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[ 本格 ] ゴア大佐第二の事件 ワイカム・ゴア大佐 |
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リン・ブロック | 出版月: 2024年12月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
Independently published 2024年12月 |
No.1 | 6点 | 弾十六 | 2024/12/31 05:22 |
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1925年出版。白石さん翻訳のゴア大佐第二弾。翻訳は良い出来だとおもいます。セリフの演じ分けが良いですね。後日、細かい点で気になったところを書くかもですが、浅黒警察としてはdarkを「色黒」とするのはやめて欲しいなあ。「黒髪」で全て解決するわけではないですが(正確には髪の毛と目の色が黒っぽい人、fair(金髪)の対義語)darkが肌色を指してるのはかなり稀、tall, dark manとくれば背の高い黒髪の男、という慣用句ですよ…
小説としては、英国の当時の習俗が細かく描かれていて、固有名詞もたっぷり、私の好きなインクエストも出てきます。警察がかなり間抜けで不満ですが… 探偵小説としてみれば、本格ものではありません!クロフツ流(私はほぼ読んでいませんがガーブ流?)の英国冒険小説の流れに乗った謎を追いかける男もの、という感じでしょうか。 まあでも途中まではとっても楽しい読書でした。単純な私の脳だと、2/3過ぎるあたりでついていけなくなりました。まあそこが残念。 作者も探偵小説サークルに入るつもりは一ミリも無さそうな書きっぷりです。若い時に戯曲でプチ成功してるんだから、探偵作家なんて、と思っていたでしょう。デテクションクラブに入会してたっけ? 来年はもっと翻訳に精を出したいなあ、と考えています。いつもの言うだけ番長ですんません。 (以上2024-12-31 05:22) 以下、トリビア。 作中現在は1924だと思い込んでましたが、1925年もありそう。ただしゴア大佐最初の事件は明白に1922年11月なので、あんまり間を空けるのもなあ...と感じました。まだ全部詳細に検討していないので一旦保留。(2025-01-08追記: p63, 209, 296から冒頭は1925年8月。第一作から間空きすぎ、と思ったら作者は第一作の作中現在を1924年に変更しているようだ…p63参照) 価値換算は当面1924年として英国消費者物価指数基準1924/2024(75.72倍)で£1=14888円, 1s.=744円, 1d.=62円(2025-01-08追記: 英国消費者物価指数基準1924/1925で£1=£1.00だった) p7 八月 p7 マーシュフォント荘(Marshfont Manor) p7 豪勢なプロショップ(professional’s lavishly equipped shop) p7 三十六人もいて騒々しかった若者集団の最後の六人が(half-a-dozen forlorn boys, sole survivors of a whilom noisy band of thirty-six)◆キャディは全員男の子だったようだ p8 華氏八三度(83°) p9 ジン・ジンジャー(gin-and-ginger) p10 休戦の翌週に、トランペットのファンファーレも高らかにオープンしたよ -- 一九一九年の春のことだ(They started in on it with a great flourish of trumpets the week after the Armistice—opened it in the Spring of 1919)◆Armitsticeは1918-11-11なので、その翌週に計画をぶち上げ、オープンは1919年春、ということ p10 一九二◯年のおわり… ピーク… (At the end of 1920 ... high-water mark) p10 昨今は猫も杓子もテニス… (everyone’s playing tennis now)… ゴルフ… すたれた(Golf’s struck a slump)◆ こういう実感は当時の小説ならでは。テニスもゴルフも黄金時代の英国探偵小説に良く出てくるが、そういうことだったのか。 p11 そういうのがお望みならね(if you like that sort of trouble)◆ ゴルフ上級者ならトラブル多めのコースがお好きでしょ?という感じ。 p12 邪悪な事件のヒロイン(the heroine of the sinister episode)◆ 人の気も知らないで!という感じがよく出ている。 p12 二百五十(two-fifty)◆ 年収だろう。372万円。 p13 紫色のリムジン(purple limousine)◆ 後段でロールスロイスの新車だとわかる。ということはSilver Ghostなのだろう。US1921の記述だがシャーシのみで$11750(=£2656,1921年基準)、英国消費者物価指数基準1921/2024(60.97倍)なので現在の日本円に換算すると3184万円。 p13 タイヤは一本いくらだ… ラヴロ(Ravelots)… 七ポンドくらい(About seven quid)◆ 架空ブランドと思われる。当時のタイヤメーカーは広告から判断するとDunlop Michelin Royal Pirelli Mohawk Firestone Goodyearなどがひっかかった p15 レスウェイ銀行にすべてを捧げた男… 住む世界が違うよ(His father married Lessways’ Bank, or the best part of it)◆そんなに仕事する奴か?と思ってたら、p168(表記は正しく「レスウェイズ」銀行)に書かれている詳細から判断して、ここは「レスウェイズ銀行、というか一番良い部分と結婚した」だろう p16 背が高くて… オリーヴ色の肌、艶やかな黒髪(a tall, finely-built man of thirty-five or so, olive-skinned, sleekly black-haired) p16 こちらも背の高い色黒な若者(another tall and darkly-sleek young man)◆ sleekはつややかな毛髪のようす。ならば確実に髪の毛だろう。 p18 昔が最高に良かった(sat chatting desultorily of old times which seemed extraordinarily better)◆ 四十男たちの感想 p21 シルバーキング〔訳注 ゴルフボールの銘柄〕 Silver King◆ ググると可愛いマスコットが見られるよ p22 尾根自体には石がない(No stone in it)◆ ここの意味がよくわからない。 p26 ブラックアロー〔訳注 ゴルフボールの銘柄〕 Black Arrow◆ こっちはググっても出てこない。 p28 塩の粒(Ruschen salts)◆ Kruschen Saltsが正しい表記。商品名は出して欲しいなあ。消化器系の売薬のようだ。 p28 赤い自転車(red bicycle)◆ メッセンジャーボーイの自転車は赤かった? p29 電報配達の少年(telegraph boy)◆メッセンジャーボーイと同じ。英Wikiに項目あり。英国ではGPO傘下の公的サービス。米国では私企業が運営。 (2024-12-31 21:40追記) p41 五時のお茶(tea ordered for five o'clock) p43 事前事後従犯(accessory before and after the fact) p44 背の高い色黒の男(a tall black figure)◆ ここはblackだったんだ... 牧師服で「黒服姿」というイメージだろう。 p45 交代で新しい牧師が来ると… とりわけ告解室が悪かったらしい(when a new Vicar replaces an old one... Especially the confessional boxes)◆ 田舎ではよくあるんだろうね。ところで告解はカトリックの専門ではないの?未調査 p47 一流どころを(look out for Number One) p49 食事のあいだは話さん主義… 空気が腹に入る(Don't believe in talking while I'm eating... Makes me swallow too much air with my food)◆ こういう人はあんまりいないんだろうね。 p50 アスピリン(aspirins) p50 ディナーで正装することは滅多にない(seldom dressed for the evening, and very frequently dined in a dressing-gown)◆ これもまともな上流階級には珍しい p53 ウソとホラばかりの無能者(All gaiters and gas and gush) p56 色黒で --- かなりの大男(Dark--rather burly)◆ ここも「黒髪」だろう p58 書斎に移り、ウィスキーソーダと葉巻(to the library... a whisky and soda and a cigar)◆ 葉巻ってもてなしなんだろうね。 p58 ずっと赤字つづきでした(Chiefly, exceeding my income) p63 一九二三年の六月(June of 1923)◆ p76でここから二年間が経過していることがわかるので作中現在は1925年ということなのだろう p63 [ゴアは]一九二三年にはアフリカにいた(he had benn in Africa in 1923)◆ 第一作の設定を変更しているようだ。 p64 コルトの自動拳銃(a Colt automatic pistol)◆ 後段で大戦時の記念品だとわかる。ということはM1911なのだろう。 p66 紙幣数枚をふくむひとつかみの金(a handful of money with some loose notes amongst it) p70 私立探偵社(a firm of private inquiry agents)◆やはり英国ではinquiryという語が優勢なのだろう。「興信所」と訳したい。 p70 四月二二日(April 22nd) p70 カフェ・ロイヤルで夕食を(dined... at the Café Royal)◆ロンドン、リージェント街のカフェ・ロイヤル(創業1865年のレストラン、現在はホテルになっている)のことだろう。 p72 ブリッジ大会(bridge-tournament)◆ 当時ならオークション・ブリッジだろうか p72 一年分の家賃六十七ポンド(one year's rent, £67)◆ 月額83000円ほど。結構良い値段だと思う。 p74 マクミラン・プライベートホテル(MacMillan's Private Hotel)◆Collins English Dictionaryに英国英語として(1) a residential hotel or boarding house in which the proprietor has the right to refuse to accept a person as a guest, esp a person arriving by chance (2)Australian and New Zealand: a hotel not having a licence to sell alcoholic liquorとあった。予約なしの客などをオーナーが断れるホテル、という意味らしい。酒のライセンスが無い、というのはオージー英語だったようだ。 p76 二年間(two years) (以上2025-01-01 05:50追記) p82 ロムジー修道院(Romsey Abbey) p83 背の高い黒衣の男(a tall black figure)◆ p44と同じ p84 青いスポーツカー(a blue two-seater)◆ この翻訳では一貫して「スポーツカー」と訳している。(2025-01-08追記) p84 家にある真空掃除機(my vacuum cleaner)◆ Hoover Upright Vacuum Cleanerは1908年販売開始。まだまだ高価だったはず。安くなったのは1930年代以降。 p87 『チョークシャー・クラリオン』紙の朝刊(the morning Chalkshire Clarion)◆ 日本と違って朝刊と夕刊を同時発行している新聞社は無いはず。新聞紙名にMorning Post, Evening Standardなどのような朝・夕を示す文字が入っておらず、知らない人には朝刊紙か夕刊紙かわからないので、「朝刊紙」の『チョークシャー・クラリオン』、という説明語だろう。この新聞名はここが初出。原文morningがイタリック。 p88 一等喫煙個室(a first class smoker) p88 検死審問はXXX氏の参加できることを考慮して、その日の午後に開催される(An inquest was to be held that afternoon, when it was hoped Mr. XXX would be able to attend) p90 従者のスティーヴンス(his man Stephens)◆ 訳者あとがきでは第一作に登場するStevensと同一人物だというが、そんな記述は本作中に全くなかった。 p90 水風呂(a cold bath) p90 度を過ぎた快楽主義だと思われるのを心配したのか(Lest this combination of pleasures should appear to his visitor excessive for one man)◆ 意味はなんとなくわかるけど。試訳「一度に多くの楽しみに耽りすぎてると思われたくないらしく」 p91 検死官はもちろんXXXの息がかかった男だ(The Coroner, of courses is in XXX’s pocket)◆ 地方の名士には逆らえない p91 きっとけさの朝刊で(this morning) p92 年千五百ポンド(£1,500 a year) p92 背の高い色黒の男(a tall, dark man) p92 小柄な色白男(a little pale man)◆ paleは「青白い(病的な感じ)」というイメージ。pale horseなら「蒼ざめた馬」ですよね? p95 色白の(white-faced) p95 白い顔(white face) p95 色白の小顔(little white face)◆ 同じページでなぜまぜこぜ?p92から全て同一人物の形容。 p102 春先にかかったインフルエンザ(an attack of influenza in the spring) p105 心配になって(uneasy)◆ uneasyってどういうことだ?と鋭く相手に突っ込まれているのだから、違和感を感じるような、ちょっと大袈裟な語が良い。Longman辞書ではworried or slightly afraid because you think that something bad might happenとのこと。試訳「胸騒ぎを覚えて」 p114 ワシ鼻で色黒な顔(his dark, aquiline face)◆ このdarkは影になって暗い感じか。もちろん陰鬱な内面も表現している。試訳「暗い、ワシ鼻の顔」 p116 このパルタガスを一本(one of these Partagas)◆ キューバ葉巻のブランド。1845年から販売。 p120 この手の謎解きには目がない(I have always had a weakness for puzzles of all sorts)◆ パズル全般 p124 『ミスター・ウー』のマシスン・ラング(Matheson Lang’s in Mr. Wu)◆ 1913年の英国演劇(Harold Owen & Harry M. Vernon作、主演Matheson Lang)、米国でもヒット。映画化は1918年ドイツが先。1919年英国映画制作(主演Matheson Lang)、1927年には米国でリメイク(ロン・チェイニー主演)。内容は主人公の中国人が殺人や脅迫など色々悪いことをするもの。舞台はかなりのセンセーション巻き起こしたらしい。フーマンチュー(初出1912)と同時期。詳細未読だがWendy Gan 2012, Mr. Wu and the Rearticulation of "The Yellow Peril"という論文が公開されている。 (以上2025-01-02追記) p125 自転車… 中古で三ポンド十シリング(second-hand for three pound ten)… ダンロップタイヤを履いたプレストウィック(A Prestwick it is, with Dunlop tyres)◆ Prestwickはググっても見つからず。 p130 無言劇で(in the pantomime)◆ 英国流パントマイムはクリスマスに上演される馬鹿げたドタバタ劇(主役は男装の女優、女装の男優も登場する。間抜け警官もつきもの)のこと。無言で演じられるわけではない。Wiki「パントマイム (イギリス)」参照。 p132 安タバコ(gaspers)◆ 英Wikiに英国スラングでhigh-tar cigaretteのこと、WoodbineとかGauloiseのようなやつ、とあった。高タールでフィルター無しなので、初心者だと吸い込んだらgasp(ゲホゲホ)する、ということらしい。ウッドバインは安くて人気のブランドで、フェラーズ『細工は流々』にも登場してました。 p135 ジンをダブルで、それとストーンジンジャーを(a double gin and stone ginger)◆ stone-gingerとはginger beerのことらしい。結局ジン&ジンジャー(p136)を作ってもらって飲んでるので、ここは「ジンのダブル、ストーンジンジャー割り」という注文だろう。 p137 フォード(Ford)◆ 宿の主人の車のようだ。モデルAは1927年12月販売なので、ここはモデルT。 p137 ゴア大佐の従者(Colonel Gore’s man) p149 電話室… もとはポーター控室であったものを改装(the telephone-room,—a porter’s lodge converted to its present use)◆ 邸宅の電話室。なお当時の電話は表紙絵の通りダイアル無し。必ず交換手を通す仕組み。 p151 {* * * 以降}◆ ここの工夫は良いアイディア。 p153 七時半ごろ… ちょうど銅鑼を鳴らしていた最中(About half-past seven... just as I was sounding the gong for dinner)◆ 食事の合図は銅羅… 屋敷内外の客にも聞こえるように。なので邸宅には銅羅がつきもの。 p156 ゲートル(leggings)… 大戦時代の残りもの(a survival of the great war) (以上2025-01-03追記) p159 ポンコツ自動車(a most refractory motor car) p159 湿度計をコツコツと叩く(tapping the weather-glass)◆ 晴雨計と同じ。『ロムニー・プリングル』でも晴雨計を叩く場面があった。指示針が引っかかってないか、確かめる動作なのかも。 p161 最新科学装備… 時速五十マイルで走行しながら自由自在に無線通話できる自動車(the scientific wonders... of which motor-cars receiving and emitting wireless messages while travelling at fifty miles an hour)◆ CIDの最新装備 p163 古典骨牌(カルタ) playing-cards p163 ロバート・ウォートン(Robert Walton)... レベッカ・グン(Rebecca Gunn)◆ 調べてないが多分実在。古いトランプの発行者と絵師。 p172 郵便列車(mail train)◆ この語はここで初めて出てくる。郵便も運ぶ列車なのだろう。 p181 ごあいさつだな(So far as I can discover)◆ 試訳「ぼくが見つけたものから判断すると」疑問に対する律儀な返事。 p181 ブリティッシュウォーム(an old British Warm)◆ Wiki「ブリティッシュウォーマー」士官のコートらしいので、これも大戦の遺物か。 p182 「気持ち悪かったんですね?(Been sick, ain’t you)」… [彼は]大いに気を良くして(he felt a good deal better)◆ ここら辺、一読して通じなかったので、前後の原文をじっくり読んでsickの誤解だろうと判断した。なお原文に直接的な嘔吐の場面はない。試訳:「吐いたんですね?」… [吐いたので]気分が良くなり p185 上りの郵便列車(up mail) p189 The picture-papers◆ 対応する訳語なし。新聞に写真が載っていた、という文の主語。写真印刷技術が向上してイラストから写真に変わりつつある時代。 p189 高等批評学(the Higher Criticism)◆ 18世紀ごろから起こった聖書の科学的研究、とのこと。定訳は「高等批評」のようだ。 p190 検死審問は散会となった(The inquest was adjourned)◆ 「散会」だと終わったように感じられるので、「次回に続くこととなった」が適切。警察としても犯人が名指しされる評決はこの時点では望まないはず。 p193 かなりの数の人々(by some score of people)◆ ここら辺、実にありそう。 p197 十シリング(the sum of ten shillings)◆ 情報料 p200 トルコタバコ(Turkish cigarettes) p209 八月二十日の木曜の午後(the afternoon of Thursday, August 20th)◆ 該当は1925年 p210 クラリオンの夕刊(an afternoon edition of the Clarion)◆ p87での私の記述とは矛盾するようだが、重大事件の場合、追加情報を追記した複数の版が続々発行されることがある。試訳「クラリオンの午後版」 p211ここら辺のインクエストの情景が興味深い p213 体温三七・五度(Temperature 99.5)◆ 原文はもちろん華氏。p8の気温は華氏のままだった。どちらかに統一した方が良いだろう。 p219 額面を訂正したときはその箇所にイニシャルを(and requesting that in future any alterations made on the face of cheques should be initialled)◆ 小切手。額面変更はイニシャルで良いんだ… p220 飛行機('plane)◆ airが略されている。ありえないこととして考慮すらされていない。ロンドン=パリの旅客定期便は1919年から。 p222 すぐに、べつのことをやることになる(I’d sooner do something else)◆ 試訳「別のことをやりたくなったのです」would sooner のsoonerは「すぐに(soon)」の意味ではない p224 ボーリュー(Beaulieu)◆ ググるといろいろ出てきた。未調査 p226 戦前のもの(Look like pre-war stuff to me)◆ ジョーク? p227 節回しは、どうやらハリー・ローダーの人気曲らしい(The tune was probably a well-known ballad of Harry Lauder’s)◆ ミュージックホールの人気芸人(1870-1950)、スコットランド系。曲名は何?この状況で当時の英国人ならピンと来るのか? p229 通俗ドラマ(melodrama) (以上2025-01-04追記) p240 しゃれた使用人の男(smart man-servant)◆ a male servant with responsibility for the personal needs of his employer, such as preparing his food and clothes (Cambridge dictionary) p247 いかしたスポーツカー(a real, lovely little two-seater)… 中古で(second-hand)… 二百九十ポンド(£290)… いかがです?(all on?) p249 探偵(a detective) p250 五ポンド紙幣(five-pound notes) p253 ものは言いよう(façon de parler) p254 窓際で紙幣を空にかざして丹念に調べて(examined them carefully against the light of her window)◆ 英国銀行券は裏は印刷なしだが透かしが入っている p256 ポーレットさま(Mr. Powlett)◆ ここで急に気づいたのだが、ここの「ミスター」は一族の最年長者を意味する称号で、これで数人いるポーレット家の男性から一人を特定できるはず(ここの場合はユーステス卿(Sir Eustace)は除外され、昔を思い出しているので当時生きていた最年長者であるライオネルをさしている)。ここまでも、そういう表現があったはず。冒頭からは遠縁(別系統)のロバート・ポーレットが出てくるので、この人がMr. Powlettと呼ばれているが、ユーステス卿の兄弟の話題であれば、作中現在では冒頭時点でもライオネルは故人、すぐ上のロリマーは聖職の称号持ちなので、単にMr. Powlettと言われればハーバートのことを指すのだろう。全文検索するとMr. Powlett呼びを、上記のような考え方で注意深く使っていることがわかった。 p256 カエルさん(Froggy)◆ フランス人の乳母的な存在に対する子供が付けた愛称 p256 分数サイズのチェロ(a young violoncello)◆ 「小さい」で良いと思った。 p264 <荒くれ者>“wild” p268 私立探偵社(the private Enquiry Agents)◆ やはりenquiry=inquiry、興信所が良いなあ。 p277 <ピカイチの人気娘>“hottest little lots of the bunch” p277 背の高い黒髪の紳士(A tall, dark gentleman)◆ ここでは普通に「黒髪」と訳している p287 半クラウンを費やして… 長距離電話をかける(expending half-a-crown on a trunk call)◆ロンドンからサリーまで。結構高い。 p293 評判の私立探偵(a well-known private detective agency)◆ 「社」が抜けている。ここだけdetectiveにしているのは意図があるのか。 p294 日よけ(a sunshade)… スポーツカー(the two-seater) p296 八月十九日水曜日(Wednesday, August 19th)◆ 該当は1925年。 p298 医療名鑑(Medical Directory)◆ こっちは職業別住所録(電話帳)のイメージだろう。Kelly's Directoryの一部。試訳「医療者電話帳」 p308参照 (2025-01-08追記) p298 ズボン釦に十ポンド賭けてもいい(I’ll lay you a tenner to a trousers’ button)◆ ズボン釦vs十ポンドの賭け p299 傘(umbrella)◆ 小道具 p300 フィフィ・マークIII (Fifi III.)◆ FifiはFIAT 500(初代1936-1950)のよくある愛称だという。時代は違うが、ここではFiat Tipo 3(1910-1921)を指しているのかも。もちろん別の車種の可能性も大いにある。 (以上2025-01-06追記) p303 週十五ギニー(Fifteen guineas a week)◆ 療護ホーム(Nursing-home)の料金 p308 医療年鑑(Medical Register)◆ 言葉のイメージだけで判断すると、こちらはp298と違って公式な登録名簿か。試訳「医療登録名簿」 p309 半ポンド(half a quid)◆ 駄賃 p310 アリー(’Arry) p311 映画だったら(for the pictures)◆ まだサイレントの時代 p311 組合につかまってもお咎めなしだろうな。チャーリー・チャップリンみたいだ(You’ll be for it, my lad, if the Union cops you, I don’t think. Doin’ a Charlie Chaplin stunt?)◆ 意味がずれてるように思ったので原文を見た。試訳「組合にめっかったら、おめえ、怒られるぜ、全く。チャップリンの軽技か?」 be for it, I don't thinkは成句 p326 お茶◆ ここでも飲む。英国人だなあ p328 荼毘に付し(cremated)◆ 火葬についてはフリーマンの2長篇で触れた。『ダーブレイ秘密』『ものいわぬ証人』 p328 遺灰(ashes)◆ 現実にこんなふうにできたのかなあ?未調査。 p329 スティーヴン・マッケナ(Stephen McKenna)◆ 1888-1967 p335 ドビュッシーのアラベスク(Debussy’s Arabesque)◆ 1888年作曲。第一番は作曲者の傑作と言われている。 p336 ラッチ錠(latch-key) p345 ココア(cocoa) p345 ラッチ錠に鍵を(the latchkey)◆ 室内のドアだがラッチ錠がついている p348 《著名犯罪事件》シリーズ(“Celebrated Criminal Case” series)◆ 架空のシリーズのようだ。 実在の"Notable British Trials"をもじったものか。 p349 探偵社(a firm of private inquiry agents) p351 短寸弾(a snub-nosed bullet)◆ この用語は銃関係では見たことがない。先端を平らにカットしたような形状のHollow-point bulletsのことか?(体内で広がるので殺傷力が強い) それともSnub-nosed handgunで撃った弾、ということか。前者の方がありそう。 p356 登記事務所(a Registry Office)◆ 英Wiki "Register office (United Kingdom)"に詳しい説明がある p360 各六シリング(five shillings a day)◆ マーシュフォント荘ゴルフ場のプレイ代金のようだ。ケアレスミス。 p362 フラットに飾ってあった女性の写真(the one feminine photograph which adorned my flat)◆ 執着が強いなあ… 翻訳者さんが見てくださってるようなので、ついつい長くなりました。繰り返しますが、翻訳は上等です。長い文章を翻訳してると、そこかしこにエラーが発生するのは当然。欠陥翻訳とは1ページに1箇所以上の誤訳があるもの(別宮先生の定義)に私も100%同感です。些細なアラがあるからと言って鬼の首を取るようなことはやめてくださいね。 (以上2025-01-01追記。完了です!) |