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[ 短編集(分類不能) ]
緋の堕胎
戸川昌子 出版月: 1966年01月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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講談社
1966年01月

双葉社
1986年10月

筑摩書房
2018年10月

No.1 6点 kanamori 2016/04/18 21:06
作者の持ち味である淫靡な官能描写や幻想風味が横溢する6作品を収録した短編集。巻末の初出一覧によると、発表年は昭和39年から54年で、割と長い期間の中から選ばれています。印象に残ったのは次の4作品。

表題作の「緋の堕胎」は、堕胎専門の医院を舞台にした犯罪小説。違法な金儲けに走る医者と新興宗教にはまる妻、そして情緒不安定な若い助手、3人の微妙な人間関係がある告発を契機に崩壊していく。中絶手術後のアレの処置などの具体的で胸糞悪い描写は、イヤミスをはるかに超越してますね。
「嗤う衝立」は、病院の相部屋で繰り広げられる痴態描写はポルノ小説まがいですが、最後に待っているのは脱力必至のオチ。
「黄色い吸血鬼」は、内容を覚えていたので初読時ほどのインパクトを感じませんでしたが、幻想と淫靡なエロスという点で最も作者の持ち味が出ていて、代表作といえるかも。
「塩の羊」は、フランスのサン・ギャロン島を舞台にしたミステリアスな作品。失踪人捜しの推理小説かと思えば、変態的な官能小説へ、さらにはレストランの女主人と修道僧の因縁を描く幻想的なゴシック小説になったりで、着地点が見えない不思議な味わいがある。個人的にはコレが一番好みかな。
ただ、どの作品も感受性豊かな中高校生にはとても読ませられません。トラウマになること間違いなし。


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戸川昌子
1988年06月
静かな哄笑
1984年09月
火の接吻
平均:6.40 / 書評数:5
1983年08月
深海怪物の饗宴
平均:4.00 / 書評数:1
1967年01月
蜃気楼の帯
平均:4.00 / 書評数:1
深い失速
平均:5.50 / 書評数:2
1966年01月
緋の堕胎
平均:6.00 / 書評数:1
1963年01月
猟人日記
平均:5.75 / 書評数:8
1962年01月
大いなる幻影
平均:6.90 / 書評数:10