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ミステリの祭典

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切り裂きジャックの告白
刑事 犬養隼人シリーズ/改題『切り裂きジャックの告白 刑事犬養隼人』

作家 中山七里
出版日2013年04月
平均点6.43点
書評数7人

No.7 4点 ねここねこ男爵
(2018/04/03 20:24登録)
うーん、この作者さんにしては凡作かと。

以下ネタバレ含みます。

元々社会派色の強い作家さんなのですが、社会的テーマとミステリが高次元で融合しているのが魅力であるのに本作は脳死移植テーマに話の分量や惹きつけが片寄りミステリ部分がかなりがっかりです。新本格前に流行った業界裏事情モノみたいな。
そもそも犯人が犯行声明を出す理由がありません。目くらましのため云々言うてますが、わざわざミッシングリンクが移植に関わることを自分から教えるのは自殺行為でしょう。多少物騒な事件として少しだけ報道されるだけで済んだものを、日本中の一大関心ごとにしてしまったら二件目くらいでコーディネーターが情報提供するのは自明で、目くらましどころか解決を早めるだけです。結局コーディネーターはこの移植に絡んで不祥事をやらかしていたため保身を図り情報提供しないのですが、情報提供を拒むことは犯人が知るはずもなく偶然であり、言ってしまえば作者の話の都合でしょう。犯行声明も作品タイトルにジャックと入れたかったからでしょう。この辺の作者の商売の都合がすぐ見えるほど露骨で評価する気にはなれません。それで話が面白くなったわけでは微塵もないので…
また、動機はどうでもいい派なのですが、本作はちょっとチープかつ作者の他作品にほぼ同じものがありネタ切れなのかなぁと思いました。この動機は確かに使い勝手は良いのでしょうが。

No.6 7点 白い風
(2016/10/14 21:48登録)
内臓がごっそり切り取られている猟奇的殺人。
イギリスの”切り裂きジャック”を印象付ける題名でより猟奇性がプラス。
またサイドストーリーとして”臓器移植”の問題も組み込まれていて話は重みを増していたと思う。
中山さんお得意のラストのどんでん返しもそれなりに楽しめました。
シリーズ物らしいから犬養親子の今後も読んでみたいですね。

No.5 6点 パンやん
(2016/04/07 12:35登録)
脳死による臓器移植をテーマに社会派の要素をガッチリ入れて読み込ませ、さすがどんでん返しの雄、中山七里っと言いたい所だが、真犯人といい、動機といい、ちょい不満。って、「七色の毒」しかり、犬養刑事ものはどうも肌に合わないのかも。古手川刑事の方が魅力的なのよね。

No.4 6点 メルカトル
(2015/01/04 22:52登録)
事前に予想していたが、本家切り裂きジャックとはあまり深い関わりはない。序盤で明らかになるが、それよりも臓器移植の問題に真正面から取り組んでいるところから、社会派ミステリとも取れるような作風である。私見ではどちらかと言うと本格寄りだと思うが、いろいろ考えさせられる辺りは、単なる本格ミステリではない。
主役は犬養警部補だが、登場人物が多く、誰に感情移入するかは人それぞれだろう。私の場合は涼子の気持ちが最も心に響いてきた。自分の息子の各臓器が、レシピエントの体の一部としてその機能を果たしているというのは、ある意味息子が生きているとも解釈できるわけで、それがストーリーの一部分を支えてもいるし、エピローグで生きてくるのである。
また、犬養とコンビを組むのは『カエル男』の古手川で、彼は以前に比べてずいぶん成長しているように感じられる。ややぶっきらぼうな態度は相変わらずだが、刑事としての資質がうまい具合に開花しているのが、本作に花を添えていると思う。
まあとにかく、ミステリとしては勿論だが、臓器移植問題を考える上でも一読の価値があるだろう。

No.3 7点 蟷螂の斧
(2014/03/02 20:11登録)
~東京・深川警察署の目の前で、臓器をすべてくり抜かれた若い女性の無残な死体が発見される。戸惑う捜査本部を嘲笑うかのように、「ジャック」と名乗る犯人からテレビ局に声明文が送りつけられた。~             臓器提供の問題を扱った医療ミステリーです。医療倫理観に関し、僧侶と医学教授との討論は考えさせられるところが多かった。といっても「カエル男」と同様なサイコ系ミステリーでエンタメに徹しており楽しめました。

No.2 7点 まさむね
(2013/11/09 22:51登録)
 パズラーとしての楽しみはないですが,臓器移植のあり方など,かなり考えさせられる作品であります。
 臓器移植の背景としての,登場人物各々の「家族」の挟み込ませた方もニクイです。
 真相にはちょっと微妙な印象もありますが,ラストに泣かされそうになったので,良しとしましょう。

No.1 8点 虫暮部
(2013/09/03 10:44登録)
真相を読むとなんか酷い話である。
 捜査の中枢付近に位置する刑事と真犯人が、事件以前からああいうポジションで顔見知りだ、という偶然はちょっと微妙だ。刑事の公私に関する葛藤もテーマの一部なのだろうけれど。

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