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[ 本格 ]
幻想三重奏
スミス警部シリーズ
ノーマン・ベロウ 出版月: 2024年11月 平均: 6.00点 書評数: 3件

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論創社
2024年11月

No.3 6点 文生 2025/01/29 12:02
トリック自体はいまとなってはさほど驚くべきものではないものの、「人が消え、部屋が消え、路地が消える」という不可能犯罪乱れ打ちでしかも、だんだんエスカレートしていく展開がなかなか面白い。
以下ネタバレ












本作の発表は1947年でこれは短編ミステリーの傑作『天外消失』が発表されたのと同じ年だけど、両者の消失(電話ボックスから人が消える&路地が消失)トリックが原理的に結構似ている。もし、本作の方が先なら発表当時は画期的なトリックだったのかも





No.2 7点 人並由真 2025/01/07 07:11
(ネタバレなし)
 英国南部の町ウインチンガム。そこで心霊の仕業によるものとさえ思える怪異が続出する。すぐそばにいた人物は幻の幽霊だった? 消えたフロア、そして消失した路地の謎。ウインチンガム署の敏腕刑事で42歳のランスロット・カロラス・スミス警部は相次ぐ怪事件に挑むが。

 1947年の英国作品。ランスロット・カロラス・スミス警部シリーズの第一弾。
 <そんな人はいなかった!?>……どこかで聞いたような設定ながら最初の事件からこの蠱惑的な謎の提示にゾクゾクし、そのあとに続く、まるで連続中編風の構成で語られる、第二~第三の怪事件にもワクワク!

 解決なんか、ある意味、どーだっていいんだよ(←え!?)、この魅惑的な謎の量感にこそ価値がある、と開き直ったような、当時の新世代の古典風パズラーで非常に楽しかった。
 結局、犯人の設定はアレだわ、それ以前に目的のためにここまで犯罪者が計画や仕込みを練る必要あったのか? というような気も生じる。
 んのだが、文章の叙述という形でならギリギリ説得されて(それもアリだと考えて)もいいや、というピーキーかつグレイゾーンのトリックの連発に笑みがこぼれてしまう。特に第二の事件のトリックが、どこかで見た(読んだ)ようなものながら、なかなかのケッサク。オレも作品世界に入って、その仕掛けを肉眼で見てェ(笑)! さすが解決でも(中略)。

『魔王の足跡』は結局は真相のショボさにめげて、あんまり評価してないのだが、こっちはトータルで十分に楽しめた。むろん傑作でも優秀作でもないんだけど、本当に快い作品です。

No.1 5点 nukkam 2024/11/30 03:01
(ネタバレなしです) 英国のノーマン・ベロウ(1902-1986)は森英俊が「世界ミステリ作家事典 [本格派篇]」(1998年)の中で「イギリス最良の密室作家のひとり」と絶賛した作家で、1930年代から1950年代にかけて20作ほどのミステリーを残しています。第二次世界大戦中の従軍のため1941年から1945年の間は作品を発表していません。マイナー作家ながらも戦後の作品に注目作があるようです。1947年発表の本書は全5作のスミス警部シリーズ第1作の本格派推理小説で、三つの消失事件を扱っているところはピエール・ボアローの「三つの消失」(1938年)を連想する読者もいるでしょう。第一の消失は二階に上がっていった男が消失する事件ですが、消失の謎よりもこの男と接したはずの証人たちが相次いでそんな男はいなかったと証言する「存在しない男」の謎の方が印象的です。さらに幻の部屋の消失、路地の消失と続きます。阿井渉介の列車シリーズが好きな読者なら本書も好きになるかもしれません。トリック成立のために非常に手間暇かけているのが特徴ですが、どちらかと言えば度が過ぎるとあきれる読者の方が多いかも。逆転の発想の幻の部屋トリックはなかなか面白いですが。


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ノーマン・ベロウ
2024年11月
幻想三重奏
平均:6.00 / 書評数:3
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2006年01月
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