皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ ハードボイルド ] ダン・カーニー探偵事務所 DKAシリーズ |
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ジョー・ゴアズ | 出版月: 1990年06月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 2件 |
新潮社 1990年06月 |
No.2 | 6点 | 斎藤警部 | 2021/06/23 05:52 |
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クルマ絡みの金銭トラブル(ローン未納)専門の探偵事務所所長/所員達が警察小説風に繰り広げる問題解決(クルマの回収)ショートストーリーズ。 ‘67~’68と時期の早い最初の四作「メイフィールド事件簿」「ページ通りの張りこみ」「ペドレッティ事件」「ジプシーの呪い」は目立った引っ掛かりも無く(悲劇は起こるが)サラサラ読ませてもらう、悪くない。 ’69の五作目からギアシフト(ミステリ度合も上がる)。 中盤からぐんと深みを増す「マリア・ナヴァロ事件」は最後まで痺れさせてもらった。ネタバレは言えないが飛び切り変わった趣向の「影を探せ」。人種問題がガタガタ回ってエンディングでじんわり来る「黒く名もなき吟遊詩人」。パズルのような結末オーライ感が痛快「オバノン・ブラーニーの事件簿」。慌しいヴァイオレンス喜劇「フル・ムーン・マッドネス」の最後はやさしいラヴで〆(!)。小粋と呼ぶには激し過ぎるエンドに目を瞠る熱い騙し合い「不具者と貧者」。案件に一ひねり、スペクタクルなドタバタ小咄「深紅の消防車」。 追い詰められる(時に、逃げ切る?)者達には当然ながらそれぞれの事情。哀れを誘ったり怒りに火を点けたり。 まあ何しろダン所長を筆頭に各メンバーの人情味あるキャラクターと行動が素晴らしい(中には大馬鹿者もいるが)。 悪くない一冊。 |
No.1 | 6点 | mini | 2011/03/01 09:54 |
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発売中の早川ミステリマガジン4月号の特集は”高橋葉介の夢幻世界/ジョー・ゴアズ追悼”
ゴアズがミステリーを書き始める以前、MWAの例会で自身の探偵社勤務の経験について講演した際、アントニー・バウチャーから執筆を薦められたのが書くきっかけだったとの事だ こうして生まれたのが、支払いを滞納している自動車の回収を主な生業とする探偵社を舞台にした作品群で、通称”DKAファイル”と呼ばれている この短篇集は新潮文庫の独自編纂で、DKAシリーズの全貌がある程度俯瞰できる優れものだ 冒頭の「メイフィールド事件」は長編も含めたゴアズ全著作の処女作でもあり、短編の方が先だったのである となるとゴアズ入門には一番適している事になるはずなのだが、ちょっと微妙かなぁ DKAファイルの長編は未読だけど、どうも長編と短編ではイメージが異なるらしく、ましてや非シリーズ長編「ハメット」を読んだ後では、同じ作家が書いたのが信じられない位 硬質で正統ハードボイルドな「ハメット」とは全く違い、DKAファイルの短編群は、とにかくテンポの良さで読ませるタイプで重厚感などは皆無である およそ一般的ハードボイルドのイメージとは程遠く、当サイトの「死の蒸発」での空さんの書評にも警察小説ぽいとの指摘があるように、87分署シリーズを警察から探偵社に置き換えたらこんな感じかな この短篇集だけを読んでゴアズを判断するのは誤解を招く可能性があるな 「ハメット」とDKAファイルの短篇とでは、読者によって好みが完全に分かれそうだ |