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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ] 墓頭 |
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真藤順丈 | 出版月: 2012年12月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 2件 |
角川書店(角川グループパブリッシング) 2012年12月 |
KADOKAWA/角川書店 2015年10月 |
No.2 | 5点 | パメル | 2024/11/05 19:12 |
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双子の一方が死に、その死体を頭の中に入れたまま生まれたため「墓頭(ボズ)」と呼ばれた男。その男の数奇な生涯を語る物語。当時の医療では死体を取り出すことが出来ず、彼はその異様な容姿のまま世界を渡り歩く。だが際立った能力を持ち、またなぜか彼に関わった人が次々と死んでいき、破壊的なモンスターへと成長していく。
かつてボズと同じ施設で学び、ヒョウゴと呼ばれるボズに負けず劣らずの異能で特殊な人物が登場する。ボズは仲間を惨殺したヒョウゴと時に行動を共にし、時に距離を保ち、その様子が何となく、ある学園ものの壮大な後日談のようにも見えてくる。もう一つ特徴的なのが、全体としては手堅く唯物的に描かれているにもかかわらず、ボズの頭の中に死体に関わるところになると奇妙に唯心論的・想像的な記述が出て、物語は神話的なものに変容する。 その過程は陰惨な暴力に溢れているのに、不思議と静かな印象がある。ボズに旧来的な自己主張が薄いからだろう。激しい憎しみや恨み、疎外感といった分かりやすい情動によらず物語を進めようとする志向はいくつもの予見を裏切ってゆく。SFやバイオレンスアクションに哲学的詭弁と様々な要素があり、その過剰なほどの派手な演出は好みが分かれるかもしれない。 |
No.1 | 7点 | メルカトル | 2022/02/14 22:51 |
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双子の兄弟のなきがらが埋まったこぶを頭に持つ彼を、人々は“墓頭”と呼んだ。数奇な運命に導かれて異能の子どもが集まる施設に入ったボズは、改革運動の吹き荒れる中国、混迷を極める香港九龍城、インド洋孤島の無差別殺人事件に現われ、戦後アジアの暗黒史で語られる存在になっていく。自分に関わった者はかならず命を落とす、そんな宿命を背負った男の有為転変の冒険譚。唯一無二のピカレスクロマンがいま開幕する―。
『BOOK』データベースより。 まずは作者の語彙力の高さに圧倒されました。ボキャブラリーが豊富であるだけではなく、使い処が的確なのです。トーンは飽くまで暗く、その重さはとてつもなくへヴィです。 ストーリーとしては比喩ではなく頭の中にバラバラ死体を宿した墓頭と呼ばれた男の一代記であり、壮大な大河小説でもあります。謎の探偵が探し出した養蚕家が語る異様過ぎる物語。その中で墓頭に関わる脇役達を含め、それぞれのキャラが立っており、ある種の群像劇を繰り広げます。 その中には毛沢東らも含まれていて、アジアの裏歴史とも言える壮大な法螺話がとても魅力的に思えました。ただ、私が最も注目していた案件が最後まで果たされることなく暈かされたのは残念でした。又、いくつかのミステリ的手法を駆使して読者を惑乱する技も披露されており、真藤順丈の底力を見せつけます。これぞ氏の本領発揮と言えましょう。『宝島』の直木賞受賞は伊達ではないという事ですね。 |