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[ サスペンス ]
偽りの楽園
トム・ロブ・スミス 出版月: 2015年08月 平均: 5.50点 書評数: 2件

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新潮社
2015年08月

No.2 6点 E-BANKER 2026/04/12 11:23
「チャイルド44」「グラーグ57」そして「エージェント6」と続いたレオ・デミトフの長い、長い物語。その興奮も冷めやらぬうちに、本作に突入。
レオのあまりにも過酷な人生は私の心の中に熱く残ったままだ。本作はどうなんだ?
2014年の発表。

~両親はスウェーデンで幸せな老後を送っていると思っていたダニエルに、父から電話がはいる。「お母さんは病気だ。精神病院に入院したが脱走した」。その直後、今度は母からの電話。「私は狂ってなんかいない。お父さんは悪事に手を染めているの。警察に連絡しないと」。両親のどちらを信じればいいのか途方に暮れるダニエル。そんな彼の前に、やがて様々な秘密、犯罪、陰謀が明らかに・・・~

本作の舞台はスウェーデン。それもストックホルムのような都市ではなく、冬は雪深い田舎町。原題の”The firm”のとおり牧場広がる大地。それだけでも、なんだか目頭が熱くなってきそうだ。
ただし、今回は前作ほどドラマチックな展開は用意されていない。
主人公ダニエルと実母ティルデ。ふたりの変則的なやり取り(「母の目の前で母の書いた手記を読む」という形式)が終盤まで続いていく。そこでは、紹介文のとおり、平和に暮らしていたと思っていた父母に訪れた劇的な変化が綴られる。

で、キーポイントとなるのが、「この実母が正常なのか狂っているのか」ということ。
実母が綴った話は迫真に満ちていて、読者としてもグイグイ引き込まれてしまう。スウェーデンの田舎町で忌むべき犯罪が行われているに違いない。多くの読者がそう思った刹那。物語は終盤から大きく変化していく。
個人的には、まあ予想の範疇といえばそうなのだが、うーん。なんだか非常に切ない結末ではあった(巻末解説者は「ほろ苦い」と表現していたが、「切ない」の方がしっくりくる)

本作も作者のストーリーテラー振りが十分に発揮された作品に仕上がっていると思う。
途中やや冗長な部分もあるけれど、この独特な作品世界にどっぷりと浸かるのもいいだろう。
ラストも印象的ではあるし。

No.1 5点 小原庄助 2017/09/20 09:45
離れて暮らす両親からある日突然、不穏な連絡が届いたが、なぜか父と母の言い分は全く異なる。
文章の大部分を占める母の語りが、この小説の核になっている。
妄想なのか告発なのか?田舎の閉塞感、母の遠い記憶、ほのめかされる危険。
不安な気配が物語を駆動し、読者を引き込むサスペンス。
決してハートウォーミングな物語ではないけれど、最後の一行を読み終えた後の、胸に迫る独特の温かみが忘れがたい。
派手さはないが、じっくり読ませる小説。


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トム・ロブ・スミス
2015年08月
偽りの楽園
平均:5.50 / 書評数:2
2011年08月
エージェント6
平均:8.00 / 書評数:2
2009年08月
グラーグ57
平均:6.50 / 書評数:2
2008年08月
チャイルド44
平均:7.50 / 書評数:10