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[ 本格 ]
スリー・カード・マーダー
不可能犯罪ミステリー
J・L・ブラックハースト 出版月: 2024年03月 平均: 5.50点 書評数: 2件

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東京創元社
2024年03月

No.2 6点 文生 2024/04/27 07:56
第1の事件では封鎖された5階の部屋から喉を切り裂かれた男が墜落し
第2の事件では誰も乗っていないはずのエレベーターで男が刺殺され
第3の事件は施錠されたホテルの一室で男が射殺される
といった具合に不可能犯罪の尽くしの作品なのですが、重大犯罪班の警部である姉と詐欺師である妹の関係を描いたドラマに重点が置かれていて思ったほど本格していないのが惜しい。
とはいえ、現代の英国でこれほどまでに真正面から密室殺人を描いたミステリー作品は珍しく、それだけでもうれしいところ。
密室トリックとしては、第2第3の事件は凡庸で数合わせ感が強いののだけど、第1の事件における盲点を突いた仕掛けはなかなかではないでしょうか。

No.1 5点 nukkam 2024/04/27 05:29
(ネタバレなしです) 2010年代に心理サスペンス小説家としてデビューした英国の女性作家ジェニー・ブラックハーストが別名義で(といっても大きい違いはない名前ですが)2023年に発表した新シリーズ作品で(本国で「The Impossible Crimes」と紹介されています)、創元推理文庫版巻末の作者の謝辞では「《奇術探偵ジョナサン・クリーク》ミーツ《華麗なるペテン師たち》のような、やりたい放題のとても愉快な密室もの」と紹介されています。もっとも「愉快な」といってもユーモア・ミステリーではありませんが。主人公である姉妹のやり取りの中で詐欺師の妹セアラが警部補(但し警察習慣的に警部と名乗ります)の姉テスをからかう場面もありますけど全般的にはとげとげしくダークな雰囲気で、ちょっとハードボイルド風でもあります。被害者が姉妹の過去に因縁のある人物らしいのですが、どういう因縁なのかが小出しに読者に情報が与えられる展開なのは評価が分かれそうです。密室トリックについては様々な推理が飛び交い、特に第一の事件のトリックは綱渡り的ながらも状況証拠と辻褄が合うように謎解きされていて感心しましたが、一方で犯人当てとしては読者が推理しようもない真相になっており、本格派推理小説としてはやや型破りの作品です。


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J・L・ブラックハースト
2024年03月
スリー・カード・マーダー
平均:5.50 / 書評数:2