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[ SF/ファンタジー ]
アシモフのミステリ世界
アイザック・アシモフ 出版月: 1973年01月 平均: 6.00点 書評数: 2件

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早川書房
1973年01月

早川書房
1988年10月

No.2 6点 人並由真 2017/09/23 21:35
(ネタバレなし)
 1973年4月刊行のハヤカワ・ポケットSF版で読了。全13編のうち、作者が試みに創造したという感じのウェンデル・アース博士ものは全4作。ただし同じ世界観の番外編的な短編(博士のもとに事件の相談に来る警察官ダヴェンポート警視が別の科学者に協力を願う)がもうひとつあり、アース博士の事件簿の総数があまりに少ない食い足りなさを、いくらかなりとも癒してくれる。

 アース博士ものの内容は、いかにもアシモフらしい科学分野を主軸とする広範な知識に支えられたパズラー路線。月での殺人から、宇宙に遺された暗合の解読まで、限られた作品数ながらバラエティに富むシリーズだ。いくつかの作品では天文学のビギナーならわかるのかな……という程度の敷居の低い科学的素養が解決に使われ、事件の解明まで読み進むとなんとなくその分野の教養を啓蒙された気分になる(とはいっても天文科学も日進月歩らしく、なかには執筆当時の常識が覆された例もあることを、作者自身が告白している)。
 まあ一方で、一般読者が絶対にそんなこと知ってるわけないだろう…とブツブツ言いたくなるような、晩期エラリー・クイーンの短編みたいなものもないではないのだが(笑)。

 ノンシリーズ編はミステリ味のある作品(非SFも含む)が主体だが、なかには純粋な宇宙サバイバルもの『真空漂流』などもある。このアシモフの初めて活字になった作品『真空漂流』の続編『記念日』の方がSFミステリ仕立てということで、姉妹編ともども本書に収録された。両編はそれぞれ違った味わいで楽しめるが『真空漂流』の方は、奇策を用いてクライシスを打破する経緯が良い意味でジュブナイルっぽくて、とても快い。藤子・F・不二雄の某宇宙サバイバルもののアイデアソースになったのでは? とも思わせる。

 全体的に作品を紡ぐことを楽しみ、自作を語ることを喜びとしたアシモフらしい一冊で、まずは満足。
 ちなみにキャラクターとしてのアース博士はよくも悪くも黄金時代パズラーの名探偵の類型内に留まったという感じだが、のちに彼を一種の原型に、あのヘンリーや黒後家蜘蛛の会(ブラックウィドワーズ・クラブ)の面々が誕生したのだろうと推察すると、それもまたゆかしい気分である。
 そういえば『黒後家蜘蛛の会』って、まだ日本語版をもう一冊分、作れるみたいですな。創元がこれまでの分の復刊と同時に、新刊で出してくれないものか。

No.1 6点 kanamori 2014/06/11 21:47
地球外環境学者アース博士が宇宙空間で起きた難事件を自室を一歩も出ず解決する連作ミステリ4編ほか、SFミステリを中心に13編収録された作品集。

ウェンデル・アース博士シリーズは、安楽椅子探偵もののSFミステリという構成がユニーク。ただ、博士は最後の解決シーンのみに登場するだけなので、やや存在感が薄く人物の魅力が十分に発揮できていないきらいがある。当シリーズのなかでは、アンソロジーにも採られている倒叙モノ「歌う鐘」がよく出来ていて、宇宙時代ならではの手掛かりが印象的です。
そのほか、作者十代のデビュー短編「真空漂流」と20年後に書いたその続編の「記念日」、SF要素がないが犯人特定の詰め手が”黒後家蜘蛛の会”の某作を思い起こさせる「その名はバイルシュタイン」などが面白い。
ちょっと気になったのは、地球外惑星の特殊環境による生活習慣によって犯人が失策を犯すというような、謎解きの詰め筋が同じパターンのものが目立つところです。


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