皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格 ] 紳士と月夜の晒し台 ハナサイド警視シリーズ |
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ジョージェット・ヘイヤー | 出版月: 2011年05月 | 平均: 5.75点 | 書評数: 4件 |
東京創元社 2011年05月 |
No.4 | 6点 | kanamori | 2012/06/01 18:20 |
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ハナサイト警視シリーズ(と、言いきっていいのか?)の第1作。これは掘り出し物の本格ミステリでした。
印象的な発端の死体発見シーンが後のストーリー展開に活かされてないのが少々もったいないように思いますが、容疑者最右翼の立場にありながら、能天気でユーモラスな言動を繰り返す被害者の腹違いの弟妹のキャラクターで楽しめます。タイプは若干違うけれどクレイグ・ライスの登場人物を思わせるところがあった。 警視の中途半端?な役割はシリーズ共通のものなのか、次作が楽しみなシリーズです。 |
No.3 | 4点 | smile66 | 2012/01/04 21:57 |
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本格ミステリベスト10に載っていたので読んでみたが、私には全然合わなかった・・・
推理プロセスが・・・などという事を全く抜きにしても、全然ダメだった。 私には、この作品の評価されている要因であるはずの「登場人物」というものがまるで合わなかった。容疑者全員が不毛な罪の擦り付けあい、相手のことも気にせず言いたいことを喚き散らす・・・。 もう、なんていうかヒステリックな雰囲気が始終キィキィ音を立てているようで気分が悪かった。 この感じはバークリーの一部の作品でも感じた。この頃のイギリスの作品は合わないのかなぁ。 |
No.2 | 6点 | nukkam | 2011/06/10 08:20 |
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(ネタバレなしです) 10代の若さでデビューした英国の女性作家ジョージェット・ヘイヤー(1902-1974)は歴史ロマンスの祖として名を残しましたが、56冊の長編作品の中には12のミステリーが含まれています。1935年発表の本書はハナサイド警視シリーズ第1作の本格派推理小説です。第16章でのハナサイド警視のせりふにあるように、「容疑者たちはみな動機があるうえにアリバイはない」状態が延々と続き、強力な証拠もなかなか出てこないというやや単調なプロットの本格派推理小説です。ユーモアを適度に交えた会話の連続で何とか退屈ぎりぎりの線で踏みとどまったという感じです。せっかくの晒し台をもう少し活かすような演出でもあればと思いますが。 |
No.1 | 7点 | mini | 2011/06/09 10:00 |
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例の森事典で森英俊氏がこの作家を好意的に解説しているのを覚えていたのだけれど、まさか創元文庫から刊行されるとは思わなかった
こういう作家に目を付けるのが創元編集部の凄いところで、割と見逃しやすい種類の作家だもんなぁ どうも日本の本格編愛読者は、”不可能犯罪”とか”密室”というキーワードには敏感なくせに、本格であっても人物描写で読ませるタイプの作家にはハナもひっかけない習性が有るからな ”ミステリーとは単なるパズルでいい、登場人物は記号でもいい”を標榜する他サイトを閲覧した事が有るが、この作品は人物を単なる駒として記号化したのでは絶対に書き得ないタイプの作品なのである ジョージェット・へイヤーは本職はロマンス作家でロマンス小説を大量に書いており、その方面では名前を知らなかったらもぐりのファンと言えるほどの伝説的存在らしい 逆にミステリーファンには、そんな名前聞いたことないぞ的な存在でもあったわけだ しかしヘイヤーはミステリー著作が12作有り、特にハナサイド警視とヘミングウェイ部長刑事が登場する4作は作者を代表するシリーズらしく、創元も引き続き刊行予定だそうだ 創元だし作者の本業がロマンス小説という点からコージー派と勘違いして俺には関係ねぇやで敬遠する読者も居そうだが、それは二重の意味で間違っている まずコージー派だからつまらないと決め付けるのも偏見もいいところだけれど、根本的な間違いはそもそもこの作家作品はコージー派では全く無いという事だ 書かれたのが1935年、そうつまり本格黄金時代真っ只中の作品なのである 森氏はクリスティ風の巧妙な作風と評し、創元文庫の帯惹句には”セイヤーズが認めた実力派”とある たしかにクリスティとセイヤーズのいいとこ取りした感じだ ただし中盤で物語が停滞し同じような会話が繰返される場面などは、両作家の悪いとこ取りと感じる読者も居るかも知れない 私は登場人物達が互いに罪を擦り付け合う感じはC・ブランドを、すれからし読者に向けて書かれた感じはバークリーを連想したんだけど考え過ぎか 本格には誰にもアリバイが有って犯行が不可能なパターンと、だれが犯人でもおかしくないパターンとが有る 不可能犯罪系しか興味が無い読者は前者のパターンを好むだろうが、この作品は典型的な後者のパターンだ 誰でも犯人足りえる設定だと、読者側がもう誰が犯人でもいいやで興味を無くしがちだが、この作品はそこを逆手にとって読者に対し罠を仕掛けてくる 作者は確信犯的にすれからしな読者を狙い撃ちしているのは、ミステリーを読み慣れた読者なら明らかだろう 今後読む読者の中には、会話中心で話が進むし本業がロマンス作家という先入観から殺人を絡めたロマンス小説の延長みたいに解釈する人も居るかも知れないので前もって言っておくと、そうした解釈は正しく読み取っていないと思うし、また謎解き部分が弱くてキャラ中心の話だと解釈する読者も分かっていないと思う むしろ慣れた読者向けに罠を仕掛けてくるタイプの作品で、そうと気付くか否かで読者側の読解力センスが試される作であろう |