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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
恐怖のパスポート
エリオット・リード 出版月: 1960年01月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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早川書房
1960年01月

No.1 7点 クリスティ再読 2018/05/02 22:49
エリオット・リード名義の全5作も、本作で完了、ということになるのだが、リードの手の内が分かってきて、しかもタイトルが悪くて読む気をソソらないものだから、ずっと後回しにしてきた作品なんだけど....いや、本作面白い。他のリード作品とは違って、「武器の道」とか「ダーティ・ストーリー」とか「ドクター・フリゴ」との関連性がずっと強いから、それこそアンブラー名義で出ても全然不思議じゃない。リード名義は本当に本作と「反乱」だけ読めばいいくらいだ。
主人公は金策のため、兄の援助を求めに兄の住むグァテマラ(たぶん)に旅立った。兄は考古学の研究で訪れたグァテマラでの発掘で得た出土物を保護するために、現地に土地を買い、コーヒー園を経営していたのだった。しかし、兄との連絡が全く取れない...主人公は不審に思いつつも兄の農場に到着する。そこで迎えたのは兄の妻の兄妹を名乗る男と、衰弱しきった瀕死の兄、それとなぜか行きの飛行機で乗り合わせた兄の妻を名乗る女だった...兄の農園は妻とその兄弟の手に渡り、なぜか主人公は農場に監禁されることになってしまった。不用意に主人公がその娘に会いに来るように手紙を送ってしまったために、何も知らない娘もまもなく到着すれば、同じように監禁されることが目に見えている。主人公は脱出を決意した。
という話。ジャングルを越える逃避行が戦前のアンブラーの定番だった脱出行を彷彿とさせる。前半のサスペンス、中盤の冒険小説風、後半の主人公の娘とそれを張り合う二人の青年を巡る軽妙なロマンティック・スリラーの味、しかも大詰めでクーデター事件まで盛り込んだノンストップな面白さである。主人公の娘を張り合う青年の一人が、南米の大鉱山所有者の息子で、主人公の娘の失踪は警察に取り合ってもらえないのに、娘に恋して娘の行方を捜す男が自分で動くと、その青年の安否のために警察が動いて捜査の端緒となるとか、クーデターの予兆を操作の結果つかんだ警部が、警視総監に報告するがどうやら総監もクーデター派のシンパで取り合ってもらえないのが、もう一人の恋敵はオペラ歌手のくせにその父が政府の要人で、娘の奪回のために協力して軍を動かすとか、中南米で「ありそう」な皮肉なプロットも面白い。中南米で横行した山岳ゲリラってこんなもんなんだよねぇ。


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