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[ ハードボイルド ] ハニーと連続殺人 ハニー・ウェスト |
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G・G・フィックリング | 出版月: 1966年01月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1966年01月 |
No.1 | 7点 | 人並由真 | 2020/08/05 03:00 |
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(ネタバレなし)
ロサンジェルスで開催される国際美人コンテスト「ミス20世紀ペイジェント」。その優勝の有力候補者と目される「ミス・カリフォルニア」ことジョセフィーン・ケラーの、殺害された水死体が上がる。だがコンテストの主催者モーソン・ローレンスは、この死体はジョセフィーンではなく別人だと主張。ローレンスは金の力でゲスな検屍官ワトキンスを懐柔し、事実をごまかそうとしているフシがあった。一方で地元の保安官事務所の殺人課警部マーク・ストームは、かねてからローレンスの裏の顔(売春シンジケートのボス)に探りを入れていた。ストームのGFで、成り行きからこの事件に関わり合うのは「わたし」こと女性私立探偵のハニー・ウェスト。ハニーはまず美人コンテストに参加する各国各地の美女たちに接触し、被害者の身元を改めて検証する。だが事件は、さらなる広がりを見せていく。 1959年のアメリカ作品。ハニー・シリーズの第四弾。 評者は本シリーズは大昔に何か1~2冊、読んだ覚えがあるが具体的にどの作品だったかは、まったく失念。じゃあ改めて、シリーズ第一作(『ハニー貸します』)から読もうと思ったが、確実に持っているはずの蔵書が見つからない。しばらく数か月ほど探していたが出てこないので、まあいいやと思って、適当に手にしたのがこの作品である。 まあ、コレから読んでもほとんど問題はないみたいね(笑)。ハニーのキャラクターの大設定(4年前にやはり私立探偵だった父親ハンクを殺され、今もその正体不明の犯人を追っている)はこの作品中でも改めておさらいされるし。(ただ、マークがハニーに向けて、何かどうも以前のエピソードのことらしい話題をチラリと出してはいるが。) 事件の関係者を訪ね回ってあちこちとび回り、その間に主人公の予期しない形で死体の山が積み重なっていく流れは、ものの見事に50年代の王道ハードボイルド私立探偵小説。それで中盤ではハニーが女性としての弱点をつかれる、かなりショッキングな場面もあり(直接のレイプなどではない)、その辺の緊張感にも事欠かない。 さらに某登場人物の、あれよあれよと変幻するキャラクターも強烈で、見方によってはかなり強引にご都合主義的にいろんな文芸設定を押し付けられた感もあるが、その辺のキャラ描写のある種のダイナミズムも、独特なハイテンションさを感じさせる。 ちなみにハニーとマークの、仕事の上ではライバル関係、しかし男刑事の方が女私立探偵にホレている、というのは、先日読んだ後輩格の女私立探偵シャロン・マコーンそのままで、こういう明快なキャラシフトに、女私立探偵もののひとつのトラディッショナルを改めて実感する。 ミステリとしてはかなり錯綜した物語をかきわけて、最後の3~4分の1で、なんとも斜め方向に驀進。しかし意外なほどに伏線は張られていて、そこから手がかりをひろいまくる丁寧さを見せつけてくれる。 なんかWebでチラチラ、ミステリファンの感想を見たところ、ハニー・シリーズって、おおむねこういういびつなパズラー志向みたいだね? 特にこの作品は、かのクイーンが後期の某長編でやった趣向を先取りしており、あわわわわ……といささか驚かされた(笑)。いやもちろんここでは詳しくは言わないけれど、その辺の仕掛けが見えてくるあたりの軽いゾクゾク感は、ちょっとしたもので。 ただ弱点は、真犯人がわかってもさほどのミステリ的なトキメキがないこと。この辺は(中略)ゆえにまあ、仕方がないか。 とはいえ思った以上に、楽しめた一作。ワイズクラックのてんこ盛りも、いかにもこの時代のB級ハードボイルド私立探偵小説らしくっていい(彼氏のマークの方が、ハニーに負けず劣らず、減らず口を叩きまくるのが笑えた)。 またそのうち、このシリーズは、順不同を気にしないで読みましょう。評点は0.5点オマケ。 |