皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格 ] 灯火管制 クルック弁護士シリーズ |
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アントニー・ギルバート | 出版月: 2016年07月 | 平均: 5.67点 | 書評数: 3件 |
論創社 2016年07月 |
No.3 | 5点 | 人並由真 | 2016/08/24 01:34 |
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(ネタバレなし)
筆者はアントニー・ギルバートは本書が初読。ポケミスの『黒い死』も買ってあって未読だったが、さあどっちから読もうと思って調べると、本書の方が原書は先の刊行ゆえ、こっちから手をつけた。 噂のクルック弁護士のキャラクターは、英国の紳士探偵の系譜の主流から外れた? アクの強い人物。本書では別の登場人物とその場にいない者の陰口を言い合い、ドイツ軍の空襲であいつが死ななかったのはヒットラーの失敗だ、という主旨の諧謔まで口にする(唖然)。さらには眼前の耄碌した老人の要領を得ない対応にじれったさを感じ、内心で「精神異常者の安楽死を主張する進歩論者に共感を覚え」たりする(呆然)。今の時代なら、たぶん新作小説として問題ある叙述だろ、これ(笑)。 肝心のお話の方は、戦禍の進展を背景にした、クルックの知人の失踪騒ぎ、その流れで起きた殺人事件、ある人物にかかわる謎の金の動き…などの要素を好テンポで語り継ぎ、それなりのリーダビリティで楽しめる。ただし終盤の反転劇と同時に明かされる意外な犯人の逮捕図はミスディレクションが見え見えでいま一つ…なような(汗)。最後の最後のクルックの子細な謎解きは、なかなか唸らされたんだけどね。 ところで訳者あとがきによると、ギルバートはクルックのシリーズ以前に政治家スコット・エジャートンなる人物をレギュラー探偵役にした十冊ほどのミステリを書いており、やがて自作のレギュラー探偵の座をクルックに刷新したらしいが、本書のエピローグ的な部分でクルックと別の登場人物との会話の中でその「友人スコット・エジャートン」の名が出てくる(304ページ)。もちろん現時点の筆者には、何の縁も面識もないキャラクターだが、ギルバートの新旧の主役探偵の世界観が繋がっているという構造そのものが、なんとなくほほえましい。カーの『死時計』のラストで、バンコランのことを話題にするフェル博士みたいだ。 |
No.2 | 6点 | kanamori | 2016/08/22 22:53 |
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弁護士のクルックは、フラットの下の階に住むカージー氏とひょんなことで知り合った。風変わりな言動を繰り返すカージー氏に興味をいだき部屋を訪ねると、地方に住むはずの彼の叔母の帽子と手紙を発見、さらに翌朝カージー氏は突如として姿を消してしまう--------。
”私の依頼人はみな無罪”をモットーとするアーサー・クルック弁護士シリーズの一冊。 巻末解説によると、これまでのシリーズ邦訳作品ではクルックの登場場面が限られていて、人物像が十分に描かれているとはいえないようですが、本作では、クルックが住むフラットの隣人の失踪で幕を開け、同じフラットの空き部屋で女性の死体が発見されるという展開なので、クルックは終始出ずっぱり。戦時中ながら、ドイツの空襲とヒトラーをネタにしたブラック・ジョークを連発するなど、ユーモア感覚と悪辣さを兼ね備えたクルックのアクの強さが存分に見て取れます。 謎解き面では、些細なヒントから真相を引っ張り出す堅実な推理の手際と、少ない登場人物のなかで意外性を生み出すプロットは評価出来ます。目立たないですが助手のビル・パーソンズもいい仕事をしていましたね。 なお、訳者あとがきに本書がシリーズ第20作であると書かれていますが、nukkamさんが書評に書かれているとおり11作目が正当です(原題が似ているので勘違いしたのでしょうか)。 |
No.1 | 6点 | nukkam | 2016/07/08 19:49 |
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(ネタバレなしです) 1942年発表のクルック弁護士シリーズ第11作で派手な描写ではありませんが戦時中であることを感じさせます。この作者は前半をサスペンス小説、後半を本格派推理小説という構成が得意パターンと私は勝手に理解していましたが本書の構成はその逆で、前半が本格派推理小説風、後半がサスペンス小説風でした。といっても最後はクルックによる緻密な推理説明で本格派推理小説として着地しています。ミスディレクションも巧妙です。 |