皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ サスペンス ] 裏切りの刃 |
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リンダ・ハワード | 出版月: 2012年07月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 1件 |
ハーレクイン 2012年07月 |
No.1 | 5点 | クリスティ再読 | 2021/10/22 07:15 |
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前回仁賀克雄氏の「新海外ミステリ・ガイド」(2008)をやったわけだが、ここで凄く気になったことがあって、今回はその関連でこれ。
仁賀氏のガイドでは、巻末にMWA/CWA 選のオールタイム・ベストテンが載っているのだけども、両者共通に選ばれている名作が6作あって、「英米も結構共通するんだね...」と思わせるんだけども、この6作のうち1作だけは、この「ガイド」でまったく言及がない作品なんです。皆さん、分かりますか、その作品? 実は「レベッカ」なんですね。ガイドの旧版(1976)の「ミステリの分類」だと「ゴシック・ロマンス」の項目があるにもかかわらず、「レベッカ」に触れていないんです...で2008では「ゴシック・ロマンス」の項目はなし。 いや、ミステリ史の最大の「盲点」って、じゃあ「女子ミステリ」というものではないのかと。 確かに、仁賀氏、コージーという単語を使ってないです。知らないのかなあ...改めて考えてみると、クリスティやセイヤーズの名作のいくつかは「女子ミステリ」だしね。だったら、「レベッカ」「終わりなき夜に生れつく」とコージー、女性探偵ハードボイルド、それにミステリ系出版からは出づらいロマンティック・サスペンスまでをうまく囲むジャンルとして「女子ミステリ」という批評概念があるのでは... なので、手元にあった本書。一応今「ロマサスの女王」でググると、本書のリンダ・ハワード、蟷螂の斧さんが3作やっておられるサンドラ・ブラウン、あとアイリス・ジョハンセンの3人がひっかかる。ハーレクインやら二見文庫やらで大量に出ているから、今一つ全貌がわからない翻訳小説の魔界なんだけど.... で、本作はロサンゼルスのオフィスに経理事務員として勤めるヒロイン、テッサは、本社から派遣されてきた強面のエリート社員ブレットとエレベーターの中で出会い、恋に落ちて一夜を共にする...しかし、テッサは突然「横領の容疑」で逮捕される。「私は無実!」と訴えるのだが、横領の容疑でテッサを告発したのは、実はブレットだった.... という話。ロマンティック、の面だとヒーローがヒロインを傷つけて、敵対する、という珍しいパターン。結構テッサが心理的に追い込まれるけども、芯の強さがなかなかアメリカン!なところ。ちゃんと自分で反撃するし、それを見てヒーローも「誤解していたのでは?」と思うようになって....でアタリマエだけど、ハッピーエンドになる。 横領犯人探しもあるわけだが、これは結構ミエミエな部類。読みどころはヒーローの強面ぶり・俺様っぷり。だから対抗上ヒロインも鼻っ柱が強いオープンなタイプで、「アメリカのエンタメ」感たっぷり。意外に日本人向きじゃない気もする... まあ、こんな感じ。短めのジェットコースター小説。 いやでも「読み出したら止まらない! 女子ミステリー マストリード100 」という本があるようだ。これ読まなきゃ。 |