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[ 短編集(分類不能) ] 嘲笑う男 異色作家短篇集 |
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レイ・ラッセル | 出版月: 1964年09月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 2件 |
![]() 早川書房 1964年09月 |
![]() 早川書房 2006年10月 |
No.2 | 5点 | クリスティ再読 | 2025/10/11 19:05 |
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さてこのシリーズも本書とボーモントで終わりかな。評者はこの人あまり馴染みがなかった。冒頭の「サルドニクス(冷笑者・嘲笑う男は意訳)」が、ちょっと「吸血鬼ドラキュラ」の冒頭を思わせる雰囲気がある怪奇小説の中編。医師が縁ある女性の夫となったボヘミアの田舎の城に訪れる。この城主は「嘲笑う男」、口が歯を剥き出しにして笑っている状態で麻痺するという奇病に取り憑かれており、その治療のために主人公の医師を呼んだのだ。この奇病の原因がちょっとした因縁である。まあだから主人公が行った治療法が...という話ではある。雰囲気は出ているのだが、まあ想定内のオチといえばそう。
で、この話の他は、劇場に舞台をとった演劇関連か、SFのショートショートという感じ。それなりに上手ではあり、メランコリックな傾向があるから、印象はブラウンというよりも星新一。星ほどの切れ味ではないか。やはり星新一のミニマリスト的な冴えは特異だというのが結論。星っぽさなら、催眠術的なタバコの広告をめぐる「深呼吸」とか、悪意ある破壊的な文明が発展することを未然に防ぐ活動をする「防衛活動」などが、メランコリックな色彩で共通点があることになりそうだ。しかし、オチ重視、というわけではない。サクッと書いたアイロニカルな話というくらいの感覚。まあヤンキーなブラウンよりもヨーロッパ風で「品がいい」という印象はある。 異色作家というのともちょっと違うかな。わりと王道。 「サルドニクス」がやはり特異。ならばこの人の怪奇路線の長編「インキュバス」はどうなんだろう? |
No.1 | 7点 | mini | 2010/12/28 09:49 |
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発売中の早川ミステリマガジン2月号の特集は”PLAYBOYが輝いていた頃”
1953年創刊の『PLAYBOY』誌は成人向け娯楽雑誌だが、今だとサブカルチャー総合誌みたいな存在で、一般大衆向け文芸誌としての側面も持っていた 都会的で小洒落た小説が掲載され、『ニューヨーカー』誌のような存在だったらしい 雑誌『PLAYBOY』と聞くと私はどうしても1人の人物の名前を挙げずにはいられない その名はレイ・ラッセル 異色短篇作家レイ・ラッセルは『PLAYBOY』誌全盛期の編集長だった人物で、『PLAYBOY』が輝いていた1950~60年代は、丁度異色短篇作家の全盛期とも重なるのである 別名義なども用いて『PLAYBOY』誌はじめ他のSF雑誌などに短編を発表していたらしい 特に得意なのがアイデア一本勝負的な軽いショートショートで、例えばF・ブラウンなどよりも軽さを感じる レイ・ラッセルについてよく言われるのは、”アイデアだけ”、”内容に深みが無い”、”何でも書けるが器用貧乏”といった評価だ しかし3つのうち最初の2つの評価については私は賛成できない 決してアイデアだけでなく途中の技巧も素晴らしいもので、この早川の全集の中でも上手い方の部類の作家だと思う 内容も決して浅くは無く、なかなか文明批評的な面白さに満ちていて、軽いけれど表面的なだけではないのである ただし最後の”器用貧乏”という評価は残念ながらズバリ当たっている 技巧的な面では上手いのだが、結局その上手さが仇となって器用貧乏に陥っている感じなのだ この辺が他の異色短篇作家と比べて知名度で劣る要因になってしまったのだろう |