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[ 時代・歴史ミステリ ]
千尋の闇
ロバート・ゴダード 出版月: 1996年10月 平均: 7.50点 書評数: 4件

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東京創元社
1996年10月

東京創元社
1996年10月

No.4 6点 八二一 2022/11/07 20:46
回顧録をたどって過去の事件や謎を追求するというのは、珍しくもない設定であるし、特にミステリ的要素が強いわけではないのだが、登場人物の造形の確かさや語り口がうまいので、一気に上下二冊読めてしまう。

No.3 7点 tider-tiger 2016/11/12 13:16
当初はアカデミックで固い作風を想像していたのだが、バリバリ(死語?)のエンタメ小説だった。登場人物の胸中に幸福感と絶望感を行き来させる手管、適度に読者を焦らすいやらしさ、緩急のつけ方もうまく、恋愛を絡めた中盤の展開などエンタメの基本に実に忠実。大きな釣り針をこれ見よがしにぶら下げて読者を愚弄するような書きっぷりも痛快。重厚にして巧妙な一作。
個人的にはストラフォードの手記が最も読み応えがあった。いかにも(私の想像上の)英国紳士という風で素晴らしい。
気になったのは主に二点。
善人と悪人の区分が単純明快に過ぎる。もう少し複雑さが欲しい。
エリザベスの話し合い無用完全拒絶の姿勢には無理がある。この完全拒絶の理由づけが非常に難しく、この作品の急所になると予想していたが、やはり……拒絶しないと物語にならないので仕方がないのだが、せめてもう少しうまく処理できなかったのか。

構造的にはいわゆる輪唱小説(造語です)ですな。
ただ、二人の男が同じようなことをしているのに、なぜだかストラドフォードはかっこよく見えて、マーチンは本当にどうしようもない奴のように映ってしまう。この点は批判が予想されるが、当然わざとでしょう。マーチンがダメな奴だからこそ、彼が最後に見せる大きな勇気が驚愕を生み出す。そして、エリザベスはマーチンにあのセリフを言う。
まあ、そうは言ってもマーチンをもう少し感情移入し易い人物にはできたはず。ダメな奴=いけ好かない奴ではないのだから。

歴史は時に使命(理性)に殉ずるよりも愛(感情)に生きる者の手に委ねられる。
そして、歴史は繰り返す。

No.2 8点 mini 2013/03/15 09:52
本日15日に講談社文庫からロバート・ゴダード「隠し絵の囚人」が刊行される、MWA賞受賞の美術ミステリーらしい

便乗企画としてゴダードを初めて読んでみた、う~ん、なんでもっと早く読んでおかなかったのだろう、こんな凄い作家だったとは
ジャンル投票は迷った、だってジャンルを特定するのが非常に難しい、私は広い意味でサスペンスに投票したが多分kanamoriさんの投票は歴史ミステリと推測しますがこれも充分納得出来る
謎を追及する過程は本格派だし、根本の謎は過去の歴史の中に埋もれた闇なので歴史ミステリでも有り、政治絡みの陰謀諜報スリラーでも通るだろうし、騙し合いなんかはある種スパイ小説そのものであるし、男気を見せるとこなんかはハードボイルドだ
しかも全てのジャンルをごちゃ混ぜにしながら尚且つ単独ではどのジャンルにも当て嵌まらない
セイヤーズとアンブラーとル・カレとフォーサイスとチャンドラーと、あとついでに高橋克彦まで全部足し合わせて、テイ「時の娘」で割ったような味わいなのである

”このミス”でのゴダードのランクイン作品は「蒼穹のかなたへ」「闇に浮かぶ絵」などごく一部作品に限られ定評有る「リオノーラの肖像」でさえもランキングしてないのは残念だ
「千尋の闇」は文庫で上下巻合わせて600㌻を超えるが、まさに巻を措く能わずで10年に1冊レベルの圧倒的パワーを持っている、”稀代の語り部”という通り文句は本当だった

No.1 9点 kanamori 2010/04/13 19:03
稀代の騙り部・ゴダードの処女作。
失業中の元歴史教師が、半世紀前のある政治家の謎の生涯を、残された回顧録を基に調査するが・・・。
過去と現在の謎と陰謀が重層的に交叉し、めくるめく物語世界に引き込まれる。
真相はある程度分かりやすくなっていますが、やはり圧倒的な物語性に酔わせてくれるのはいつも通りでさすがです。


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ロバート・ゴダード
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