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[ 本格 ]
完全不在証明
チャールズ・ヴェナブルズ&ブレイ警部 別冊Re-ClaM
クリストファー・セント・ジョン・スプリッグ 出版月: 2026年01月 平均: 7.00点 書評数: 3件

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Independently published
2026年01月

No.3 7点 人並由真 2026/03/09 21:36
(ネタバレなし)
 ロンドンから16マイル離れたグレート・ヘイク周辺にある町フェアビュー・エステート。そこの大地主オーヴァチェア卿が先祖から受け継いだ小塔型の御屋敷。そのガレージである夜、火事が生じて中から死体が見つかる。状況から、死の商人として名を馳せた40歳台半ばの実業家アントニー(トニー)・マリンズが、何者かに殺された? と捜査陣や土地の者の間に疑念が生じた。捜査が進むなかで複数の容疑者が浮かび上がるが、彼らにはみな確固たるアリバイがあった。

 1934年の英国作品。
 おなじみのミステリ研究同人誌「Re-ClaM」の別冊として鳴り物入りで刊行されたが、最初の通販を買い逃し、仕方がないので昨年の歳末に、都内のミステリ専門古書店「盛林堂」に初めて足を運んだ(もう何年も通販は利用してるが、直に行くのは今回が初めて)。 
 おかげで無事に店内にあった残部を買えたが、そうしたら今年になってから発行元がAmazon経由で本書の一般販売を開始。ちょっとフクザツな気分だが、まあ、いいか、である(ごく個人的な意味合いで、同店に赴いた意味はそれはそれであった)。

 三門氏の長編作品の翻訳は実は今回初めて読んだが、セミプロとしては達者に思える一方、同じセンテンスの中にまったく同一の修辞をつっこむなど、読む日本語としてもうちょっとこなれさせられるのにな、という箇所も散見し、ほんの少しだけ引っかかった。
 章の分割はこまめでその分、場面展開や筋運びはスピーディ。それでも地道な捜査のくだりは中盤までちょっとだけかったるかったが、後半になると話の流れにギアが入る感じでなかなか面白くなる。キーパーソンはアントニーのずっと年下の美人妻パトリシアだが、彼女を軸にした人間関係の綾が見えてくるあたりから、各登場人物が怪し気に思え始める。だがそれが表面通りのことか否か? そのほぐれ具合が読みどころ……かもしれない?!

 最後のサプライズはたしかに大技で、ミステリとしてそこで終らずに犯人像というかホワイダニットについての掘り下げがあるのも良い。英国の某作家の系列、という感触もあるが、ここではネタバレを警戒して、その想起した作家の名前は出さないでおく。前半、実はかなり大胆な仕掛けをしていたのにもニヤリ。

 フツーになかなか面白い、黄金期クラシックパズラー。いろんな意味で時代色はあるが、そこもまた味。大騒ぎしなくてもいいけれど、こういうものを発掘紹介・翻訳刊行してくれた三門氏にはあらためて感謝。

No.2 6点 nukkam 2026/02/23 02:30
(ネタバレなしです) 英国のクリストファー・セント・ジョン・スプリッグ(1907-1937)がミステリー界にデビューしたのは1933年ですが、共産主義に傾倒してスペイン内乱に義勇兵として参戦し1937年に29歳の若さで戦場に散ってしまいました。わずか4年ほどの作家活動でミステリー作品を長編7作といくつかの短編を残して旺盛な創作力を見せていただけに早過ぎる死が惜しまれます。1934年発表の本書は新聞記者ヴェナブルズシリーズ第3作の本格派推理小説です。多彩な登場人物を揃えたことをドロシー・L・セイヤーズが誉めたそうですが、第19章でヴェナブルズがピーター・ウィムジイ卿の真似をするのをやめろと責められたと言及していたのもセイヤーズの心に響いたかも。容疑は転々とし、探偵役としてスコットランドヤードのブレイ警部、事件の起こった地元ペパリング警察の巡査、アマチュア探偵なども入り乱れて少しごちゃごちゃした感はありますが、F・W・クロフツの「ポンスン事件」(1921年)を連想させる第28章の追跡劇の末に第29章の最後でヴェナブルズが暴いた真相は非常に印象的です。第30章ではヴェナブルズが推理説明する前に「必要な事実や手掛かりはすべて、私たちの手に入っていたのです。(中略)この世で最もフェアな探偵小説の世界のようにね」と宣言します。

No.1 8点 弾十六 2026/01/08 18:16
良くできた1934年出版の本格もの。

翻訳者さんのXを見ると、アマゾンのPODで近日、発売予定、とのこと。

英国好きならきっと楽しめる。

セイヤーズにバークリーを足して、かき混ぜた感じ。

色々盛りだくさんですよ。


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クリストファー・セント・ジョン・スプリッグ
2026年01月
完全不在証明
平均:7.00 / 書評数:3
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六つの奇妙なもの
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