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[ 警察小説 ] 夜の淵をひと廻り |
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真藤順丈 | 出版月: 2016年01月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
KADOKAWA/角川書店 2016年01月 |
KADOKAWA 2018年11月 |
No.1 | 7点 | メルカトル | 2022/09/01 23:08 |
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職務質問と巡回連絡が三度の飯より大好きで、管轄内で知らないことがあるのが許せない、良く言えば“街の生き字引”、率直に言えば“全住民へのストーカー”。ある街のある交番で住民を見守るシド巡査のもとには、奇妙な事件が呼び寄せられる。魔のバトンが渡されたかのように連鎖する通り魔事件、過剰すぎる世帯数が入居したロッジ、十数年にわたって未解決のご当地シリアルキラー。市井の片隅には、怪物の巣食う奈落がひそかに口を開けている―。4冠受賞の鬼才が放つ驚愕のサイコ・ミステリ!
『BOOK』データベースより。 粘着質で陰湿な文章と物語。従来の警察小説と思ったら大間違いです。主人公のシド巡査は管轄内の全住民のストーカーでその意味では非常に特異体質と言えるでしょう。更に異常な体験をしたり、その並外れた推理力には自信を持っているようです。この風変わりな人物像の一点だけでも本作が尋常ではない特異性に満ちていると感じられるのは間違いないと思います。 意外性や仕掛けはありますが、トリックと言える物はここには存在しません。その代わり変則的なストーリー展開で最後まで読ませます。読み終わった後は何とも言えない嫌らしい余韻を残します、一応これは褒め言葉ですが。 連作短編の中で『新生』だけ毛色が違い、これだけ読んだら真っ当な警察小説に思えます(このタイトルは秀逸)。しかしその他はおそらく今まで誰も書けなかった様な超異色な、ドロドロとした、読者の心の奥に眠る何かに直接触れる様な肌触りの小説に出来上がっていると思います。独特の文体ですし、もし貴方がこれを読む事があれば、それなりの覚悟を持って臨む必要があるかも知れません。あまりお薦めはしませんが、ありきたりなものに飽きた人は読んでみるのも一興かと。 |