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[ 社会派 ]
南アルプス殺人事件 暗殺回路
梓林太郎 出版月: 1987年07月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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KADOKAWA
1987年07月

青樹社
1993年07月

廣済堂出版
1998年08月

No.1 6点 斎藤警部 2026/05/24 14:16
<電線株は公共投資の恩恵を受け、業績が回復している。光ファイバーという夢があるからだ。>

おゝ序盤から意外な××発見は熱い。 起承の習いを破り、起から転へとつんのめって突進。 おセンチのアンネンポルカも踊ったが、何が悪い。
1970年代の光通信実用黎明期、そのキーマンの一人と目される “旭通信工業” の若き技術者が、南アルプスにて消息を絶つ。 親友である主人公が、関係筋の力も借り捜索に乗り出す。 やがて山中や市街地にて、業界とその周辺に属する者たちの屍体が続々と現れる。 併せて不法侵入や放火の被害も出た。

“光ファイバーは、ビルの谷間の日陰の住宅にも太陽の恵みを与えた。”

早いタイミングから、思わぬ熱い人情ドラマをぶっこんで来る。 ズルいねえ、良い意味で。
だが中盤少し前あたりから、チョイと書き分け不徹底で紛らわしい登場人物群が奔出し、リアリティの演出とも言えようが、混乱気味になりました。
それはまあ置くとして、中盤から “お山さん” の匂いが希薄となり、街というか業界のガヤガヤにばかり傾いて行ったのは残念であった。

しかし、それはむしろタイトルで山押し一本みたいに思わせるのが悪イんであって、一定の山好き層へ確実に売るための業界方便なんでしょうが、それならいっそ 『光の回廊 ~南アルプス殺人事件~』 とかなんとか、山の方をサブタイトルに持って来たらいいのに? 令和以降の重版は多分その方が売れますよ? なんていい加減な事を思ったりもするのです。 あ、本作実際は 「暗殺回路」 なる副題付きですね。(おっと、今は本題の一部扱いらしな)

さて前述のような混乱やら小さな不満はあったものの、総じてスリリングな良い犯罪捜査物語でした。
華々しい殺人トリックや巧妙なアリバイ偽装などとは縁が無いものの
或る意味切実とは言え身勝手で独特な殺人動機には目が開いたし
或る狡猾な “情報探知トリック” の逆説には、ちょいとヤラレたと思いましたね。

「彼らは、知っていたら絶対に喋らせます。 喋ったからといって、その場で警察に身柄を渡したりはしない」

これ言うとネタバレになるのかな ・?・?・?・ 最後はなんだか 『日本の黒いなんとか』 みたいな足早大団円?に雪崩れ込んだ感がありますが、本作の(社会派)ミステリとしての主眼がそっちにあるわけじゃあないですよね(たぶん?)。 それでもこのエピローグ的後日談が明瞭に記されたことで、小説の締まりが一、二段上がったのは間違い無いでしょう。

ラストシーンと、最後の一文、ニヤリと、沁みました。


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