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[ クライム/倒叙 ] モンテ・クリスト伯 巌窟王 |
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アレクサンドル・デュマ | 出版月: 1948年01月 | 平均: 9.50点 | 書評数: 2件 |
世界文学社 1948年01月 |
岩波書店 1956年02月 |
岩波書店 1956年02月 |
新潮社 1961年01月 |
講談社 1976年01月 |
岩波書店 2013年06月 |
No.2 | 9点 | クリスティ再読 | 2023/01/04 16:17 |
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新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします...にふさわしい新春巨編というと、本作ならば貫禄十分というものでしょう。満願成就のお話ですから、おめでたいことはいうまでもなし。
お話の内容は読んだことない皆さんでもご承知の通り。評者があえてあらすじを述べるまでもなし。無実の罪で14年間の牢獄生活を送らされたエドモン・ダンテスが脱獄し、自分を嵌めた3人の男に復讐する話、には違いないんだけども、大長編でもあっていろいろなカラーが切り口によって覗いてくるような面白さも今回は感じていた。たとえばね、モンテ・クリスト伯爵の秘密の武器はハシッシとアヘンを混ぜた丸薬で、良い目的が多いけど相手をラリラリにさせて操るとかね(苦笑)。秘密結社の始祖みたいに言われる「山の老人」説話を広めたのが、他ならぬこの小説だったようでもある。まあそれは余談。 いまのような動乱の時代にあっては、われわれの父親たちの過ちが子どもにまで及ぶということは、あり得ないのだ。アルベール、われわれがみんなこうして生を受けた革命の時代には、軍服なり法服なりを、何かしらの泥や血で汚さずに生き抜いた者などは、ほんのわずかしかいないのだ。 とたしなめる人物がいるように、ダンテスの復讐も実は復讐相手の子どもたちに及ぶことを可能な限り避けようとするし、思いがけず子どもが犠牲になったことにダンテスはショックを受けて最終盤にいろいろ悩んでしまったりもする....親たちの「やらかし」だって、遅ればせの懲罰で精算されて、子ども世代には恩讐を持ち越さないように...というデュマの理想がわりとあからさまに出ているなんて感じていた。一見社会の柱石として活躍する「大物」たちだって、血気盛んで世の中もワイルド、となれば人に言えないような秘密の一つや二つ、平気で抱え込む「度量」みたいなものがある。そうやって親たちが言うに言われぬ想いで秘密を抱え込んでいるからこそ、子どもたちは自由でケーハクに生きることもできるものだ...なんて感じたりもする。年寄り臭い感想ですまないね。でもそう言う境地に至ったダンテスがマルセイユを再訪して抱く感慨に妙に共感したりもするのだよ。 いやこれ確かにこの小説の後半の舞台、「銀行家の王」ルイ・フィリップの七月王政の精神的な背景でもあるんだろう。だからこそモンテ・クリスト伯の最大の武器は無限の財力であり、常識を外れたカネの使い方で復讐対象を追い詰め、あるいは恩義を受けた人々にも報いるわけである。カネがすべてのバブリーな小説でもあるし、そういう「カネ」によって恩讐が精算される話だ....と読むのはおかしいかなあ。 まあそう読むと「大ロマン」というよりも、きわめてモダンな話でもある。銀行家ダングラールの娘ウージェニーは「銀行家令嬢」の立場を嫌って、一家崩壊をチャンスと捉えてビアンの相手の音楽教師と一緒に男装して家出しちゃう! 子ども世代だって、十分お茶目である。 まあミステリ的には、復讐のデテールとして示される策謀の数々にとどまらず、毒殺魔が絡んだり(この毒殺魔の無反省さが妙にリアル)、モンテ・クリスト伯が誇示するオリエント趣味の幻想が乱歩のデザインソースに思われたりとか、端々にミステリ的な興味も頻繁に浮かぶ。 ミステリだって、いろいろな「小説」を養分にして育ってきたジャンルでもあるわけで、そういうったベース部分をこの古典も担っているわけである。 |
No.1 | 10点 | take5 | 2022/08/09 23:28 |
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人生の数奇な運命こそミステリー。
学生時代に出会ってよかった作品。 大デュマも小デュマも偉大ですが、 この作品が古今東西名著百選等で、 漏れることは今後もないでしょう。 |