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ミステリの祭典

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このミステリーがすごい!2014年版
「このミステリーがすごい!」編集部

作家 雑誌、年間ベスト、定期刊行物
出版日2013年12月
平均点5.83点
書評数6人

No.6 7点 Tetchy
(2014/02/18 23:12登録)
最近では私はこのムックに対して不満ばかり漏らしているが、今回はそれを少しだけ緩めたい。なぜならちょっとばかり内容が充実していたからだ。

それはやはり「復刊希望!幻の名作ベストテン」という好企画に負うところが大きい。『このミス』にはこういうのがないと。対象作品が『このミス』誕生以前の1987年以前のミステリと云う非常に大雑把な括りゆえに挙げられた作品が多種多様でそれ故獲得点数に差が出なかったのはしょうがないが、絶版によって読まれるべき名作を読むことが出来ないという危機的出版情況に一石を投じるこのような好企画は大歓迎。東京創元社ではマーガレット・ミラーが復活するなどの嬉しいニュースもあり、この企画が起爆剤となって続々と名作が復刊されることを期待したい。

またこのベストテン選出の各選者の選んだ作品が今年の作品の末席に申し訳程度に書かれているだけだったのは正直ガッカリ。選んだコメントも載せてほしかった。また別冊でいいから例えば1967~1977年、1977~1987年と10年間に絞った幻の名作ベストテンのムックも出してほしい。文藝春秋の『東西ミステリーベスト100』も昨年28年ぶりに実施されたことだし、アベノミクス効果の時流に乗って何十年ぶりかの出版景気を目指して、ぜひ復刊のカンフル剤として実施してほしいものだ。

メインのランキングについては長くなるのでちょこっとだけ触れるが、国内ランキングの上位のマニアック度の濃さは何だろうか?しかし東山氏のような作品が上位に来るのは『このミス』らしくて個人的には○。
あと『ビブリア古書堂』シリーズもとうとうランクインすることになったか。ミステリ好きはやはり乱歩には弱いのか。

海外はやはりキングの1位が素晴らしい。『このミス』が始まって26年目にして初の1位だ。もちろん彼の作家生活はその前から始まっており、デビューは1973年なのだから、なんと作家生活30年目にして傑作を物にしたわけだ。まさに巨匠の名にふさわしい快挙だ。クーンツのファンとしてはキングの活躍を受けてぜひ一念発起して再ブレークを果たしてほしいのだが。
北欧ミステリの活発な訳出が目立っている昨今なのにたった1作だけのランクインなのは意外だった。

しかし幻の名作ベスト選出という好企画があったとはいえ、相も変わらずどれだけの読者が読んでいるか解らない『このミス』大賞受賞者による書き下ろし短編もあるし、紙の質が悪い。本当にペラペラで少し力を入れるだけで破れてしまいそうなくらいだ。21世紀にもなってこんな紙を使っているのは『このミス』くらいではないだろうか。
単価を抑えるためだろうけれど、昨年よりも5円高くなり、しかもページ数は30ページも減っているのに紙の質が変わらなかったのはこの金額が売り上げにさほど影響していないからではないか(実際いつまでも売れ残って本屋の平台にうず高く積まれているのをよく見るし)。
書き下ろし短編の排除と年に一度のミステリのお祭りに相応しいもっと濃い中身の充実と読みやすい紙に変えてくれることでそのために単価が100円なり200円なり挙がろうが購入するのではないだろうか。8年前の695円だった時の売り上げからどれだけ部数が伸びたのか甚だ疑問なのだが。

今年は酷評はないと云いながらも最後はやはり目立つ欠点をあげつらってしまった。それも21年間も購入している『このミス』への愛情ゆえだと理解してもらいたいのだが。

No.5 5点
(2014/02/17 09:56登録)
注目記事は、幻の名作を探せ(復刊希望)と映画化ガイド。
幻の名作を探せは、名作を語り合う対談のようなもの。いつもの座談会の代わりなのか?すこしは趣向を凝らしてあり、面白いといえば面白い。
どうせなら、復刊ドットコムと組んで、復刊を募るなど大々的にやればいいのにとも思うが。

一方の映画化ガイドは予想していたのと全然ちがっていた。年刊本なので仕方ないが、この1年の映画化作品しか対象となっていないのは物足りない。
二流小説家の「武田真治が怪演」との記載があり、すこし目を惹いたが、それだけだった。観たいなとは思うがいつになることやら。最近、劇場では映画観ないからなぁ。

国内外のランキングは例年と同様、1つ2つ読みたいものが見つかればいい、という程度の位置付け。長岡弘樹の「教場」は刊行当初から気になっていたが、本サイトでの評価が高くなかっただけに、上位になるとは予想外だった。

No.4 5点 蟷螂の斧
(2014/01/22 10:27登録)
国内ベスト10に投票者の誰が最も的中しているのかを見てみました。68名の投票者中、第1位は、筑波大学ミステリー研究会の5冊(6冊投票中)以下、京都大学推理小説研究会4冊、ワセダミステリクラブ4冊、個人では3冊が最大、0冊が15名との結果。海外篇では、第1位が、立命館大学ミステリー研究会の5冊、個人では最大4冊との結果。大学サークル(部員の投票結果?)が強いのは、やはり多数決の原理が働くという証明?(笑)。復刊希望・幻の名作では、「炎に絵を」(陳舜臣)「オイディプスの刃」(赤江瀑)「私という名の変奏曲」(連城三紀彦)「龍神池の小さな死体」(梶龍雄)「冷蔵庫より愛をこめて」(阿刀田高)「心ひき裂かれて」(R・二ーリィ)等々、好みの1冊が投票されていてうれしくなりました。未読分では、「コンピュータの身代金」「エッシャー宇宙の殺人」「十二人の手紙」に興味を惹かれ、今後のリストに入れます。

No.3 5点 HORNET
(2013/12/28 11:41登録)
法月綸太郎は好きだし、この作品もまぁ面白いのだが、これが1位になるというのは、今年は不作だったか…というのが正直な感想。「私のベスト6」のコーナーが結構好きで、特にミステリ作家を輩出している京大ミス研のランキングがいつも気になるのだが、以前は一般のランキングと全く違う独特の選出だったのに、その毛色がなくなってきて面白くなくなってきた。
 巻末の海堂尊の特別抄録は面白いが、最新作の切り売り(?)なのか、おいしい気もするしとって付けたような感じもする。
 まぁでもワンコインで買えることを考えると買って損はないかな。

No.2 6点 kanamori
(2013/12/12 12:03登録)
「このライトノベルがすごい!」を買うつもりが、間違って「このミス」のほうを購入してしまった(嘘)。

今年の目玉企画は、なんといっても”復刊希望!幻の名作ベストテン”投票。
国内編で小泉喜美子、梶龍雄、飛鳥高がランクインしているのがうれしい。さっそく東京創元社の企画会議では梶龍雄の復刊を検討していることだろうw 泡坂妻夫や連城三紀彦がもう”幻の”というのは困ったものだけど。
海外編では、参考作品リストに載ってもいない「魔術師が多すぎる」がブッチギリの1位というのには驚いた。大学ミス研の投票が多いから、これは「折れた竜骨」の影響だろうか。
マーガレット・ミラーの「まる天」は早川での復刊は期待薄だから、いっそのこと創元で全部揃えてくれればありがたい。
こういう企画は、ベストテン以外の個々の投票者が挙げているレア作品を眺めるのが楽しい。ジョン・ブラックバーンやタッカー・コウ、エクスブライヤ、ジョイス・ポーターなどを挙げている人には親近感を覚える。(なかには、自身の著作に投票している人もいた。切実な復刊希望なんだろうか)

恒例の”わが社の隠し玉”では、カール・ハイアセンのスキンク・シリーズ(文春文庫)、マーガレット・ミラーの本邦初訳作品(創元文庫)、リチャード・ニーリイの延び延びになっていたやつ(扶桑社文庫)が個人的注目作品。載ってないけどフィリップ・カーのグンター・シリーズ(PHP文庫)も楽しみ。論創社のウィザーズ&マローンは言及がないけど大丈夫か?

巻末の収録小説、今回は海堂尊の田口&白鳥シリーズ「カレイドスコープの箱庭」一編のみだが、ボケ~と読んでいたから最終ページで驚いた。(こんなサプライズ・エンディングはいらない)

No.1 7点 mini
(2013/12/12 09:58登録)
今年度版の新しい試み(今年限りかも知れぬが)として、『復刊希望!幻の名作はこれだ!』という企画コーナーが新登場
いつもの今年度のベスト6アンケートに加えて、投票者に復刊希望作を3作挙げてもらい集計する方式で、一応得点ポイントによるランキング形式になっている
各投票者が何を挙げたかも逐一載ってるのでお見逃し無きよう
一方でつまらなかったのは『私の宝物』、どうでもいい宝物の御披露に鑑定団も困惑、いくら宝島社だと言ってもねえ
まぁでもここ数年の”このミス”は500円でも高いと思ってたが、今年のは内容が割と充実しており(ランキング作品の質とかの議論は別よ)、これで500円なら納得じゃないかな
では恒例の我が社の隠し玉について(掲載順)

集英社:
アメリカの警察小説や北欧・スペインと順調なようだ、他社もそうだが来年は北欧から南へのシフトの予兆を感じるな

小学館:
海外1位はS・キングだが、その息子ジョー・ヒルの新作を予定、今年は長編だね

論創社:
昨年に比して今年は頑張った論創社、来期はさらに頑張って月2冊配本だってさ、息切れしないようにね、応援してますよ
トリックマニア読者だとP・マクとかベロウに注目が行っちゃうんだろうけど、私の注目はA・K・グリーン、サッパー、E・ウォーレスといった面々、この手の作家群は従来は無視されっぱなしだったから嬉しいニュースだ、ついでにオップンハイムとかキャロライン・ウェルズとかも御検討願いたい

東京創元社:
来年が創立60周年という事で気合入ってんなぁ
注目作を揃えた単行本に文庫はウォルターズ、オコンネル、あとロラックの「鐘楼の蝙蝠」
しかし私の注目はマーガレット・ミラーの未訳作だ
初期の傑作「鉄の門」と名作「狙った獣」の間を埋める時期の作だけに期待してしまうな

国書刊行会:
コリンズ「白衣の女」「月長石」と並ぶヴィクトリア朝期英国センセーション・ノベルの最高傑作との惹句が気になるのが、メアリ・エリザベス・ブラッドンの「レディ・オードリーの秘密」
年代もコリンズの両作の間で、「白衣の女」に触発されて書いたらしい
まぁ狭い意味での純粋ミステリーじゃないんだろうけど、国書らしいっちゃらしいよな
あとクラシックミステリの密かな企画というのも気になる

早川書房:
北欧系目白押しだが珍しい南米チリが登場、来期は北から南への転換期なのかねえ
早川は旧作の新訳復刊の方がファンは喜ぶんじゃねえの

SBクリエイティブ:
ソフトバンク出版のコンピュータ関連書は私も持ってるけど、最近は文芸作品にも分野を広げているんだね
もっとも以前はラノベばかりなイメージもあったが、来期は本格的に海外ミステリー参戦なら歓迎だ
ケン・フォレットに得意のIT系スリラーという事はどう考えてもラノベじゃないっすよね(微笑)

文藝春秋:
毎年ランキングに何冊か送り込むなど好調な文春だが、ディーヴァーとか定評ある作家のシリーズものも多く、皮肉な見方をすれば大物作家の名前頼みな感も有った
しかし来年は”10年に1度の新人”が登場予定だという、ここ数年来のビッグネーム頼みから脱却出切るか

新潮社:
昨今は冒険スリラー系に強い新潮社のイメージだが、注目はあのジェイムズ・M・ケインの最晩年の未発表長編でしょうね
”あの不朽の名作の新訳”ってのはあれか

光文社:
今は残念ながらミステリー専門レーベルから離れちゃった光文社
しかし好評の古典新訳文庫には特にミステリーとは銘打ってなくても注目作がいくつも有る、だったら再びミステリー叢書に参入されたらいいかがですか?
さて来期の注目はジェイムズ・M・ケインのあの名作、ってまさか新潮社とは偶然のバッティング?

原書房:
噂されてたヴィンテージ・ミステリが復活、来年はバークリーにパーマーに多分ヴァル・ギールグッド
トリックマニア読者には、カーの親友でもある本格派ギールグッドに注目だろうが、私の注目はもちろんパーマーだ
残念ながら前期のパズルシリーズじゃなくて後期作だが、パーマーの長編の翻訳はこれでやっと2作目、よく選んでくれた

扶桑社:
来年じゃなくて今年既に刊行済だが、S・ハンターの新刊は今話題のケネディ絡みだそうだ、タイミング良過ぎ
さて来年は得意分野の軍事スリラーや冒険系も順当に予定
私としてはコリア、マシスンなど異色短篇作家の『予期せぬ結末』シリーズの続きがどの作家になるのか気になる

講談社:
看板コナリーなども控えているけど、何と言っても最大の話題作はハリー・ポッターの作者J・K・ローリングが別名義で書いたミステリー小説だ
静山社じゃなくて講談社が版権取ったんだねえ、ところでハリポタにあまり詳しくない方、”静山社”という出版社を検索してみ、なかなか興味深いから

角川書店:
最近は話題がやや地味な角川、来期もこれは強力な一発というのが感じられないが、まぁ地味に良い仕事をする角川だけに期待は持てそう
しかし例年トリを務める角川にしては今回は作戦失敗?
これは今年の紅白のトリも異変があるのだろうか、いや無いな(笑)、今年で紅白卒業宣言の歌手も居る事だし

ヴィレッジブックス:
ルへインも賛辞を贈ったという新人の一発勝負といったところ
コージー派でも何でもいいから、ここは何か他の出版社とは違う特徴をもう少し押し出せばいいのにと思っちゃう

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