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[ サスペンス ]
四日間家族
川瀬七緒 出版月: 2023年03月 平均: 6.50点 書評数: 2件

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KADOKAWA
2023年03月

No.2 5点 パメル 2025/06/14 19:25
物語は夏美が自殺を決意し、ネットで知り合った三人とともに車で山へ向かい、山中で練炭自殺を試みようとするところから始まる。四人はそれぞれに複雑な背景を持ち、当初は互いに反発し合う。夏美は「サークルクラッシャー」と呼ばれ、コミュニティを破壊してきた過去を持つ。長谷部は会社を倒産させ、借金に追われた元経営者。千代子はコロナ禍でスナックを営み、クラスターを発生させた責任を負っている。陸斗は謎めいた高校生で、冷静な策略家。
やがて、彼らのいる山中の近くに車が現れ、しばらくして去った後、森の奥から赤ん坊の泣き声が。赤ん坊を発見した四人は、自殺を先送りし小さな命を助けようと考える。ところが母親を名乗る女性が、SNSに赤ん坊を誘拐されたと投稿した動画により、誘拐犯の汚名を着せられる。
本作はSNS社会の危うさや「正義」の暴走を描きながら、人身売買組織の闇にも迫る。四人は単なる被害者ではなく、逆にSNSを利用して反撃するなど、知恵と機転で戦う姿勢が痛快。終盤の組織の正体が明かされる展開は、伏線が巧みに回収されている。
自殺という重いテーマを扱いながら、赤ん坊という「生の象徴」を通じて、人間の再生を描いた作品。本のタイトル通り、短い期間ではあるものの、疑似家族的な絆が生まれ、いくつもの逆転が起きるところに魅力がある。このように読ませはするのだが、後半の展開と結末は意外性がなく予想していた通りで、ミステリ的には物足りなさを感じてしまった。

No.1 8点 虫暮部 2023/06/16 12:30
 まず、基本設定の紹介が上手く組み立てられていて最初の山場。粗筋を予め読んでしまうと最初の100ページの面白さが半減すると思う。
 とは言えエンタテインメントである以上、例えば集まった目的がアレならそれは成就せず、トゲトゲバラバラな関係性は転回し、伏線の回収としてアレとアレをぶつけて着地――“状況は変化する” と言う意味で実は予想通りな流れ。
 そこを如何に読ませるかに適切に注力しており、ネット社会が敵にも味方にもなる様は皮肉が効いている。話を転がす為に出し惜しみナシの総力戦って感じが痛快だ。
 終盤、敵の稼業がさほどショッキングではなかったのが残念(鈍くなってるか、私?)。

 本書に限らないが、死体にせよ生体にせよ隠す(隠れる)のがどの程度難しいのか実感しづらいので、隠す側が甘かったのか探す側が優秀だったのか今一つ良く判らないな~。


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川瀬七緒
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