検事の本懐 佐方貞人シリーズ |
---|
作家 | 柚月裕子 |
---|---|
出版日 | 2011年11月 |
平均点 | 6.20点 |
書評数 | 5人 |
No.5 | 6点 | ʖˋ ၊၂ ਡ | |
(2024/07/08 13:32登録) 北国の架空都市・米崎市の地検に勤務する若手検事・佐方貞人が主人公を兼ねて、狂言回しを務める。物語はおおむね、佐方以外の人物の視点で語られ、そこから佐方の人物像を浮き彫りにする、という手法がとられている。唯一の例外は、苦境に陥った幼馴染の元恋人に頼まれ、トラブル解決に佐方自身が乗り出す「恩を返す」のみ。ここでは元恋人のほか、彼女を恐喝する悪徳刑事、そして佐方の視点が交互に出てきてサスペンスを盛り上げる。 「樹を見る」、「罪を押す」、「拳を握る」はいずれも、証拠から明らかに有罪と思える事件を扱う。場合によっては、被疑者が自白までした事件に、佐方が疑問を呈して再調査し、無罪を立証するという構成をとる。警察捜査が、やや杜撰すぎるきらいもあるが、佐方の粘り強さがよく出ていて、最後まで飽きさせない。「本懐を知る」は、佐方の亡父の過去の謎めいた事件を取り上げる。ルポライター・兼先の視点で、その秘密が次第に明らかにされる展開は読み応えがある。 |
No.4 | 6点 | 測量ボ-イ | |
(2021/07/20 20:47登録) 本来なら起訴が難しいであろう案件を、主役の検事が独自に真相を 暴く(あるいは起訴に持ち込む)、そんな短編集です。 内容は水準ですが、この骨太な作品を女性の作家が書いた、という 意外性が一番印象に残ります。 採点は5点(基礎点)+1点(この意外性を好感) |
No.3 | 6点 | VOLKS | |
(2018/08/13 08:47登録) 佐方が検事の頃の短編集。 どーゆー生い立ちで、どーゆー人と関わって今の佐方弁護士になったか、が解る一冊。 どの話も熱く心を揺すぶられる半面、佐方は冷静であることが多いが「恩を返す」では、稀にみる一面を垣間見ることが出来て印象に残った。 |
No.2 | 7点 | ボンボン | |
(2015/05/23 00:50登録) 面白かった。前作とは比べようもなく格段に巧くなっている。 全編をかけて佐方検事の人生の謎が解かれていく。 ことの本質、隠れた真実を、奇をてらわず実直に見つけ出していくという、かなり地味な味わいが胸にしみわたる。 まず、「検事の本懐」っていう言葉からして、熱いものが込み上げてくるなあ。 第3話「恩を返す」の緊迫のスローモーション場面が印象的だ。 ところで、柚月裕子というきれいなお名前の女性なのに、おじさんへの理解がとてつもなく深いのはなぜだ。 |
No.1 | 6点 | makomako | |
(2014/09/13 20:09登録) 法曹物はどちらかというとあまり好きではないのだが、この連作集は面白く読みました。どの話もかなり興味深い。 ことに第4話の拳を握るでは特捜班に派遣された佐方が尋問する相手にあらかじめ上から作った書類にハンコを押すように強制することを押し付けられるシチュエーションにはびっくしました。 検察の特捜班は花形と思いますが、この小説のように取り調べる人の都合など全く無視で自分の作ったシナリオに合わせることのみを考えているとしたら、誤認逮捕なんていくらでも出るのでしょう。本書の最後に元検事から監修をいただいたとあるから、本当にこんな組織なのでしょうか。かなり考えさせられるお話でした。 |