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[ 本格 ] 狂気の影 精神科医ジョン・スミス |
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ヒュー・ペンティコースト | 出版月: 1964年01月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 2件 |
早川書房 1964年01月 |
No.2 | 6点 | 人並由真 | 2020/07/13 21:01 |
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(ネタバレなし)
アマチュア名探偵としての実績もある精神病理学者ジョン・スミス博士は、激務の合間をぬってひそかに人里離れた大自然の中で釣りを楽しもうとする。だが彼はたまたま辺鄙な森の奥で、岩に腰掛けて、手にマシンガンを持つハンサムな青年マーク・ダグラスと遭遇。マークは、自分が考えている計画の邪魔になる可能性があるとして、銃で脅して近所の家屋にスミスを連れ込んだ。家屋の中にはマークの妻ケイ、そしてマークの友人知人たち8人の男女がおり、マークはこの8人の中に数年間にわたって自分を脅迫して精神的にいたぶってきた謎の人物がいるはずだと主張した。謎の人物を暴こうとするマークだが、彼は同時に時間的な期限を設けて、途中で誰かが脱走したり、あるいはタイムリミットになっても脅迫者の正体がわからない場合は、自分とスミスを含む全員との無理心中を敢行すると宣言する。とんでもない事態に巻き込まれたスミス博士は、マークの精神を鎮めようと務める一方、マークと一同のこれまでの事情を探り、くだんの謎の人物の正体を暴こうとする。だがそんな中で、またも新たな事件が……。 1950年のアメリカ作品。ポケミスが版権を独占取得しておらず、さらに解説にも刊行年の記載がないので、原書の発行年はWEB調べ。作中でサブヒロインのひとりが太平洋戦争で恋人を失ったとか語っているから、そんなものか。 kanamoriさんのおっしゃるように、シリーズ探偵が遭遇する異色な事件という意味で、西村京太郎の『七人の証人』を思わせる設定。とはいえ物語の趣向の大枠は同様でも、やがて広がっていく事件の構造はもちろん別ものだし、そちらの西村作品を既読のミステリファンでも十分に楽しめる。 物語の後半にやがて見えてくる、この物語の基盤を築いたといえる、とある人間の悪意はちょっと強烈。本作の最大のキモといえるのは、この悪役キャラクターの造形にあるだろう。同時に最後の3ページまで犯人が明らかにされない外連味たっぷりのフーダニット趣向もなかなか素晴らしい。その割に解決がやや荒っぽく、推理の道筋にもう少し考えようもあるんじゃないかなあ、という思いに駆られるのはちょっと弱いが。 2~3時間、良い意味でのB級サスペンス・パズラーを楽しもうとするんなら、十分な出来ではありましょう。ペンティコーストの長編は、あとは大分前に『過去、現在、そして殺人』を読んだきりだけれど、作品数も相応にあるみたいだし、面白そうな未訳のものがあるのなら、もうちょっと長編作品も発掘紹介してもいいんじゃないかと思います。 |
No.1 | 6点 | kanamori | 2012/09/30 12:31 |
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機関銃を持った精神異常者が8人の男女を森の中の別荘に監禁するという、裏表紙の内容紹介を読むとサイコ・サスペンスをイメージしてしまうのですが、これは特殊設定のクローズド・サークルものの謎解きミステリでした。
閉鎖空間で登場人物たちが過去の事件の真相を追及するという私的裁判風プロットで、西村京太郎「七人の証人」、岡嶋二人「そして扉~」などに似た味わいもあります。休暇で森を訪れ事件に巻き込まれる探偵役ジョン・スミス博士はやや地味な存在ながら、一人ひとりの心の内を読み解くいかにも精神科医らしい推理方法で真相も納得がいくものです。 作者は、100冊以上のいろんなタイプの長編を書き(創造したシリーズ探偵も10人以上)量産作家のためか、解説のタイトルも「二流の人」と一般的な評価はいまいちのようですが、本書はB級感のない佳作だと思います。また、短編のほうが得意のようで、日本版EQMMに訳出されていたという”シャーロック叔父さん”シリーズがちょっと気になります。 |