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[ ホラー ] 血の伯爵夫人 |
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| レイ・ラッセル | 出版月: 1986年04月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 朝日ソノラマ 1986年04月 |
| No.1 | 6点 | クリスティ再読 | 2026/05/30 09:38 |
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| 確かに異色作家短篇集の「嘲笑う男」は今一つだったけども、それでも表題作に相当する「サルドニクス」は面白かった。「嘲笑う男」ではゴシック・ホラーは「サルドニクス」だけであとはSFか奇譚だったのだが、どうやらこの人はホラー作家としての評価が高いようだ...で長編「インキュバス」を読むとアメリカンなモダンホラー。どういう作家かさらに謎になる。というわけでもう一冊の短編集がこれ。副題で「モダン・ゴシックの精髄」とついているから期待。
結論から言うと、この人の訳書では一番面白い。短編5作を収録し、「血の伯爵夫人」は例のエリザベート・バートリの独白でその生涯を振り返る話。この人については澁澤龍彦や種村季弘が紹介し桐生操の「血の伯爵夫人」が詳しく語っている「女吸血鬼」。ラッセルは史実というより自由な創作に近く、エリザベートの血の渇きを彼女の本質というよりも周囲に流されたような形で描いている。どっちかいえば夫フェレンツとの普通の恋愛話が良く描けているようにも感じちゃって困ったなあ...だからエリザベートは「ハメられた」ような印象。長編にした方が面白いと思うよ。 ラッセルとしては「サルドニクス」、本作(原題「サングギアリウス」)、「サジタリウス(いて座)」と「S」始まりのゴシック三部作という体裁らしい。機会があれば「サジタリウス」もやりたいな。ポケミスの「新・幻想と怪奇」に収録のようだ。 個人的に一番好きなのは「彗星の美酒」。なんとロシア五人組を扱っているというクラシックネタでもなかなかニッチな着眼点。無能なディレッタントと思われていた男が急に作曲の才を発揮して五人組を驚かせる。次回作は「カラマーゾフの兄弟」のオペラ化!現在「ファウスト」をヒネったオリジナル作を企画中...その真相は?という話。リーダーだったバラキレフの精神病によるキャリア中断やムソルグスキーのアル中廃人っぷりなど、そういうあたりがヒントになっているようだ。 「ビザンチン宮殿の夜」は「市民ケーン」の裏話みたいなものかな。大金持ちの映画製作者がホストとして呼び寄せた因縁の男女たち。ホストの狙いは自分に対する陰口を突き付けるという自虐的なものだったのだが...これなかなかいい。しかし、あえて結末でひっくり返すのがなんかもったいない。 「仮面の暗殺者」は中南米の小国の大統領の訃報を巡って、その取材に赴いた記者が遭遇する陰謀の話。これは意外な真相によって話が破綻するという困ったもの。そういうことしない方がいいよ。話を逆転することが自己目的化しているみたいである。 「悦楽の分け前」は催眠術を悪用して..というSFみたいなホラ話。ここでも「市民ケーン」のザナドゥがキーワードとして登場する。 まあ何というか、実力はあるんだけども、その実力の使い方がヘンテコな作家。困る。 (そういえばバートリ伯爵夫人を扱った劇の周囲を描いたホラー「痛苦の聖母」が出ているようだ。何と作者はご贔屓のブラックバーン!そのうち読もう) |
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