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[ 本格 ] マックス・カラドスの事件簿 ホームズのライヴァルたち |
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アーネスト・ブラマ | 出版月: 1978年04月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 3件 |
東京創元社 1978年04月 |
東京創元社 1978年04月 |
No.3 | 7点 | 斎藤警部 | 2024/04/06 14:10 |
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「『探偵ジェイク・ジャクスン』を読んでいたのかね?」
ディオニュシオスの銀貨 カラドスとカーライル、意外な再会。そして小手調べの事件解明。蠢き始める一篇。 古銭の偽造に纏わる話。 7点 ストレイスウェイト卿夫人の奸知 灼熱の騙し合い冒険譚。最後に顕れるのは、まるでやさしい連城のような、反転そのものを逆説に掛けたが如くの、滋味溢れる反転模様。 「円の弧はわずかなものであっても、全体の形を作り上げることはできる」 ラストシーンの明るさ、爽やかさ、温かみにはやられました。若い没落貴族夫婦、真珠の盗難に纏わる話。 9点 マッシンガム荘の幽霊 集合住宅にて幽霊騒動。トリックこそギャフンギャフンだが、その背景/動機はなかなか読ませる怖さと面白さがある。ちょっとした冒険シーンも良し。ラストシーン更に良し。 7点 毒キノコ 少年毒死事件。地道な捜査部分含む物語のドラマ性が躍動し、トリックのおとなしさを凌駕。やはりラストシーン良し。 7点 ヘドラム高地の秘密 第一次世界大戦前夜のスパイ疑惑なる深刻な背景を持つ冒険譚。暗号解読に纏わるカラフルな挿話が良いバランサーとして機能。 6点 フラットの惨劇 「命が狙われている」と探偵のもとへ駆け込んで来た浮気亭主。ホームズ譚を大甘にした風情だが、情景の浮かぶ文章に軽いユーモアの配置も効いて読ませる。決定的な偽装発覚ポイントをカラドスが明かす小ぢんまりしたエンドも、ささやかな考えオチで締まり良し。 6点 靴と銀器 民家にて銀製品コレクションが消失し、靴が盗難の証拠品と目される。こういう言い方するとネタバレっちゃネタバレなんだけど、全く無関係な二つの事象がある種小粋に面白い絡み方をして、不思議な結果を見せた話。乾いたメロドラマの中に、手堅く、なかなかに熱いロジック在り。ドタバタ気なユーモアよろし。いきなり小咄風に締めるラストも悪くない。 7点強 カルヴァリー・ストリートの犯罪 卸売会社の優しいお飾り社長が精神錯乱?状態で帰宅。その後、会社の倉庫が火事に遭っていた事が判明。 緩いホームズのような話だが、この過不足無いユーモアと時代感は素敵だ。 6点 探偵二人。主役は盲目。暗闇のようで暗闇でない、あちこちで手掛かりが光る「場」での心理戦が実に眩しい。 あか あか あか あか あか あか あか おお おお おお おお おそろしい おそろしい おそろしい にゃあお とびら |
No.2 | 6点 | 弾十六 | 2021/11/02 00:14 |
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ブラマさんは小説が上手い、と思う。人間に興味がある人なんだろう。盲人探偵の設定には感心しないが、登場人物たちが物語のなかで生きている。翻訳は堅実なんだが、実はニュアンスが違うのでは?という感じを受けたところが多少あり(私の英語力では十分に確認できず)。そこを上手く掬いとったらもっと面白い話なのでは?と妄想している。
本格ミステリっぽさを期待すると全くガッカリする。手がかりの提示は、どの作品でも不十分で、全く描写されないこともある。次が気になってどんどん読んじゃう、という展開の妙と登場人物の息吹を楽しむべき作品だろう。 盲人探偵マックス・カラドスが活躍する短篇26作は一つを除き、3つの短篇集に収録されている。 ❶ Max Carrados(1914) ❷ The Eyes of Max Carrados(1923) ❸ Max Carrados Mysteries(1927) 以下、本書の収録短篇を初出順に並び替え、カッコ内の数字は創元文庫の短篇集の並び順、原タイトルは初出のものを優先、#は初出順のシリーズ連番、黒丸数字は上記の収録短篇集。初出は英Wikiを基本にFictionMags Indexで補正。 なおシリーズ第2作は『クイーンの定員2』収録の「ナイツ・クロス信号事件」、第3作は「ブルックベンド荘の悲劇」なので、日本語で#01〜#04まで続けて読むことが出来る。 *************** (1) The Master Coiner Unmasked (News of the World 1913-8-17) #01 ❶ as "The Coin of Dionysius"「ディオニュシオスの銀貨」:評価6点 本シリーズは、最初タブロイド週刊誌News of the Worldに20週連続掲載(前後編が多いので全12話)された。本作は主人公とレギュラー脇役のバックグラウンドをチラリと見せる書き方で深みが出ている。シリーズ第一作として上手い。ミステリとしては読者に隠されたことが多すぎ、ネタも平凡。ブラマは英国銅貨の権威らしい。 p8 <ペルメル>紙の最新号(the latest Pall Mall)♣️新聞なら夕刊紙のThe Pall Mall Gazette(1865-1923)、雑誌ならThe Pall Mall Magazine(1893-1914)。latestなので雑誌だろう。 p8 私立探偵(the private detective)… 興信所員(Inquiry agent)♣️英国では米国と比べてあんまりprivate detectiveとは言わないイメージ。 p9 ディオニュシオスの時代のシチリア王国の四ドラクマ銀貨(Sicilian tetradrachm of Dionysius)♣️430B.C.頃の銀貨。WikiにGreek Silver Tetradrachm of Naxos(Sicily)の画像があった。 p9 二百五十ポンド♣️1894年当時の価格。英国消費者物価指数基準1894/2021(133.33倍)で£1=20803円。250ポンドは520万円。 p10 珍しいサクソンの古銭とか、疑わしいノーブル金貨(a rare Saxon penny or a doubtful noble)♣️Saxon penny及びnoble gold coin(英国最初の金貨。1344年ごろ導入)で検索するとそれぞれ画像あり。 p12 リッチモンド♣️カラドスの住み家<小塔荘(タレット)>がある。 p14 セント・マイケルズ(St Michael’s)♣️架空のパブリック・スクールか。 p14 あのウィンじゃないか(old ‘winning’ Wynn)♣️原文ではあだ名っぽい感じ。 p15 黒内障(amaurosis)♣️目には異常が見られない視力障害だという。なので、他人からは正常な眼に見える、という設定のようだ。 p19 ヴィダールの『咆哮する獅子』(Vidal’s ‘Roaring lion.’)♣️Louis Vidal(1831-1892)のLion rugissant(1874)本物はサイズ36x64x16cm。 p22 十二年前から、自分の召使いが見えない(I haven’t seen my servant for twelve years)♣️失明は12年前のことのようだ。だが従僕はそれ以前から勤めている? p24 サイズは五番(about size seven)♣️靴の紳士用UKサイズで7.0は、日本サイズ25.5cm(=US7.5 / EU41-42)。どこから5番が出てきたのかな? p25 金とプラスチックのアルバート型の時計鎖(His fetter-and-link albert of gold and platinum)♣️ここではfetter-link Albert chainで見られるような洒落た形の鎖だろう。単にAlbert chainと言えば「時計鎖」のことでデザインは関係ないようだ(英国アルバート公に由来)。何故プラスチック? p25 右の袖口にハンカチがはさんである(A handkerchief carried in the cuff of the right sleeve)♣️ヴィクトリア朝紳士のハンカチ入れ場。ポケットより取り出しやすそう。 p25 週給五ポンド♣️英国消費者物価指数基準1913/2021(118.36倍)で£1=18468円。月給21.7ポンド(=40万円)、年額260ポンド。 p29 <モーニング・ポスト>紙♣️ロンドンの日刊紙(1772-1937)。 p29 五百ポンド♣️p25の換算で923万円。 *************** (2) The Clever Mrs Straithwaite (News of the World 1913-9-21 & 28) #04 ❶「ストレイスウェイト卿夫人の奸智」:評価6点 面白い企みとその顛末の話。夫婦のキャラがよく描けている。最後のセリフは、カーライルのがthe report、カラドスのがa report。この違いがよく分からない。 p32 ある哲学者… ドイツ名前の(a German name)… いかなる場合であれ、ある人間が何をするかを正確に知ろうとするには、その人間の性格の一面を見きわめさえすればいい(in order to have an accurate knowledge of what a man will do on any occasion it is only necessary to study a single characteristic action of his)と言った♠️誰のことだろう。 p33 三十五歳の私立探偵であるこのぼくが(Thirty-five and a private inquiry agent)♠️カーライルの発言。ここはp8に合わせて「興信所員」が良いと思う。 p33 今後二十一年間(the next twenty-one years)♠️なぜ半端な数字? p37 ヴィドック(Vidocq)… 『盗まれた手紙』(the Purloined Letter)♠️なかなか興味深い発言。 p38 五千ポンド♠️p25の換算で9234万円。 p40 四月十六日。この前の木曜日(April sixteenth. Thursday last)♠️該当は1914年だが、これでは雑誌発表時だと未来。 p43 メトロポリタン新歌劇場(the new Metropolitan Opera House)…『オルレアンの少女』(La Pucella)♠️どちらも架空だろう。La Pucelleはジャンヌ・ダルクのこと。 p46 ブリッジ仲間(bridge circle)♠️1904年にビッドの原則が固まったようだ。当時は最新流行のゲーム。 p46 夫婦はカラドスと面識があるような感じだが、#01〜#03には登場してない。 *************** (3) The Ghost at Massingham Mansions (初出❷) #15「マッシンガム荘の幽霊」:評価5点 密室トリック?はなんかアレなんだけど、最初は幽霊譚で、最後は面白い情景。構成が良い。p105の記述から2月又は3月の事件。 p74 古い拳銃(an old revolver)♣️「回転式拳銃」と訳して欲しい… p81 私立探偵(inquiry man)♣️p33と同様「興信所職員」で良いだろう。 p83 検死査問会(inquest)♣️英米圏に特有の制度なので、日本での定訳が無い。 p85 <ブル>(the Bull)♣️パブっぽい名前。 p85 ターポーレー・テンプルトン事件(Tarporley-Templeton case)♣️架空の事件だろう。カラドスがこの調査員(シリーズの他の作品には登場しない)と知り合った事件、という設定のようだ。 p86 幽霊話(ghost stories)♣️カラドスは好きだったが、タネが子供だましだった、と感じている。 p91 評判の良いミュージカル(a popular musical comedy)♣️英Wiki“Edwardian musical comedy”のイメージだろうか。 p91 <パーム・トリー>(Palm Tree)で夕食♣️架空のレストラン? p103 取り替えます(would certainly be looked to to replace it)♣️ここは誤訳。試訳「ちゃんと取り替えてくださいね」 *************** (4) The Mystery of the Poisoned Dish of Mushrooms (初出❷) #14 別題 "Who Killed Charlie Winpole?"「毒キノコ」:評価7点 インクエスト好きには興味深い話。ある趣味の集まりの展開がリアル(多分、作者のコイン趣味での体験に基づくものだろう)。あちこちに読者を巧みに引っ張る展開が上手で、作品としては非常に納得。キノコって現代でも未知の部分が多いので素人は手を出さないのが良いようです。 p106 数年前の十一月(Some time during November of a recent year)♠️p119の記述から1918年だと思われる。 p106 検死陪審員(jury)♠️インクエストの陪審員である事を翻訳で補っている。 p108 ブリン(bhurine)♠️毒物の名前だが、Web検索でも見つからない。どうやら架空のものらしい。 p109 アマニタ・ブロイデス… 「黒帽子」(Amanita Bhuroides, or the Black Cap)♠️このキノコの学名も見当たらず。Amanitaはハラタケ目テングダケ科テングダケ属。「黒帽子」は死刑宣告時に判事が被る黒ビロードの装束だが、英名Black Capというキノコも見当たらない。Death CapならAmanita phalloides(タマゴテングダケ)。p146で田舎の人は「悪魔の香水壜(Devil’s Scent Bottle)」と呼ぶ、とも書いているが、この英名のキノコも存在しないようだ。 p109 塩による検査法や銀製スプーンによる検査法(The salt test and the silver-spoon test)♠️不適切な民間伝承の例。「塩蔵すればどんなキノコも食べられる」「毒キノコは銀のスプーンを入れて煮ると黒くなる」いずれも誤りとWebにあった。 p109 証言の申し出(expressed a desire to be heard)♠️インクエストは検死官の裁量が広く認められているらしい。当初予定になくても、検死官が申し出を認めれば、自発的に意見が表明できるようだ。(ソーンダイク博士もインクエストに飛び入りで証人に質問を求めたりしていた) p112 評決をくだした(brought in a verdict)♠️はっきり書いてないけど、インクエストなら「死因」を確定するのが目的なので、ここでの評決は明白(無罪とか有罪とかはインクエストの対象外)。 p113 エルシー・ベルマークがカラドスと知り合ったのはシリーズ第8話“The Comedy at Fountain Cottage”(初出News of the World 1913-11-16 & 23) ❶ p117 一万五千ポンド♠️英国消費者物価指数基準1918/2021(58.29倍)で£1=9095円。15000ポンドは1億3642万円。 p118 <モーニング・インディケーター>紙(The Morning Indicator)♠️架空の新聞だと思われる。 p119 今月の六日、水曜日(On Wednesday, the sixth of this month)♠️11月6日水曜日を探すと1918年が該当。 p119 ここでは薬局で特殊な毒物は「知っている者」にしか売ってはならない、となっている。そういう規則が実際にあったのか。 p121 往復運賃は三シリング十八ペンス(three-and-eightpence)♠️3シリング8ペンス。ユーストン駅からセント・アボッツ(架空地名)まで。1662円。 p126 <デイリー・テレグラフ>紙の私事広告欄♠️『人魚とビスケット』(1955)を思い出すなあ。 p127 ≪ロンドン・ゼネラル≫バスの鮭肉色(サーモン・ピンク)の切符(the salmon-coloured ticket of a “London General” motor omnibus)♠️The London General Omnibus Company(LGOC)はロンドンの主要バス会社(1855-1933)。 p133 ディンデイル、イーロフ、ヤップ(Dyndale, Eiloff and Jupp)♠️架空人名のようだ。 p137 選挙の効能♠️スリのネクタイの色を変える程度のこと(change the colour of the necktie of the man who picks our pockets)。劇場で聞いた気の利いたセリフらしい。 p145 正当理由(entitled to)♠️離婚の申し立てには特別な理由が必要だが、当時は「夫の不貞+虐待」が要件のはず。1923年以降なら「虐待」だけでも可能。 *************** (5) The Secret of Headlam Heights (The New Magazine 1925-12 挿絵W. E. Wightman) #19 ❸「ヘドラム高地の秘密」:評価5点 New MagazineはCassellの挿絵付き小説月刊誌。本作を皮切りにシリーズ5作を掲載。 舞台は1914年8月。ベイカーのキャラがユニーク、こーゆーキャラ設定がこの作者の物語力を示している。珍しくアクション・シーンもあり。 p152 マーケット・スクエア♣️近くにPentland港(p180 架空地名)がある。 p156 「平常どおり営業」(‘Business as usual’)♣️チャーチルの言葉。The maxim of the British people is 'Business as usual'.(ギルドホール, 1914-11-9)。コロナ禍でも使われているようだ(略してBAUというらしい)。 p156 五ポンド分の小為替(postal orders)… 五ポンド紙幣(a five-pound note)をくずす♣️このくだり、意味不明だが、大戦中は金属不足で、日常的にガスメーターなどに必須なのにも関わらず、硬貨を集めるのが大変だった、という話を読んだことがある。高額紙幣から小銭を得るためのテクニックか。翻訳では順序が逆になっているが、原文は「五ポンド紙幣で釣り銭を得るために、いったん少額の郵便為替に変えて、それを小出しに使う必要がある」という感じ。当時は紙も不足で郵便為替が法定紙幣の代わりとして使われたようだ。英国消費者物価指数基準1914/2021(118.36倍)で£1=18468円。 p157 火打ち石(flints)♣️硬いので石器の材料となった。これ以降はずっと石器の話題。「火打ち道具(flint implements)p158」は「石器」だろう。 p158 エヴァンズやナダヤック(Evans or to Nadaillac)♣️英国の石器時代の権威John Evans(1823-1908)とフランスの人類学者Jean-François-Albert du Pouget, Marquis de Nadaillac(1818-1904)。 p159 基金と半ペニーの入場料(endowment and the ha’penny rate)♣️すぐ前に入場料「無料(free)」とある。ここは「わずかな賃金」という意味では? p163 相当な金額の硬貨を一枚(a substantial coin)♣️当時の最高額金貨はソブリン(=£1)。ジョージ5世のなら1911-1932、8g、直径22mm。 p164 人差指を鼻にあて(place a knowing forefinger against an undeniably tell-tale nose)♣️「秘密」というジェスチャーだろう(モリス『ボディートーク』参照)。 p168 エピオヴァヌス(Epiovanus)♣️残念ながら架空。 p177 『パリのアトリエ物語』(Stories from the Studios of Paris)♣️多分架空。画家とモデルのちょいエロ話を想定しているのかも。 p181 血色の悪い(sallow-complexioned)♣️原文darkか?と思った私は重度の浅黒警察です。 *************** (8) The Crime at the House in Culver Street (The New Magazine 1926-02 挿絵W. E. Wightman) #21 ❸「カルヴァー・ストリートの犯罪」:評価6点 近所のお付き合いの話から事件に至る流れが良い。探偵小説が解決に役立つ。 p284 一等、禁煙車両(First class, nonsmoking)♠️客車のコンパートメントは喫煙用と禁煙用が別だったのだろう。「一等定期(first season)p298」という記述もあった。 p284 スパッツ(Spats)♠️泥除けで靴に被せて履くもの。ここではお堅い紳士のイメージの一つとして挙げられているようだ。 p303 女性の手紙の追伸♠️上手いことを言う。 p306 亀一匹惑わす(mislead a tortoise)♠️何故亀?と思ったが調べつかず。聖書には、地を匍う「汚れた(unclean)」生物の例としてレビ記11:29にthe weasel, and the mouse, and the tortoise after his kind(KJV)とある。 p311 ヴァン ・ドゥープ(Van Doop)… <義父の像(Portrait of a Father-in-Law)>♠️架空の画家の架空の作品。Rembrandt van Rijnの油絵Samson Threatening His Father-In-Law(1635)を連想した。 p311 三百ポンド♠️p117(1918年)の換算で273万円。 p314 五月二十五日… 先週の土曜日♠️直近は1918年が該当。 p317『探偵ジェイク・ジャクスン』(Jake Jackson, the Human Bloodhound)♠️架空。 p320 週給六、七ポンド♠️支配人の給料。月給26ポンド(=24万円)〜30ポンド。 *************** (7) The Curious Circumstances of the Two Left Shoes (The New Magazine 1926-05 挿絵W. E. Wightman) #22 ❸「靴と銀器」:評価7点 夫妻との会話が面白い話。各登場人物のキャラが生きている。途中に挟まれた叙述方法は便利(繰り返し使える手じゃないが)。ラストはビックリだけど、これでいいのだ。 p244 モンキー泥棒(Monkey Burglar)♣️調べつかず。架空と思われる。 p247 <レッドシャンク>Redshank♣️架空のブランドだろう。 p248 銀行に預ける(kept at the bank)♣️ミス・マープルにも不在時先祖伝来の貴重品を銀行に預けるシーンがあった。貸金庫サービスのようなものか?そういえばラッフルズThe Chest of Silver(1905)でも貴重品の大箱を銀行の金庫に預ける、という場面があった。1977年のテレビ・シリーズを参考映像としてあげておこう(ドラマでは銀行の地下室が収蔵場所で、貴重品箱があちこちに置いてある感じだった)。 p251 それはどうも(That’s very nice of you — to forget) p251 フランスの笑劇(French farces)♣️ドアがたくさんあって登場人物が出たり入ったりが自在、という感じか。 p252 なかなかきれいな娘(a girl of quite unusual prettiness)♣️本書の翻訳、読んでいてところどころ日本語が的を外してる気がしたのだが、こんなのがあるなら他でもニュアンス違いが結構あるのかも。試訳「並外れて可愛らしい娘」 p254 忘れてた、きょうは足がふやけて(I forgot; my feet are as soft as mush today)♣️多分足が疲れててふにゃふにゃ、という意味なのだろう。最後まで読むとそういうことだと思われる。なおp259の「ふやけて」はtender。 p257 何万燭光かのアーク燈に照らされた… ♣️ここら辺、何を言ってるのか真意が良くわからない。何かの引用か。参考まで原文 I should like to go up into a very large, perfectly bare attic, lit by several twenty thousand candle-power arc-lamps, and there meditate. p265 靴のサイズは4.5か5♣️婦人用だと日本サイズで22.5か23cm。 p270 四十九点♣️クリケットではアウトになるまでずっと打席が続くので、打者は何十点でも獲得出来る。四十九点なら強打者だろう。 p271 アウトにさせられた(were given run out)♣️run outは走塁時のアウト。givenは、球と脚とどっちが先だったか微妙なプレーだったのだろう。試訳「走塁アウトを提供した」 p272 フェアプレー♣️会話で二回出てくるが最初はcricket、次はM.C.C.(クリケットの元締め。メリルボーン・クリケット・クラブ。ルールはここで決める) p272 なかなかの美人(really is an awfully pretty girl)♣️何故かここでも控えめな翻訳。 p273 <タンゴ ・ティーザー>(Tango Teaser)♣️調べつかず。架空? *************** (6) The Holloway Flat Tragedy (The Story-Teller 1927-03) #25 ❸「フラットの惨劇」:評価6点 実にリアル感のある、だがありそうも無い依頼から事件発生、そして解決に至る流れが良い。英国でラジオの公式実験放送は1920年6月15日(火曜日)が最初らしい(正式にラジオ放送が始まったのは1922年11月)。 p200 私立探偵(private detective)♠️ここはp33やp81とは異なり原文どおり。1927年にはprivate detectiveという方が普通になったのかも。 p202 ホロウェイ♠️19世紀後半からの新興住宅街だったようだ。 p203 反対尋問(cross-examinations)♠️法廷手法としての「反対尋問」(証人を召喚していない側が反対の立場で尋問する)ではなく、確認のための追加尋問、というような意味だろう。ソーンダイク博士がインクエストでcross examinationをする場面があり、インクエストには検察側も弁護側もないので最近気になってる単語。 p207 離婚♠️1923年以降は「夫の不貞」だけでも離婚事由になった。それ以前だと「+夫の虐待」も要件。 p208 バネ錠と、彫込み錠(a latch lock, and a mortice lock)♠️「ラッチ錠」は内側からは手動で差込ボルトを動かす仕組み、外からは鍵で開閉出来る。「彫込み錠」はドアの内部に差込ボルトが隠れているのが特徴。メカニズムが埋め込み式なので、当時は重要なドアに付けられていたようだ(現在では普通だが)。ここでは多分シリンダー式のイエール錠だと思う。ラッチ錠はメカニズムが外付けで、鍵も単純で簡易なイメージ。簡易ロックと正式ロック、ということだろう。 p210 私立探偵(an inquiry agent)♠️ここは「興信所」、とするとp200は半分ふざけてる言い方である可能性あり。 p211 一ギニー(the single guinea)♠️報酬はギニー単位となる。実際の支払いはどうしていたのだろう。わざわざギニア金貨を用意するのか?小切手なのか?現金だと1ポンド札orスターリング金貨+小銭(1シリング硬貨)となってなんだか気まずくないか? p212 絵入り新聞(the illustrated papers)♠️当時はイラストではなく写真だろう。 p213 ラジオの公開実験(the wireless demonstration)♠️the wirelessは英国英語でラジオ。1920年ごろの事件なのだろう(p207の離婚事由は気になるが…)。ブラマ全集を全文検索したがラジオが出てくる他の作品は見当たらなかった。 p216 刑事(デカ)’tecs p220 朝8時に来てから晩6時に帰る。通いの女中の勤務。 p222 パークハースト劇場(Parkhurst Theatre)♠️Parkhurst RoadとHolloway Roadに面した1890年開設の劇場。1908年に映画館に改装されたが1926年廃業。なのでここのafternoon’s performanceは「芝居」ではなく「映画」。すぐ隣にライヴァル劇場Marlborough Theatreがあった、とは言え、1908年には既に劇場全盛期は過ぎ、映画の時代に突入していたとは… (そのMarlboroughも1918年に映画館として再オープンしている) p232 三日、木曜日♠️p237で「9月3日」のことだとわかる。1925年が該当。ラジオの史実とは合わない… p237 小型拳銃(little gun handy)♠️32口径オートマチックな感じ。根拠なし。 |
No.1 | 5点 | mini | 2009/03/20 10:00 |
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ホームズのライヴァルの一つで創元文庫版
マックス・カラドスものの特徴は、作者ブラマが類型を嫌うという性格にあると思う 探偵の造形からして然りで、視力にハンデのある探偵という設定自体、当時の他のライヴァルたちとの個性の差別化を計ったのは間違いない ただこの設定だが、いささかやり過ぎの感もある あまりにもカラドスの能力がずば抜けていて、例えば指で触っただけでインクで書かれた文字を読み取ってしまう その為か読んでると探偵が目に障害があることを感じさせないので、一般的な探偵役と印象が変わらなくなってしまっている 当時からこの点を指摘する声はあったようで、後にベイナード・ケンドリックという作家が、目の不自由な人が現実的に受け取れる情報だけで推理した場合を想定した作品を書いている 類型を嫌うという面では、作品も類型化していないのが長所だ 他のライヴァルの中には例えば隅の老人のように全編ワンパターンに陥ってしまっているのもあるが、カラドスにはそれが無い 悪く言えば短篇ごとに趣向や傾向が違い、シリーズとして一定のイメージを捉え難いとも言えるが あと謎解き面での短所として、これも切れ味鋭い隅の老人とは真逆で解決での切れ味が鈍い事だ 解決部でスカッとした読後感にならず、せっかくの意外な真相も、ダラダラした説明で効果が半減してる作品もある 書き方が下手なのかもしれないが、カラドスものは全体に重厚な作風であり、その重厚さが解決編にまで及んでしまったという事か |