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[ 本格/新本格 ]
熱砂の渇き
西東登 出版月: 1971年01月 平均: 5.00点 書評数: 1件

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ノーブランド品
1971年01月

No.1 5点 人並由真 2018/11/11 20:24
(ネタバレなし)
 ある日の早朝、都内の「T動物公園」内で、中年男の変死体が発見される。男の素性は五井物産の部長・大田原正と判明するが、彼は大の男7~8人分の強烈な力を受けて圧殺されていた。動物園内のゴリラかオランウータンかの仕業かとも思われるが確たる証拠はあがらず、捜査は難航する。それと前後して、大手M新聞系列の夕刊新聞「夕刊トーキョー」の編集部に一人のアフリカ帰りの男が来訪した。夕刊トーキョーはかねてより会社独自の娯楽興業を続々と企画し、そのメイキング&ルポ記事を紙面の大きな柱としていた。そんな同紙に高森善太郎なるくだんの男が持ち込んだ企画は、日本で初めての公式・駝鳥レースの開催だった。これに関心を示した夕刊トーキョーの編集局長、堂本だが……。

 作者の第四長編。現時点でAmazonに書誌データの登録はないが、奥付(初版)の刊行日は1971年6月20日。仁木悦子の『冷えきった街』や森村誠一の『密閉山脈』などと並んで、当時の講談社の企画ものの叢書「乱歩賞作家書き下ろしシリーズ」のラインナップ内で刊行された一冊。
 元版の刊行以降は文庫にもなっていないと思うマイナーな作品だが、当時のミステリマガジンの月評にはちゃんと取り上げられており<国内で開催されるダチョウの公式レースにからむ殺人事件>という、本書独自の趣向はソコで昔から覚えていた(とはいえくだんのHMMのレビューで、本作を誉めていたかそうでなかったかは、もうちょっと記憶にない~汗~)。ちなみに改めて言うまでも無いだろうが、T動物公園は実在の多摩動物公園がモデル。

 序盤で提示された不可思議な殺人事件が、どうやらそっちの方がメインストリームらしい駝鳥レースの話題にどう絡み合っていくのか、そしてくだんの怪死のトリックはナンなのか、という二つの興味でそれなりに読ませるが、中盤で登場人物の人間関係が見えてくると最後までの大方の流れは透けてしまう。そこら辺はちょっと弱い(あと、フェアプレイを狙ったのであろう冒頭からのいくつかの叙述も、悪い意味でわかりやす過ぎる)。
 西東作品はあまり読んでなくて、長編は実は本書が初読だが、噂に聞く動物に強いということはよく分かった。終盤、事件の奥底がもう一段二段、秘めた部分をさらすのは、この作品の工夫として評価してもいいかも。


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西東登
1977年05月
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