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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
男は旗
稲見一良 出版月: 1994年02月 平均: 6.75点 書評数: 4件

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新潮社
1994年02月

新潮社
1996年11月

光文社
2007年03月

No.4 2点 ことは 2023/12/03 13:11
最初の章は、かなり意外な視点人物で読み応えがあったが、すすむにつれて展開/描写がゆるくなり、迫真性がなくなる。それに替わって、SFやファンタジーのセンス・オブ・ワンダー感があるわけではなく、荒唐無稽な展開がだらだらすすんでいく感じで、うん、申し訳ない。私にはまったく、あいませんでした。

No.3 8点 メルカトル 2021/09/14 22:48
大海原を制覇し、その優雅な姿は“七つの海の白い女王”と嘔われたシリウス号も今は海に浮かぶホテルとして第二の人生を送っていた。ところが折からの経営難で悪辣なギャングに買収されてしまう羽目に。しかし!シリウス号に集う心優しきアウトローどもが唯々諾々と従う筈はない。買収の当日、朝まだきの海を密かに船は出航した。謎の古地図に記された黄金の在り処を求めて…。
『BOOK』データベースより。

とにかく理屈抜きに面白い。最初から最後まで全てが見どころと言って差し支えありません。冒頭からテンポ良く話が進み、次から次へと新たな登場人物と共にエピソードが生まれ、その度にワクワク感が増幅していきます。短い中にもぎっしりと詰まった充実の内容、時折ハッとさせられるような情感溢れる描写、魅力的なキャラ達の拮抗した活躍ぶりなど、全てに好感が持てました。

ギャングたちとのバトルも盛り上がりますが、一人として死者が出ないところも心優しい作者の姿勢がよく表れていると思います。そしてラスト、オチをきっちり決めてくれています。なるほどそういう事だったのかと、思わず納得です。まだまだ冒険は終わらない、けれど・・・続編が読みたかったですねえ、本当に。

No.2 10点 Tetchy 2018/02/18 23:49
いやぁ、痛快、痛快。
刊行当時の1998年ならば私はこれを稲見風ジュール・ヴェルヌ調海洋冒険小説とでも評したろうが、21世紀の今ならばこれは稲見版『ONE PIECE』ではないか!と声を大にして評しよう。
大人の夢と冒険の物語を描いたら右に出る者がいない稲見一良氏が今回選んだ題材は一本芯の通った男が気の置けない仲間たちと共に船で大海原に漕ぎ出す、冒険心溢れる男と女たちの物語だ。

陸の冒険活劇から後半は海洋冒険活劇へと転じて、海賊たちと戦い、また未知の島で絶滅したと思われていた幻の鳥グァンを発見し、宝の在処を示した島の形を手掛かりに一行は船を進める。
そして『ONE PIECE』がそうであるように、本書も読んでいて実に気持ちがいい。たった250ページ弱の分量ながら、胸を躍らせて止まない要素がふんだんに盛り込まれ、ひきつけて止まない。私がどれだけのことを本書を読んで感じたかを表すには、本書の倍のページ数は必要だろう。

しかし物事には全て終わりがある。どんな愉しいひと時にも必ず終わりは訪れる。それはまさに夢のような一時の終わりだ。
最後の一行を読み終わった今、私の心はなんとも云えない堪らない気持ちでいっぱいだ。
まずはこの結末が堪らない。
そしてそんな不可能を可能にした安楽以下、他のシリウス号の面々が堪らない。彼らの力に屈せず、どんな苦難にも立ち向かう強い心と、そして何よりも人生を愉しむことを忘れない素晴らしい人々の気持ちよさが堪らないのだ。
そして何よりも、こんな気持ちのいい物語を書いた稲見氏がもう今はいないことが何とも堪らないのだ。

こんな物語を読まされたからには、どうしても大きな喪失感が込み上げてくる。もっと夢を、物語を見させてくれよと、叶わない駄々を訴えたくなる。
死を覚悟した人の紡ぐ物語はなんと優しく、美しい事か。

モデルとなったホテル・スカンジナビアだが、既にもうホテルとしては経営してなく、2006年にスウェーデンの企業に売却され、整備のために上海のドックに曳航されている途中に浸水して沈没してしまったとのこと。そして安楽氏もまたその後を追うようにその2年後に永眠されたとのことだ。何と全てが夢の出来事ではなかったかと思われる話である。

題名に掲げられた旗とは、いつか男は旗を掲げて船出すべきだというメッセージの象徴だろう。それはまさに稲見氏自身が実践したことでもある。癌を患った時、伏せてばかりはいけない、男は心に旗を掲げ、命燃え尽きるまで夢へと漕ぎ出せ。そう自身を鼓舞している作者の声が聞こえてくるようだ。

No.1 7点 kanamori 2010/06/04 19:02
男の浪漫あふれる海洋冒険小説。
かつての豪華船で今は海上ホテルとなっている老朽船を宝探しのため大海原に出航させるというストーリー。
子供の心を捨てきれない男たちの冒険物語で、最後はなんとファンタジーに昇華します。
小説としては構成の甘さがあったり、後半は文章もひどいことになっていますが、作者が小説を書き始めた動機や本書執筆時の体調を思うと、物語の男たちと作者が二重写しに見えて、思わず感動を覚えました。


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