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[ サスペンス ] ダイナマイト円舞曲(ワルツ) |
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小泉喜美子 | 出版月: 1980年12月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 2件 |
集英社 1980年12月 |
集英社 1980年12月 |
No.2 | 8点 | 雪 | 2018/09/11 07:20 |
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地中海に面した人口二十五万人、神奈川県ほどの大きさの小国家ロンバルド公国。二十六歳の日本娘である「わたし」は、パリ留学時代の友人クレマンティーヌに招かれ、二週間ほどこの国に滞在することになった。彼女は君主である大公ドミニコ・ヴィットリオ九世に見初められ、新たに公妃となったのだ。"ブビイ"と呼ぶ夫をうっとりと見つめ、幸せに浸るクレマンティーヌだったが、絶対君主である現大公には不吉な噂が付き纏っていた。彼の妻たちがこれまでに七人、次々に変死を遂げていたのだ。
賓客として「わたし」を迎える王室の人々や侍従長、ロンバルド全軍を率いるドラクロワ将軍など、煌びやかな人々の群れ。 だが彼女は到着早々、内線電話の混線から、"D(デ)"と呼ばれる謎の人物による陰謀の存在を知ってしまう。そしてクレマンティーヌの私室で行われた略式晩餐会の席上、皇太子ポールが苺により毒殺された。 友人の身を案じ、秘かに宮殿の探索を進める「わたし」だったが、彼女もまた国を揺るがすクーデター計画に巻き込まれていく・・・。 誰が敵で誰が味方なのか、混沌とした状況のその果てに、高らかにダイナマイトの轟音が響く! いやいいですねえ。歌舞伎の十八番「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」を下敷きに、架空の王国に舞台を移し変えて、もののついでに軽く叙述トリックを仕掛けた本作。彫琢された描写になおかつ軽みを湛えた文章とかムチャクチャ凝ってます。ハンパじゃないのは一目瞭然。 昭和48年作ですが、杉本一文絵の横溝正史が書店に山積みになっていて、赤い背表紙の松本清張とドロナワな戦いを繰り広げていた時代に、こういうお洒落な作品の存在は一種の奇蹟でしょう。新書版巻末の既刊ラインナップに目を通しても、本書の存在は異色そのもの。書き下ろしとはいえ、出版社もよくGOサインを出したものです。 トリック的には処女作「弁護側の証人」に数歩を譲りますが、こっちは作者の嗜好ど真ん中なので、明らかにリキ入ってます。個人的にも凄く好み。作中でも「ゼンダ城の虜」への言及がありますが、ルリタニア・テーマの国産ミステリは数自体少ないです。まず架空国家って設定がめんどくさいですからね。アニメだと宮崎駿監督の大名作「ルパン三世・カリオストロの城」とかありますが。 物語のもう一つのベースはペロー童話の「青ひげ」ですが、メインのお家騒動に比べると七人の妻たちの死の真相はたいしたもんじゃなかったなあ。一応原典も踏んでるし、ミスディレクションにはなってますけど。 それは置いといて、小泉喜美子さんの本は古書でも結構お値段が張りますが、相応の価値はあると思います。本書もできれば文庫ではなく、挿絵の入ったカッパ・ノベルス版で手に取って欲しいですね。 |
No.1 | 6点 | kanamori | 2010/05/15 17:02 |
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地中海の架空の王国を舞台にした陰謀ミステリ。デビュー作から10年後に出版された長編第2作です。
国王の9番目の王妃と留学先で知り合いだった主人公女性の一人称で物語が綴られていきますが、一種メルヘンチックな雰囲気を醸し出しながら、サスペンス溢れる陰謀譚が描かれています。 王国の秘密とか不可解な出来事の真相はあまり独創的とは言えないですし、衝撃度はデビュー作ほどのものではありませんが、社会派全盛の時代に、このような洒落たミステリを書くこと自体非凡なセンスを感じました。 |