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[ SF/ファンタジー ] ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所 私立探偵ダーク・ジェントリーシリーズ |
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ダグラス・アダムス | 出版月: 2017年12月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
河出書房新社 2017年12月 |
No.1 | 7点 | Tetchy | 2018/02/16 23:21 |
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英ガーディアン紙の「死ぬまでに読むべき1000冊」でSFコメディ『銀河ヒッチハイク・ガイド』が選ばれたダグラス・アダムス。邦訳された作品はそのシリーズ作品しかなかったが、2017年になって唯一の奇想ミステリーである本書が訳出されることになった。これはやはり上記のイベントによる再評価によるところなのだろうか。
さてそのアダムスだが、やはり作品は一筋縄ではいかない。電動修道士の話やスーザン・ウェイという女性の話が同時並行的に語られ、どんな物語が始まるのか、しばらくは読者は予想が着かなく、100ページを過ぎたあたりからようやく物語に繋がりが出てくる。 そして探偵ダーク・ジェントリーが本格的に姿を現すのは190ページ。物語としては約半分の辺りである。そして彼を通じてようやく本書のメインの事件が明かされる。まず誰しもが疑問に抱くダーク・ジェントリーの肩書である全体論的探偵とは一体どう意味なのか? ダーク・ジェントリー曰く、「全体論的」とは万物は根本的に相互的に関連し合っており、そこに目を向けて物事を調査し、そして解決に結びつけるという物。従って猫の捜索1つにおいても、万物の相互関連性のベクトルを地図に記入して位置を特定すればそれはバーミューダ島に行き当たり、そこまで出張しなければ全体が見えてこないとのたまう。この辺の胡散臭さこそがアダムスの真骨頂と云えるだろう。 とにかくアダムスの筆致は縦横無尽である。書きたいことを次々と放り込んで物語は進む。 量子力学、哲学、芸術論、物理学に数学を物語の流れを阻害する云々関係なく放り込んでくる。しかしそれらは決して退屈を誘うわけではなく、寧ろ私が読書の愉悦と考えている、新たな蘊蓄、知識の得ることが出来る、非常に興味深い内容に満ちていた。 アダムスの書きたいがままに綴られているような物語はしかし後半に至ると実に用意周到に仕掛けられた伏線が散りばめられていることが解る。 今まで曖昧模糊だったものが明らかになり、見事なまでに物語は美しく着地する。 まさかこれだけ取っ散らかった物語がかくも見事な着地を見せるとは思わなかった。しかも色んなその道の歴史的事実やゴシップを知っていると私が知っている以上に思わずニヤリとするような仕掛けも施されている。 二度読み必至の本書はダグラス・アダムス作品の中でも珍しく内容のまとまった作品ではないだろうか。 本格ミステリにとってタブーとされている題材を扱いながらもこれだけ見事な着地を見せる。ジャン・コクトーは日本の相撲の立合いを見て「バランスの奇跡だ」と評したが、私はこの玩具箱のような通常一同に会しえないとんでもない設定が美しく着地する物語をバランスの奇跡であると評しよう。 |