海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
虎口
新・競馬シリーズ
フェリックス・フランシス 出版月: 2025年10月 平均: 6.50点 書評数: 2件

書評を見る | 採点するジャンル投票


文藝春秋
2025年10月

No.2 6点 kanamori 2026/01/26 14:25
新・競馬シリーズが本作で8作目だそうな。いつの間にそんなに書かれていたのかと、少し驚きました。
主人公(探偵役)が競馬に関して門外漢なため、競馬のシステムをはじめ、裏方や調教師の日常の仕事内容と厩舎の様々な事情をこと細かく説明されていく、その序盤の展開は冗長と感じるところもありました。
もっとも、競馬そのものが好きで競馬シリーズを読み続けているという読者は、多分そう多くなく、主人公の不屈の精神なり苦難や障害を乗り越えていく過程のスリラー部分が魅力的だから、旧競馬シリーズが40年以上読まれ続けて来たのでしょう。
本作は、そういった要素は意外と少なく、放火と殺人事件を巡るフーダニット&ホワイダニットの謎解きがメインです。さらに事件の裏にある闇の部分は、父ディック・フランシスなら恐らく書かないであろう、まさに「現代ミステリ」的要素です。前作「覚悟」は旧シリーズの人気キャラクターを引き継いだものだったので、あまり感じませんでしたが、今作はフェリックスの個性が現れているように思います。

二世作家と言えば、ジョン・ル・カレの息子ニック・ハーカウェイがジョージ・スマイリーの復活作を書いているし、次はジョー・ヒルが「ミザリー」の続編でも書くのかなw

No.1 7点 人並由真 2026/01/13 02:06
(ネタバレなし)
「私」こと37歳の弁護士ハリィ(ハリソン)・フォスターは、ロンドンの民間トラブルコンサルタント会社「シンプソン・ホワイト社」のスタッフとして活動していた。そんなハリィの新たな任務とは、英国の競馬界のメッカのひとつ・ニューマーケットのとある厩舎で生じた火災事件に関する事だった。火災現場はカリスマ的な調教師・オリヴァー・チャトウィックが息子ライアンに任せた老舗の厩舎「カッスルトン・ハウス」。そこでハリィ自身の旧友でもある中東の小国の王シーク・アーメッド・カリムが預けていた馬が焼死し、さらに身元も性別も不明な死体が発見されていた。事件性を探る警察の一方でハリィもまた事件に首を突っ込むが、やがて事態は思わぬ方向へと連鎖していった。

 2018年の英国作品。
 次男フェリックスによる単独の「新・競馬シリーズ」の第8弾。

 主人公が弁護士という素性の「競馬シリーズ」は、すでに親子共作時期の『審判』があるが、本作はその設定に加えて主人公ハリィが競馬にはまったく門外漢という文芸を加味。法曹家としては一人前で現職トラブルコンサルタントとしての評価も高いハリィだが、ウマのことはほとんど知らない、という趣向が主人公のキャラクターを実際の年齢設定よりも若やいだものにしている。

 良い意味で地に足がついた事件の調査ぶり、警察や関係者との情報交換の流れ、引き締まったそしてテンポの良い会話と筋運び……といつものフランシス一家の「競馬スリラー」だが、次第に残すところ後半3分の1くらいでちょっと異様な事件のコアが見えてきて、その辺の緊張は父親ディック(名義)時代の某初期作を思わせる。<馬が凶器>にされるあたり(詳しくは本編をどうぞ)の趣向というか、サスペンス&スリルも面白い。
 
 要するに競馬シリーズの定番を守りながら割とイケる方で、息子フランシス時期の未訳のノンシリーズの中からこれを選んで翻訳したのは、訳者の選球眼が確かだったということになる。ヒロインのケイトもいいし。
 
 で、本文P123という前半の途中で、ハリィが上司のASW(社長のアンソニイ・シンプソン=ホワイト)と電話で相談し、ちょっとだけ先輩の、頼りになる同僚の名を出して応援を求める描写がある。だが彼は別の任務で国外で仕事中ということで、その当該の先輩の件はそれだけになるのだが、なんかいかにもソレっぽいので、ん!? このキャラクター、これまで書かれた「競馬シリーズ」のどれかの話の調査員かな? 本作はそっちと話が姉妹編的に繋がってるのかな? とも思ったが、読了後に巻末の訳者のあとがき(解説)を読むと特にそんな話題も出てこないし、こちらの勘繰り過ぎだったようである。まあもしかしたら本作の方が仕込みで、今後何かあるのかもしれないけれど?

 いずれにしろ、作品としてはフツーに面白い。
 エピローグのなんともいえない、ある種の余韻もしみじみ。
 セレクトで翻訳、と言わずにフェリックス版の未訳の新作、全部日本語で紹介してほしいものだ。十分に息子の方も固定客はもうとっくに掴んでるじゃろ。


キーワードから探す
フェリックス・フランシス
2026年02月
勝機
2025年10月
虎口
平均:6.50 / 書評数:2
2025年05月
覚悟
平均:7.00 / 書評数:1
2015年01月
強襲
平均:6.00 / 書評数:1