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ミステリの祭典

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侵入者 自称小説家

作家 折原一
出版日2014年09月
平均点4.80点
書評数5人

No.5 5点 E-BANKER
(2018/09/11 21:13登録)
かれこれ二十年以上続いている「○○者」シリーズ。
実際にあった事件を元にしている本シリーズだが、今回はあの超有名未解決事件「世田谷一家殺人事件」がモチーフ。
2014年の発表。

~クリスマスの朝、発見された一家四人の惨殺死体。迷宮入りが囁かれるなか、遺族は“自称小説家”の塚田慎也に調査を依頼する。彼が書いた同じく未解決の資産家夫婦殺人事件のルポを読んだという遺族。ふたつの事件の奇妙な共通点が浮かび上がり、塚田は「真相」に近づくため、遺族を出演者とした再現劇の脚本を書き始めるのだが・・・~

う~ん。
「これは随分とっちらかってるなぁー」って思いながら読んでいた。
最近の作者の作品にまま見られるんだけど、登場人物たちが作品のなかで自分勝手に動き出して、それを作者も黙認しているとでも表現すればいいのか・・・
作者も妄想してるし、登場人物も妄想してるしで、こうなると読者は「一体、今って地の文なのか、妄想世界なのか、どっち?」って、ふわふわしてしまうのだ。

ちょっと前までの作品なら、それでもラストが近づくとそれなりに現実感のある解決に向かっていたのだが、本作はただ曖昧なままラストを迎えることになる。
こうなると、もはや「これはなに?」っていう感覚だ。
(「ピエロ」も「百舌の早贄」も引っ張りすぎ!)

現実の事件をベースにルポライターが事件を追いながら、徐々に現実と虚構の境目を捻じ曲げていく・・・という本シリーズの基本プロットももうそろそろ限界ということか。
よく読めば、今までの作品のプロットの寄せ集めということもできるし。
(「再現劇」も過去にあったしなぁ)
まぁとにかく駄作ということだ。
せっかく「世田谷一家殺人事件」という破格の大物を出してきたんだから、もうちょっとやりようがあったのではないか?
それでもファンとしては、出ればまた手に取るんだろうね・・・

No.4 4点 HORNET
(2018/06/10 10:57登録)
 「自称小説家の書く作品」と「現実」とが交互に描かれる構成なのだが、その入れ替わりがあまりにもめまぐるしいのと、「百舌の早にえ」とか「ピエロ」とか「電動車椅子の老人」とかの思わせぶりな伏線をあまりにこまめに散りばめているのとで、非常に分かりにくく、読みにくかった。
 また、そういう大枠としての仕掛け重視の印象が強く、各場面での登場人物による推理や会話などの描写は非常に短絡的で軽く感じたり、「百舌の早にえ」や「ピエロ」などの不気味さを脚色するアイテムもどこかチープな感じがしたりして、あまり気持ちが入らなかった。
 事件の真相と、自称小説家の真の目論見が明かされる最後はそれなりに面白さを感じることができた。

No.3 4点 測量ボ-イ
(2016/07/05 20:25登録)
構成は凝っているんですけどね。ちょっと空回り感が。
結末のサプライズ感が乏しいのが物足りなさの要因か?
基礎点5点に、この物足りなさにマイナス1点。
ちょっと辛めかな?

No.2 6点 蟷螂の斧
(2014/11/26 09:07登録)
裏表紙より~『北区十条で起きた一家四人殺害事件。発生後半年以上経っても解決のめどが立たず、迷宮入りが囁かれる中、“自称小説家”の塚田慎也は遺族から奇妙な依頼を受ける。「この事件を調査してくれないか」―。以前、同じく未解決の資産家夫婦殺人事件のルポを書いたことから白羽の矢が立ったのだ。百舌の早にえ、車椅子の老人、ピエロのマスクをかぶった男…二つの事件に奇妙な共通点を見出した塚田は、あるアイデアを思いつく。遺族をキャストに、事件現場で再現劇を行うことで犯人をあぶり出すのだ―。ミステリー界の特級幻術師が送る「○○者」シリーズ最新刊。』~
フーダニット物。もし、理詰めで推理する本格物であるならば、その結果暴かれる真相は、結構インパクトがあるような気がしました。しかし、サスペンスものなので、その点若干弱く感じるのは致し方ないか?・・・。前半は事件の概要なので、そのサスペンス感、盛り上がりにやや欠けています。後半は、遺族が事件の再現劇を演じるというリアリティのない展開(笑)なのですが、脚本が面白いので一気読みできました。やや甘めの採点となります。

No.1 5点 kanamori
(2014/09/28 11:29登録)
プロ作家になれない”自称小説家”の塚田は、ひょんなことから近所の柿谷家で起きた一家4人殺害事件の真相究明を遺族から依頼される。やがて、以前にルポを書いた板橋区の資産家殺害事件と奇妙な共通点があることに気付き、あるアイデアを実行することに-------。

三面記事の事件を元ネタにした「〇〇者」シリーズの最新作。今回は世田谷一家殺害事件をヒントにしている。
自称小説家の塚田視点の語りを中心に、過去の板橋区資産家夫婦殺人事件のノンフィクションのパート、今回の事件を小説化したパートなど、例によって多重構造のプロットが使用されていますが、全体の3分の2を占める第1部は、同じ情報の繰り返しが目立ち冗長に感じた。もう少しスピーディな展開が可能だったのではと思う。
”遺族をキャストにした再現劇”の第2部も、現実と劇の脚本の内容が交互に描写される構成になっていますが、それが意図したサスペンスを醸成しているかは微妙です。作者の手筋を知っていると、この真相ではそれほどサプライズを感じないのでは。

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