海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

[ サスペンス ]
箱男
安部公房 出版月: 1973年03月 平均: 6.50点 書評数: 2件

書評を見る | 採点するジャンル投票


新潮社
1973年03月

小学館
1987年01月

新潮社
1987年07月

新潮社
2005年05月

No.2 6点 クリスティ再読 2024/05/30 20:18
高校生くらいの時には安部公房っていえば純文学のスターだったわけだから、評者だってそこそこ読んでたんだが...いや見事にハマらなかった(苦笑)評者「意識高い」に代表されるような「カッコよさ」って苦手なんだね。本作とかピント甘目の写真が入って(ピンホールカメラじゃない?)見るからにアーティスティックでオシャレなんだよね。そんな評者の偏好の犠牲になった作家のように感じるよ。

ここは「ミステリの祭典」という場なんだから、「箱男」のまさにアイデンティティである「箱」を一つの密室として再構成するのも一興だろう。だから本作は「密室殺人」を扱ったミステリなんだ。
「暗い箱」の中には。ピンホールカメラの原理によって、外界が写り込む。これはまさに「意識」そのものなのだ。人間は皆「自己」の中に閉じ込められた「箱男」だ。その「箱男」の殺人事件とは、「ぼく殺しの主犯はあくまでぼく」、しかしそれは自殺ではない「自分殺し」の「殺人」なのである。
自殺ではないからこそ、「そしてぼくは死んでしまう」と他者視点でヌケヌケと書けるのだ。それでもこの意識というこの「箱」に出入りした「他者」は存在しない....

しかしだ、箱男の「箱」の中にあるもの、というのは紛れもない即物的な身体なのだ。この箱の中の身体から、自我であるとか意識であるとか、アイデンティティが「殺され」て雲散霧消した結果なのでもある。いやね評者は初めてカプセルホテルに投宿した際に、ひどく感動したんだよね。自分というの「もの」があり、この「もの」の容器としての「箱」がある。アカラサマなこの事実が「自分はモノになれる!」ことを評者に突きつけたんだ。これが「死」でなくて何だろう?

カプセルホテルに泊まり給え。あなたも「箱男」になれる。「箱男」とは、このような意識と身体の葛藤と、その出口の寓話なのだ。

No.1 7点 虫暮部 2021/10/09 13:14
 “箱男”なる或る種冗談のような存在が、いつの間にか錯綜した叙述トリックへ。但しミステリ的な整合性は一時だけで瓦解し、無関係なエピソード(落書?)の“D”や“ショパン”が挿入されるあたりはイライラしたな~。
 ミステリ側の視点で言えば、安部公房みたいな作家が変格ものを目指した(ように見える)のは妥当な展開だと思うが、いたずらに判りづらくし過ぎ。やはり後半3分の1はもう少し読者に歩み寄って書いて欲しかったところ。


キーワードから探す
安部公房
1984年11月
方舟さくら丸
平均:9.00 / 書評数:1
1977年12月
密会
平均:5.00 / 書評数:1
1974年05月
無関係な死・時の崖
平均:6.00 / 書評数:1
1973年03月
箱男
平均:6.50 / 書評数:2
1972年11月
燃えつきた地図
平均:5.00 / 書評数:1
1970年01月
飢餓同盟
平均:5.00 / 書評数:1
1967年01月
人間そっくり
平均:6.50 / 書評数:2
1964年01月
他人の顔
平均:7.00 / 書評数:3
1962年01月
砂の女
平均:7.50 / 書評数:2
1960年01月
石の眼
平均:5.50 / 書評数:2
1959年01月
第四間氷期
平均:6.00 / 書評数:1
1957年01月
けものたちは故郷をめざす
平均:7.00 / 書評数:1
1954年01月
平均:7.00 / 書評数:1