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[ 本格 ]
ソープ・ヘイズルの事件簿
V・L・ホワイトチャーチ 出版月: 2013年04月 平均: 6.00点 書評数: 3件

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論創社
2013年04月

No.3 6点 nukkam 2014/09/10 11:49
(ネタバレなしです) ヴィクター・ホワイトチャーチ1868-1933)は英国の聖職者で、宗教関連本や宗教小説も書いていますがミステリーやスパイ小説にも手を染めています。またかなりの鉄道マニアだったようで、15作の短編(鉄道愛好家のソープ・ヘイズルシリーズが9作と非シリーズが6作)を収めた本書(英語原題は「Thrilling Stories of the Railway」)はどの作品も鉄道が重要な役割を果たしており、あのF・W・クロフツ以前にここまで鉄道ミステリーらしさを味わせる作品があったことは驚きです(しかも趣味の領域を超えています)。本格派あり冒険スリラーありスパイ小説あり、「主教の約束」に至ってはミステリーでさえありませんがこれはこれで面白い作品です。論創社版の巻末解説で指摘されているように、推理でなく実行者や体験者の自白や証言で謎が解かれる部分があるのは本格派推理小説としては物足りなさもありますが、時代(1912年の出版です)を考えるとやむなしでしょう。個人的なお気に入りは大胆なトリックの「側廊列車の事件」、カーター・ディクソンの「第三の銃弾」(1937年)を連想させる「臨港列車の謎」です。トリックがあまりにも有名な「サー・ギルバート・マレルの絵」は図解なしの説明なのでちょっとわかりにくいです。

No.2 6点 mini 2013/07/08 09:53
ホームズのライヴァルたちの1人で論創社版
本来ならかつて創元がライヴァルたちの企画をやった時に入れてもおかしくなかった「ソープ・へイズル」だが、外れた理由は1つにはメジャークラスに一歩足らなかったのもあるのだろうが、最大の理由はこれかなぁ
当サイトでkanamoriさんも述べられてますが、実はこの短編集の中でソープ・へイズルが登場するのは3分の2ほどで残り3分の1はノンシリーズなのである
ところがそのノンシリーズ短編も全て鉄道が絡んでいるので、翻訳刊行するならノンシリーズまで全部入れないと価値が無いし、それだと創元の企画と合わなくなってくるのだ
でも年月を経て他社とは言え全編翻訳されたのは良い事だ、ただノンシリーズも含まれているのだから、短編集全体でのタイトルは原題通り『鉄道スリル物語』みたいな題にすべきだったんじゃないかなぁ

まず先に短所だが解説でも指摘されている通り人物描写である
それも内面的な性格描写以前にそもそも外面的描写すら極めて乏しい、人物などは記号でもいいなどと主張するタイプの読者には合うかも(笑)
とにかく外見に関しては服飾などの描写が殆ど無く、作者は聖職者なので普段から聖衣を着ていたからなのか?余程ファッションには興味が無かったのであろう
長所としてとにかく感心するのは一編の例外無く話に鉄道が絡んでいる事だ
それも我が国によくある時刻表トリックみたいなものではなく、そうかと言って犯罪現場がただ単に列車内だったというのでもない
列車の運行に関するもの、列車の構造が絡むものなど、鉄道マニアが喜びそうな話が多い
事件の方も、殺人から失踪・盗難、さらにはスパイ工作、探偵側から仕掛けるものなど多種多様、中には犯罪とは無関係の人情話まである
それでいて全てが”鉄道”という一点で統一されており、ホームズのライヴァルたちの中でも異彩を放つ
何となくなんだが、日本だと大阪圭吉あたりが鉄道マニアだったらこんなの書いたんじゃないかなと思わせるものがある

No.1 6点 kanamori 2013/06/12 12:37
鉄道マニアの素人探偵ソープ・ヘイズルが活躍する9編にノンシリーズ6編を収録した鉄道ミステリ短編集。論創社のホームズのライヴァルたちシリーズの一冊で、本書は「クイーンの定員」にも選定されている。

走行中の列車から中央部の車両だけを消失させるという魅力的な謎の設定で有名な代表作「サー・ギルバート・マレルの絵」をはじめ、密室状況のコンパートメントからの人間消失、密室内の銃撃などの不可能トリックものから、スパイ冒険スリラーものまで意外とバラエテイ豊かで、20世紀初頭の英国鉄道事情も垣間見れて楽しい。
種明かしが犯人や関係者による告白というパターンが多いのも時代性でしょうか。


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2013年04月
ソープ・ヘイズルの事件簿
平均:6.00 / 書評数:3