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[ 本格 ]
Gストリングのハニー
ハニー・ウェスト
G・G・フィックリング 出版月: 1967年01月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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早川書房
1967年01月

No.1 7点 人並由真 2021/07/28 06:49
(ネタバレなし)
「わたし」こと女性私立探偵ハニー・ウェストは、カリフォルニアのマリブ・ビーチで、ハンサムな30歳前後の青年カーク(KIRK)・テムペストと知り合う。カーク(KIRK)は三つ子の一番下の弟で、同じ発音の長男カーク(KIRQ)、長女ジュエルに続いて生まれた、次男であった。男児→女児→また男児という順番の、あまり例のない男女まぜこぜの組み合わせで生まれた三つ子は、幼少期からほとんど見分けがつかない美しい顔をしていた。だが10年前にジュエルが火事で顔に大やけどを負い、その後、優れたダンサーとして大成功するものの、決して黄金色のマスクを顔から外すことはなかった。ハニーがそんな三兄弟と深く関わるのと前後して、人気のないプールで次男カーク(Q)が何者かに殺された? 一方で、ジュエルはハニーの周辺に出没するが、決して素顔を見せようとせず、やがて姿を消した。そしてハニーと関係者の周囲に「もしかしたら、実は顔が治っているジュエルの別名なのでは?」と疑念を呼ぶ女たちが複数、現れる。

 1959年のアメリカ作品。ハニーシリーズの第5弾(邦訳では8冊目)。
 
 ポケミスの裏表紙やカラーフォトの厚着ジャケットの惹句などでは、ハニーがGストリング(ストリップでの股関カバーのこと)をつけてどーのこーのと、実にどうでもいい(正直くだらない)ことしか書いてない。

 しかし実作を読むと、生物学的にいささか奇矯な男女混淆の三つ子(なんか横溝作品っぽい)、その内の一人で、火傷のために仮面をつけた妙齢の女性ダンサー、そして当該の女が仮面の下で今の顔を隠して、別の場で別の名を名乗っているのかもしれない可能性!? ……とゾクゾクするぐらいに外連味たっぷりなミステリ的趣向がいっぱい。
(仮面の下の素顔を隠しての入れ替わり? 別行動? と聞くと、国産のあの名作やら、新本格の諸作やら連想してしまうよね。)

 しかもハニーの頼りになる(というかいつも、好意を抱き合いながらも仕事の上ではガチでやりあう)ボーイフレンドでワトスン役のマーク・ストーム警部も前半からかなり異常な態度で問題を起こし、いったいどうなるのこれ? という立体的な興味で読み手を刺激する。

 後半やや話の整理が不順になるのが惜しいが、それでも評者がこれまで読んだ「ハニー」シリーズ4冊の中では一番、ミステリ的に面白い!
 特に前半のワクワク感は、ハードボイルド(というか行動派私立探偵ミステリの要素も踏まえて)かなりのものだ。
 それで前述のように中盤以降、ちょっと話がダレるのがナンだが、最後のどんでん返しでまた評価が上がった。

 なんかハニーシリーズって、とにもかくにもまるでパット・マガーの初期作品みたいに、一本一本仕込みのある大ネタをやっているね。
 ものによっては(こないだ読んだ「~銃をとれ」のように)ネタが明確に古びちゃってるものもあるが、それはまあしゃーない。
 得点的に見ればパズラーファンも十分に嗜んでおいてよろしいシリーズでしょう。(万全たる方面での完成度、とまでは言えないけれど。)

 邦訳のある本シリーズ内、評者の未読があと残り5冊。またなんか、当たりが出るのを、期待したい。


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