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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
敵の選択
テッド・オールビュリー 出版月: 1980年05月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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集英社
1980年05月

集英社
1983年02月

No.1 6点 人並由真 2019/01/27 13:19
(ネタバレなし)
 第二次世界大戦終盤の1945年6月。「わたし」こと英国の青年諜報員テッド・ベイリーは、対ソ連諜報作戦に関与。その最中に凄腕の敵諜報員「スパイ殺し中のスパイ殺し」ルイス・アレグザンダー・ベイカーによって二重スパイの冤罪を着せられかけた。どうにか窮地を脱して放免となり、戦後は広告業界で活躍していたベイリーだが、1960年代後半の今になって、戦時中の上官で現在は英国情報部に籍を置くジョー・スタイナーが彼に接触。旧敵ベイカーの目論む陰謀を打破する協力を求める。半ば強制的に作戦に参加させられたベイリーは、周囲の協力者の犠牲を払いながらも敵側の作戦を阻止しかけるが、そんなベイリーの前に意外な人物が出現。さらにその相手は、予想外の情報と提案をもたらした。

 1973年の英国作品。作者オールビュリーは80~90年代にかけて、日本にもそれなりの数の著作が翻訳紹介されたエスピオナージュ作家。評者は大昔に1~2冊くらい何か読んだような気もするが、もしかしたら本書が初読みかもしれない。昨年の秋、出先のブックオフで本書の文庫版を見かけ、懐かしい名前だと思って購入。昨日から今日にかけて読んだ。
 原書の刊行は前述通り70年代前半だが、作中で1919年生まれの主人公ベイリーが49歳と言っているので、物語は1968年前後の設定。軍事関連をふくめて世界中に浸透をはじめた時節の草創期のコンピューター技術も主題のひとつとなり、「ソフトウェアといっても柔らかい紙じゃないんですよ」といった主旨の説明を技術研究者の青年がベイリーにするのには笑った。当時の時代なりの技術革新の受容の過程を、ちょっと覗けるかもしれない。
 中盤からの二転三転する展開は作品の大きなキモで、その着地点を含めてもちろんここでは書けないが、良くも悪くもすごくスタンダードな前世紀のエスピオナージュを読まされた気分。結論からいえば、(旧作にしても)スパイ小説が全部が全部こういう作りじゃ困るが、しかし時々はこういう作品があってもいいだろうという思い。いや、直球的な玉の放り方は、キライではない。いろいろと良い意味で印象的なシーンもあったし。少なくともエスピオナージュに普遍的に求める人間ドラマ(というより本作の場合はキャラクタードラマだが)は提供してくれた。
 秀作に少し足りない佳作の上。


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テッド・オールビュリー
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