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[ 本格/新本格 ]
青銅ドラゴンの密室
安萬純一 出版月: 2014年12月 平均: 5.67点 書評数: 3件

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南雲堂
2014年12月

No.3 6点 E-BANKER 2025/09/06 13:28
久々に読む作者の作品である。
前回読了した「ポケットに地球儀」について、自分自身が酷評していたことを思い出してしまった。今回はどうかな?
単行本は2014年の発表。

~雷が青銅のドラゴン像を生き返らせ、雄叫びを上げ、人をかみ砕く!! これは魔法か――ホルツマイヤー家の敷地内にある青銅のドラゴンの塔。そこに近代建築研究家と称するラグボーンが訪ねてくる。探偵でもあるという彼に当主ゲオルグ・ホルツマイヤーは塔の調査の見返りにある事件の謎を解いて欲しいと依頼する。調査の最中、ゲオルグの孫が惨殺される事件が起こる。その殺され方は百年前にドラゴンの建造後まもなく内部で二人の旅芸人が殺さた方法と同じものであった・・・~

南雲堂が配本していた「本格ミステリー・ワールド」の一冊だけに、本格成分が非常に高かった。
まずはタイトルにもある「密室」について。
こんな奇天烈な建築物が出てくる時点で、大方の人は「建物に仕掛けがあるに違いない」という目線で読むことになる。
途中、くだんの建築物(=「大ドラゴン」のことね)の内部を捜査する場面が幾度か挿まれる。
そこは、いわば“伏線の宝庫”になっているし、鋭い読者ならば割と早い段階でピンとくるのかもしれない。
ただし、今回の「密室」。これだけ大掛かりなトリックを用意した割には、なんとも魅力が薄い気がする。
これはもう、「書き方」「盛り上げ方」の問題だろう。もう少し何とかならなかったのか。

うん。そうなのだ。なんとも「惜しい」作品のような気がする。
トリックに独創性もあると思うし、過去の事件との相似に絡めているところも興味を深めている。
何より、ラスト前に炸裂するフーダニットのサプライズ! これは「なるほど!」と唸らされた。

こうやって書いていると、もっと高評価でもよいのではと思うのだが、やっぱり「惜しい」。
他の方が人間描写の不満について書かれているけれど、それもあるかなと感じる。
でも前回よりは随分マシという評価。結構、引き込まれたところはあったし。
繰り返しになるけど、書きぶり次第ではもっともっと面白くなったような・・・「惜しい」!

No.2 6点 名探偵ジャパン 2017/04/02 19:26
島荘、二階堂黎人監修の本格ミステリシリーズということもあってか、いかにもこの二人が好きそうな作品です。
往年の島荘を彷彿とさせる大掛かりで大胆なトリックに、最後、ちょっとした仕掛けを施し、懐かしさの中に現代的な趣向を混ぜ合わせた作品に仕上がっています。
メイントリックについては、まあ、あれをひとりでやるのは(特に犯行後、装置に対して行う施工は)時間的にも無理だろうとは思いますが、そこのところも含めての「古き、良き(いや、全面的に肯定はできませんが)本格ミステリ」という味わいを持っています。

No.1 5点 kanamori 2015/02/24 22:59
ホルツマイアー家の敷地内にある青銅のドラゴンを模した塔を見るため、近代建築研究家で探偵を称するラズボーンが訪れる。調査を進めるさなか、密室状況の塔の内部で、頭をかみ砕かれたような死体が発見される。それは百年前に旅芸人の男女が殺された状況と全く同じだった---------。

ドイツの旧家一族に秘められた過去や、死んだはずの男の復讐に怯える兄弟、陰惨な伝説がある塔で再び起こる密室殺人と、全盛期のディクスン・カーを思わせる王道の本格編です。
物語の全体構成に荒削りなところがあり、登場人物も類型的で(すべて外国人ということもありますが)単なるパズルのピースのように描かれているのが難点ですが、それらも含めてコテコテのパズラーの王道ですw
本書の中核の謎は、ドラゴンの塔を巡る密室殺人の”ハウダニット”で、個人的にあまり好みではないタイプではあったものの、ユニークなトリックは一読に値するのではと思います(現場の見取図がないのが惜しまれますが)。多重解決の”仕掛け”を含め、最後まで目の離せない快作です。


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安萬純一
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