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ミステリの祭典

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八二一さんの登録情報
平均点:5.75点 書評数:411件

プロフィール| 書評

No.311 5点 弁護士は奇策で勝負する
デイヴィッド・ローゼンフェルト
(2023/07/16 20:22登録)
作者のコメディセンスは、なかなかのものがあるが物語の底を流れるテーマである父と子の絆や、危機的な状況を切り抜ける反則すれすれの法廷戦術の面白さもある。個性派揃いの脇役も充実。


No.310 6点 炎の色
ピエール・ルメートル
(2023/06/24 20:24登録)
1930年代前後のフランスを舞台にしたサスペンス。
資産家の女性が奸計により資産も邸宅も失うが、数年後、曲者たちを集めて自分を裏切り栄華を極めた者たちに復讐していく。
波乱万丈の変転劇は、ぐいぐい読ませるし後半はコンゲームの連続で楽しめる。


No.309 5点 指名手配
ロバート・クレイス
(2023/06/24 20:19登録)
性格は軽いが頼りになるエルヴィス・コールが、連続窃盗の罪を犯した少年のために奔走する。
二人組の犯罪者が少年を追っており、その手から守りながら彼を警察に自首させるという難しい依頼にコールは取り組むのである。動きの多いも物語の中に、探偵の大人の魅力が光る。


No.308 6点 夏の沈黙
ルネ・ナイト
(2023/06/24 20:16登録)
秘密にしておきたいある夏の出来事。それが何者かの手によって、20年の沈黙を破り、静かに動き出す。出来事の断片は寄せ集められ、一つのものが仕立て上げられる。
決して気持ちがいいとは言えないその物語は、最も知られたくない最愛の家族の元に本という形で届けられる。最後まで沈黙を貫いたのは誰なのか。ラストにやるせなさと希望の光が押し寄せる。


No.307 6点 廃墟ホテル
デイヴィッド・マレル
(2023/06/24 20:11登録)
うち捨てられた廃墟を専門に探検するクリーパーと呼ばれる人々を材にとったところがなんともユニークな本作だが、ホラーサスペンスの文脈が、後半サバイバル調になるあたりのサービス精神もたっぷり。
作者がランボーの生みの親であることをふと思い出させてくれる展開も楽しい。


No.306 5点 ラブスター博士の最後の発見
アンドリ・S・マグナソン
(2023/06/06 20:16登録)
ある科学者の数々の発明で、悪童は人生を「巻き戻し」され、ぴったりな恋人は、「計算」され、死後は夜空の「星」に。
合理的でハッピーな人生が約束された社会で、一組のカップルが試練に直面する。アイスランド発のポップな終末と再生の物語。


No.305 3点 死体と一緒にヴァケーション
ギリアン・ロバーツ
(2023/06/06 20:12登録)
美人教師アマンダ・ペッパーシリーズ第五弾だが、ミステリとしては標準以下の薄味であり、短編で十分の内容だ。
水増しされた分だけ、冗長になり三分の一もいかないうちに、底が割れて先を読む興味が減退する。せめてユーモアが冴えた会話が洒落ていれば救われるのだが、この点でも標準以下である。


No.304 6点 火星の人
アンディ・ウィアー
(2023/06/06 20:07登録)
事故でたった一人火星に取り残された植物学者が、知力・体力・精力の限りを尽くして生き残ろうとする奮闘を描いた作品。
ストーリーラインは単純だが、創意工夫の面白さ、科学技術の論理的思考の凄さ、ポジティブ思考の素晴らしさなど実に勇気づけられた宇宙SF。


No.303 6点 裏切りのノストラダムス
ジョン・ガードナー
(2023/05/10 19:26登録)
ノストラダムスの詩句を利用した第二次大戦中の諜報活動の謎を、戦後の現在から解明する物語だが、とりわけ主人の英国諜報局員ハービー・クルーガーが魅力的。
叙情詩的に重厚さがあり、主人公の偏愛するマーラーと彼の人間性との結びつけ方が巧み


No.302 5点 プリムローズ・レーンの男
ジェイムズ・レナ―
(2023/05/10 19:22登録)
熱烈に愛した妻を失ってから、一人息子を育てつつも執筆に戻れないノンフィクション作家を、不可解な殺人事件がひきつけた。調査するうち、事件と亡き妻との奇妙な繋がりが浮上。
捻りの旅に出来事は様相を変え、ミステリ・恋愛小説・ダークホラーが一つによりあわされる。


No.301 3点 見られている女
リザ・スコットライン
(2023/05/10 19:16登録)
作者は、法律事務所勤務の経歴を持つだけあって、弁護士の世界の内情や随所に挿入される法廷シーンにはリアリティが感じられる。
だが、事件に絡んでくる人物たちの描き方は、どうにも平板で魅力に乏しい。そのため、肝心のストーカーの正体とその動機が判明しても、とってつけたようで今ひとつピンとこない。サスペンスとしては、いささかインパクトに欠ける作品と言わざるを得ないだろう。


No.300 5点 バタフライ・エフェクト
カーリン・アルヴテーゲン
(2023/04/20 20:40登録)
あの時、別の選択をしていたら別の現実があり得たかもしれない。
家族との間で数々の思いを断念してきた中年女性の回想を軸に、いずれも人生の困難な分岐点を迎えた三人の語りが交錯する。スウェーデンのミステリ作家によるサスペンスフルな心理小説。


No.299 6点 暗号機エニグマへの挑戦
ロバート・ハリス
(2023/04/20 20:35登録)
第二次世界大戦中の史実を背景とした暗号解析小説。
最初から最後まで徹底した暗号にこだわった作品で、派手さこそないものの、緊迫した状況下における暗号解析のディテールが丁寧に描かれている。
また訳者の力によるところも大きいだろうが、作品全体が厳かで重々しいトーンに包まれており、それが戦時下のイギリスの暗く、くすんだ世相を見事に浮かび上がらせている。


No.298 5点 呼ぶ声
ジョン・ソール
(2023/04/20 20:30登録)
砂漠地帯の寂れた油田町の住民が、巨大資本による秘密プロジェクトによって知らぬ間に心身を蝕まれてゆく恐怖が、堅実な筆致で描かれている。
冒険小説のように展開するスリルとサスペンスに最後まで惹きつけられた。見事に勧善懲悪で終わる痛快な結末にしばし呆然。


No.297 5点 ありふれた祈り
ウィリアム・ケント・クルーガー
(2023/03/30 20:20登録)
家族の悲劇を回想知る青春ミステリ。牧師の父親、芸術家肌の母親、音楽の才能に恵まれた姉、吃音症の弟とともに幸福な日々を送っていたフランクが様々な死を通して叡智を身につけていく。
事件後から現在まで語るエピローグは、生と死が綾なす人生の妙を高らかに謳いあげていて極めて印象深い。


No.296 5点 デスレス 奴等は死なない
加納一朗
(2023/03/30 20:15登録)
失踪した新進女優の謎を追うルポライターに迫る、秘密組織の魔手。生ける死者さながら襲撃をり返す不気味な刺客たち。
東北の片田舎に建設された秘密研究所で進められる忌まわしい実験とは。見事なまでにステレオタイプなストーリーが、予想通りの大団円に向かってテンポよく語られてゆくのだが、夜霧が立ち込める北の廃市、荒れ果てた映画館にポツリと灯るあかりといったロケーションは実にいい雰囲気を出している。


No.295 4点 だれも信じてくれない
モリー・カッツ
(2023/03/30 20:07登録)
全体にロマンス小説らしい雰囲気が漂っていて読みやすいのだが、主人公の唐突な心変わりやストーカーの悪人ぶりなど、話の展開に安易さも感じさせる。
終盤も無理にミステリ仕立ての意外な結末に持ち込もうとした感じが残る。


No.294 5点 緑衣の女
アーナルデュル・インドリダソン
(2023/03/15 20:33登録)
犯罪捜査官エーレンデュルものの第二作。白骨死体の謎を追いながら、ある家族の凄まじい暴力の歴史と、捜査官の娘の問題が語られていく。
やるせなく悲しく辛い物語であるが、それでも最後に救いや温かさを覚えるのは、人間性に信頼を置く作者の懐の深さだ。


No.293 7点 天冥の標X 青葉よ、豊かなれPART3
小川一水
(2023/03/15 20:27登録)
壮大な舞台、遠大な歴史、緻密な設定、マクロとミクロを自在に行き来する視点。ロストテクノロジー、パンデミック、未来の性愛、異星知性、毎回テーマを変えながらも、その根底には一貫して「生きること」があったように思う。
西暦201X年、地球から始まった物語は、思いも寄らない遠くまで読者を連れてきてくれた。ここにはSFに描けるもの何もかもがある。


No.292 5点 証拠排除
ペリー・オーショーネシー
(2023/03/15 20:21登録)
どんな状況に追い込まれても依頼人を信じ、前向きな姿勢を崩そうとしない主人公ニナは共感を覚えるキャラクター。危うげな魅力を持ったミスティや、誇り高き精神分析医、ニナに協力する調査員など、サブキャラクターたちもいい味を出している。
クライマックスの法廷シーンもスリリングでテンポが良く飽きさせない。ラストに至って、やや強引な展開が目に付くものの爽やかな読後感がそれを救っている。

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