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[ 本格 ]
パーフェクト殺人
ゴーテ警部シリーズ
H・R・F・キーティング 出版月: 1967年01月 平均: 6.00点 書評数: 3件

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早川書房
1967年01月

No.3 7点 人並由真 2017/10/03 17:27
(ネタバレなし)
 有名な出落ちタイトルのミステリ(理由はminiさんのレビュー参照)、この趣向を知っただけでケッサクと思えて、読みもしないうちに半ばお腹いっぱい。古書で購入後、そのまましばらくツンドクにしてあった。それでこのたびそろそろ読んでみようと手に取る。ちなみにゴーテ警部もキーティングも長編はこれが初めて(例によってキーティングも、本そのものはそれなりに買ってはあるのだが~汗~)。
 
結論から言うと期待以上に面白かった。大筋の骨格はパズラーティストの警察捜査小説という感じ。特に、警官として家庭人として権力者に睨まれて辞職に追い込まれるような暴走めいた行為はできないが、その一方で世の中の正義に対してはできるかぎり誠実であろうとするゴーテ警部のキャラクターには、デティルが書き込まれた小説ならではのリアリティとそれゆえの魅力がある。
 さらにそれと対照される形で描かれる、事件関係者で建築業界の大物ヴァルデーや、また上にはへつらい下には厳しいゴーテの上司サマント警視補などの主要&サブキャラクターたちも味わい深い。
 なかでは、ユネスコから派遣された犯罪学者でインド警察の見学にきたスウェーデン人スヴェンソンが出色。当初はゴーテ警部のお荷物的な人物の役割かと思いきや、意外に直情的な正義漢で、青臭いながらもなかなか男気のあるところを見せるのもいい。物語の後半、このスヴェンソンが本筋から離れたところで窮地に陥る際、本気で肩入れて心配してしまった。
(一方で家庭を顧みない夫として妻子から警部が批難されるのは、捜査官ものの王道のお約束を守った感じだが。) 

 なお肝心の犯人捜しのミステリとしては変化球の小技を重ねて奇妙な新鮮味を出している手応えだが(××××と思いきや…とか)、ギリギリまで真犯人の正体を引っ張るサスペンスは悪くない。その犯人特定の伏線は短編ネタ…にさえなっていない感じもするが、一応張られており、見ようによってはかなり大胆な手掛かりかもしれない。尻切れトンボのように見えなくもないラストも、個人的には余韻を感じて気に入っている。
 
 ちなみにゴールデンダガー受賞(さらにエドガー賞の候補)に関しては、インドを舞台にしたエキゾチシズムで大幅に評価の底上げしたことは間違いないが、それでもたしかに、貧富の差が大きく、司法体制が盤石ではない(当時の)同国のお国柄と臨場感はよく描けている。
 先に書いたスウェーデン人スヴェンソンが勝手な思い込みでインドの文化に古来からの神秘性を見出そうとし、その一方でインドの貧民に対して中途半端に小市民的なヒューマニストになるところも心に残る。
 彼は眼前の物乞いの子供にお金をあげたいと思うが、そんなことをすれば数十人・数百人の子供に同じことをしなければならない、とゴーテに止められる(『タイガーマスク』の「全アジアプロレス王座決定戦編」の一場面を思い出す描写だ)。だがそういった、幼い善意と切ない世知をぶつけあう叙述の積み重ねが、スヴェンソンとゴーテの間にある種の友情と信頼感を育んでいくあたりもとても良い。

 たぶん本作は、発表当時の60年代には、大昔の『四つの書名』『月長石』からなんとなく受け継がれていた<英国ミステリ界のインド文化に対する伝奇的なイメージ>を切り崩して新鮮に見えたんだろうね。
 WEBを通じて21世紀のインドの文化レベルが世界中に広範に知られるようになった現代では、また違う読み方をされるんだろうけれど。

No.2 6点 mini 2011/04/27 09:45
一昨日発売の早川ミステリマガジン6月号の特集は”その名は―『名探偵コナン』”
私は漫画コミックは全く読まずTVアニメも全く観ない人間なので、『名探偵コナン』を一度も観た事が無い
したがって今回の特集には全く興味無し
今回だけ売行きが良かったりするとやばいな、味をしめた早川がまたアニメ企画とかやりかねないしな(苦笑)
ジョー・ゴアズの時みたいに、先月亡くなったキーティングの追悼特集を臨時に追加すると思ってたのにな、冷たいぞ早川

正確には”F”を一文字追加してH・R・F・キーティングは、作家以外にミステリガイド指南役のイメージが強い
実際ガイド本もあるし、ガイド本の方は既に書評済み
キーティングの代表シリーズはインド警察のゴーテ警部シリーズで、その代表作がCWA賞受賞作「パーフェクト殺人」である
キーティングは後に非シリーズ長編「マハーラージャ殺し」でも2度目のCWA賞を獲っている
「パーフェクト殺人」は題名だけ聞くと完全犯罪っぽいが、単にパーフェクトという名前の人物が被害者というだけである
一応本格に分類される事が多いが、内容的には警部単独で調査する警察小説に近く、本格としての観点で評価するのはあまり適切でないと思える
当時のインド社会の中での警察活動に苦悩する警部の姿が読みどころで、煮え切らないラストなどもその延長だろう
きっちり謎が解決して終わらないと気が済まない読者には向いていないが、まぁそういうところが魅力な作である

No.1 5点 nukkam 2011/01/25 15:04
(ネタバレなしです) 1964年に発表された本書はゴーテ警部シリーズ第1作の本格派推理小説でCWA(英国推理作家協会)のゴールド・ダガー賞を獲得した本格派推理小説です。近代捜査法を導入しようとするゴーテ警部がインド社会の伝統や因習の前に悪戦苦闘して捜査が思うように進展しないのを面白おかしく描いているのがユニークです。例えばゴーテ警部の取調べをのらりくらりとはぐらかす事件関係者が「〇〇のお告げ」の前では「青菜に塩」状態になってしまう場面なんかは結構楽しめました。ただ謎解きとしては結末が腰砕け気味なのが残念で、ゴールド・ダガー賞は過大評価ではないかと思いますが。


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H・R・F・キーティング
1987年08月
雨に濡れた警部
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パーフェクト殺人
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