に期待しまっていたので期待したものとは違ったというのが正直な感想です。
 今後も作風は変化してゆくのでしょうがこれまでのイメージの「道尾作品」を次は期待したいです。

No.459 6点 リスの窒息- 石持浅海 2010/04/14 01:17
 最近になく収穫でした。誘拐事件で第三者に身代金を請求するというパターンは前例もありますが今回はひきこまれる展開、ストーリーでこれだけ楽しめたのは「扉は閉ざされたまま」以来だと思います。
 江守森江さんが述べられている通りでこの状況で警察を呼ばないのは不自然ですがそれは「扉は閉ざされたまま」でいつまでたっても扉をこわさないのと一緒でそこが石持浅海作品らしさなのかなあと思います。
ただ編集局長の異常さをどう描いても警察を呼ばない展開は誰が読んでも納得はできないと思いますが。
 最後は予定調和すぎるくらいなのが少し拍子抜けですが久々に当たりでした。「まっすぐ進め」まで読んでもう読むのをやめようかと思っていたのですがこの作品に限って言えば石持浅海作品らしい不満点はあっても楽しめました。

No.458 5点 幸福荘の秘密―新・天井裏の散歩者- 折原一 2010/04/07 23:56
 その名の通り天井裏の散歩者の続編で、パロディとして楽しめるかがメインでしょう。個人的には折原作品は黒星シリーズ以外の続編はどれも一作目ほどは楽しめません。
 郵便のトリックというか真相はそんなに都合よくいくか疑問です。
 構成、展開はいつも通り、前作通りです。

No.457 5点 「白鳥」の殺人- 折原一 2010/04/07 23:41
 折原作品として読むとイマイチかもしれませんがかつて乱造されていたトラベルミステリに比べれば仕掛け、趣向がある分楽しめるかなあと思います。
 プロローグの使い方は折原作品より中町信作品の様な味があり作品全体の出来はともかく構成は楽しめた覚えがあります。

No.456 4点 望湖荘の殺人- 折原一 2010/04/07 23:33
 最後の展開、構成は典型的な折原ミステリです。面白かったのは殺人者が下山したところくらいでしょうか。構成については予想通りである意味安心して読める作品ではあります。犯人が連続殺人をする必然性は全くなくその点もの足りないです。

No.455 6点 鬼面村の殺人- 折原一 2010/04/07 23:24
 難しい推理を披露してそれが外れて、エピローグでさらにひとひねりというのがお約束のシリーズですがミステリとしての出来不出来と関係なく結構好きです。
 パロディですので全然合わない、面白くないという方もいると思いますが個人的には楽しめました。 

No.454 3点 遭難者- 折原一 2010/04/07 23:15
既に書かれている皆さんと同様ですが読み初めは形式というか構成が真新しかったですが追悼集にいつもの叙述トリックが仕掛けられて別冊で反転して、と勝手に期待して読んでいたので読み終わってなんじゃこりゃと思った記憶があります。発売順に読んでいたので「折原一らしくない」なあと初めて思った作品でした。

No.453 6点 天井裏の散歩者 幸福荘殺人日記- 折原一 2010/04/05 02:07
 乱歩の作品よりもむしろ山田風太郎の「誰にでもできる殺人」のパロディの印象が強く感じられます。
 トリック、真相よりもそういった枠組みというか構成が読んだ当時気に入りました。「誰にでもできる殺人」を読んだ上で読むと受け入れやすいかなあと思います。

No.452 7点 犯人に告ぐ- 雫井脩介 2010/03/29 01:35
 ミステリとしてよりエンターテイメント小説として楽しめた記憶があります。映画は見てないのでわかりませんが。
 ありそうでなかった「劇場型捜査」の展開は新鮮でした。結末はとても尻すぼみの印象ですが中盤までの展開だけでも満足でした。

No.451 5点 淡雪の木曾路殺人行- 梶龍雄 2010/03/29 01:30
 これも本格ミステリフラッシュバックの推薦をみて読んだ本です。女子大生コンビ(奈津子、千鶴)と先輩(高見)の3人トリオがメインキャラクターで旅先の木曽の旧家で起こる殺人事件を扱っています。「葉山宝石館の惨劇」もそうですがとにかく文体(?)というか女子大生の会話や一人称の地の文が絶望的に駄目で読んでかゆくなりそうですがおそらくどの作品も同じなのでしょう。
 あまり切れ味は感じられない作品で初期作を考えると地味ですが真相は相変わらず良く考えて作られていると思います。
 ただやはり読んでいて萎えそうになる文体ではあります。 

No.450 6点 インシテミル- 米澤穂信 2010/03/29 01:09
 ストーリー、構成は楽しめました。いかにも新本格といった深みのない登場人物や建物といった条件もここまで徹底すると面白いです。
 真剣みや恐怖が全く感じられないお遊びの殺人といった感覚はあまり好きではないのですが一気に読まされました。
 真相というか話のまとめは尻すぼみの感じもありますが読み手としてこの作品に求めていたものが違っただけなのかなあと思います。
 続編が出たらまた読みそうな本でした。

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こうさん
ひとこと
 私の採点で10点は単なる好みです。10~20年前の初読時の印象で不当に高いのもありますが気にしないでください。トリックものは古臭くても昔初めて触れたトリックだったら高得点の傾向が高いです。
 ガイド...
好きな作家
泡坂妻夫、有栖川有栖、東野圭吾、岡島二人、梶龍雄 
採点傾向
平均点: 6.29点   採点数: 649件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(60)
有栖川有栖(32)
岡嶋二人(24)
折原一(22)
連城三紀彦(20)
泡坂妻夫(19)
石持浅海(17)
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パトリック・クェンティン(11)