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四万人の目撃者
高山検事&笛木時三郎刑事
有馬頼義 出版月: 1958年01月 平均: 5.75点 書評数: 4件

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講談社
1958年01月

河出書房新社
1964年01月

講談社
1973年01月

光文社
1988年03月

双葉社
1995年05月

ベースボールマガジン社
1997年12月

No.4 6点 虫暮部 2023/06/09 12:42
 高山検事、大した根拠も無いまま暴走してるな~。誰が訴えたわけでもないのに。目立つ形の “官憲横暴!” ではないが、矢後選手にはえらい迷惑だし、独断で家捜しやら押収やらするし、容疑者は撃たれるし。穏やかに描かれた権力批判として読んだ。見込み捜査が別の事件を誘発する話か、とも予想した。
 そして結局、毒物に関しては決定的な記述が無く曖昧なまま。殺人罪で起訴は難しいと思う。そもそも、銃器犯罪の隠蔽で殺人、って割に合わないのでは。ミステリとしてはスジを通し切れていない。
 ただ、読後感は必ずしも悪くなかった。それは検事の気持自体はまっとうだからか。切れ者ではない “才人気取り” の右往左往する様が、想定外の(?)愛すべきアンチヒーロー的ユーモアを醸し出しているようだ。

No.3 7点 クリスティ再読 2020/02/10 22:07
大観衆が見守る中、長打を打った四番打者が三塁に向かう途中、倒れて死んだ...観客の中にいた検事がその死に疑念を持つ。ひそかに解剖した結果、コリンエステラーゼの異常が検出された...殺人か?
と、極めてキャッチーな話のように見えるのだけど、実は非常に地味でリアルで手堅い話である。このギャップが面白い。ミステリ史的には「社会派」の代表的な作品になって、時代柄で戦争の影が少しあるのだけど、別に告発小説でも何でもない。そのかわり、タイトな文章と野球選手の内面の丁寧な描写、男女の機微を突いたうまさなど、純文学的なテイストに良さがある。がその分、読者を唸らせるような飛躍はない。
そうは言っても、被害者の四番打者の打率と、背景事件の報道とに相関があるとか、なかなか面白いアイデアもあるし、有機リン系農薬をベースとした毒物だから、これオウムのサリンと似たようなものだね。あと、漁村で死んだ魚を集めて肥料を作る男が不気味。
小説としては結構面白いが、ミステリだけを期待する読者だと期待外れじゃないかな。背景になる犯罪ビジネスがあるんだけど、「事業として」成立するか怪しいものだから、その動機に検事も「わからない...」なんてつぶやく。そういう「わからなさ」にリアルを感じるかどうかで、この小説の評価が違うんだと思うんだよ。

No.2 4点 江守森江 2009/12/27 02:52
「有馬・紅白・除夜の鐘」昭和世代には欠かせない年末の風物詩。
作者の父親を記念した「有馬記念」当日に書評する。
書かれた時代にはテレビ放送なんて無い。
四万人なら後楽園球場の巨人戦が超満員しか思い浮かばない。
そのプレー中にスター選手(全盛期の長嶋・王をイメージ)が死亡したらもっと大騒ぎな気がする。
野球好きな検事も暇なのか夜な夜なナイター観戦出来た時代なのか?
作者も野球小説と語った様に、推理小説部分が地味な捜査とサスペンスな為に違う方面が気になる作品だった。
※余談
五冠馬シンザン登場以前に書かれているので競馬の大衆化、ましてや有馬記念が十五万人以上の観衆を集める売上世界一のレースになるとは作者も思わなかったのだろうが、十五万観衆を目撃者に有馬記念のレース中にスター騎手(武邦彦〈武豊の父〉をイメージ)が死亡する設定(トリックは転用可能)で書かれていたら日本競馬が続く限り後世に語り継がれただろう。

No.1 6点 測量ボ-イ 2009/12/09 20:31
野球選手がプレ-中に突然死するというミステリアス
な出だしですが、解決は尻すぼみというか、やや不満
が残りました。
でも文章は読みやすく、約50年も前の作品とは思えな
い感じです。

余談ですが、氏の父君は中央競馬会(JRA)の理事
長を務めておられ、その功績を讃えて創設されたレ-
スが、今も年末に行われる有馬記念競走だそうです。
これは知りませんでした。


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有馬頼義
1976年12月
三十六人の乗客(旺文社文庫版)
平均:6.00 / 書評数:1
1959年01月
リスとアメリカ人
平均:7.00 / 書評数:1
1958年01月
四万人の目撃者
平均:5.75 / 書評数:4