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ミステリの祭典

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ハムレット狂詩曲

作家 服部まゆみ
出版日1997年09月
平均点7.80点
書評数5人

No.5 5点 メルカトル
(2020/07/29 22:14登録)
『劇団薔薇』新劇場のこけら落としで、「ハムレット」の演出を依頼された、元日本人で、英国籍を取ったケン・ベニング。ケンにとって、出演者の一人である歌舞伎役者の片桐清右衛門は、母親を捨てた男だった。ケンは、稽古期間中に、清右衛門を殺そうと画策するが…。様々な思惑の交錯、父殺しの謎の反転、スリリングな展開。結末は…真夏の夜の夢。
『BOOK』データベースより。

本サイト、Amazon、読書メーターと例外なく評価が高いですが、個人的にはそれほどとは思いませんでした。正直どこがこれ程評価されているのか不思議で仕方ありません。終盤まではかなり退屈でしたし、最終局面まである事実を引っ張り過ぎじゃないですか。シェイクスピアにも歌舞伎にも興味がありませんので、その意味でも楽しく読めたとは言い難かったですね。そして、倒叙物でありますが、清右衛門を殺そうとするケン・べ二ングの怨嗟がこちらに伝わってこないのにも不満が残ります。その殺害方法も行き当たりばったりで、計画性の欠片もありません。

皆さん書いておられるように、結末は爽やかさを感じます。サスペンスにしては珍しい後味の良さだと思います。ただ、やられた感はあまりありません。言ってしまえば、単純な構図でわざわざ長編でやるようなネタではない気がしますね。
私的には、プロット、リーダビリティに難ありと言いたいです。ですが、あくまで少数派の意見ですので、私の書評は参考にならないかも知れません。おそらく1%に満たない批判的感想だと思います。

No.4 7点 HORNET
(2020/04/29 15:44登録)
 ネット上の各レビューが非常に良いので読んだ。
 日本随一の劇団が、自らが建てる新劇場のこけら落としとしてシェイクスピアのハムレットを上演することになった。その演出を要請したのは、世界的に大成功を収めている日本生まれ、イギリス国籍の演出家 ケン・ベニング。しかしケンは実は、出演者の一人である歌舞伎役者の片桐清右衛門の私生児として生まれ、幼い頃に母と友の捨てられた身だった。依頼を受けつつ、これを機会とばかりに清右衛門の殺害を目論むケン。そんな動機で受けた仕事だったが、劇の制作になると芸術家本来の欲求を抑えられない。
 この作品のウケがいいのは結末のよさなのかな。正直ミステリとして特別卓越した作品だとは思わなかった。劇団を舞台にした複雑で微妙な人間模様や、ケンの芸術家としての天賦の才能の描写は確かに面白い。シェイクスピア作品には全く精通していないし、正直ハムレットも有名なセリフぐらいしか知らないが、読むことの障害には全くならず楽しめた。

No.3 9点 あびびび
(2019/11/21 13:16登録)
図書館から3冊借りてきて、一番最後に読んだのがこの作品。その題名からして苦手意識が先行したが、今までで読んだ本の中で最高の読後感の良さ。シェイクスピア関連の作品ということで尻込みしていたが、凄く分かりやすく、歌舞伎の落ちも納得、納得…。

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No.2 9点 ボンボン
(2016/01/06 18:35登録)
(ネタバレ注意)

どんな悲劇かと思って読み始めたが、終盤に近づくにつれクスクス笑いっぱなしだった。
一つの演劇の舞台、「ハムレット」の制作過程で起こった出来事が、鬱々とした2人のハムレット的人物の視点から語られる。この「ハムレット」の筋になぞらえた陰惨な気分の独白と、繰り広げられる状況のミスマッチ、その違和感がやがて可笑しみになり、最後は気分爽快で読了。
あー、結構たくさん騙されたなあ、と労働の後の心地よい疲労のように満足した。

著者の服部まゆみさんが、寡作のまま若くして亡くなってしまったのが本当に惜しまれる。もっともっと大きく評価されてよい作家だと思う。

No.1 9点 蟷螂の斧
(2012/06/30 20:45登録)
裏表紙より『劇団薔薇』新劇場のこけら落としで、「ハムレット」の演出を依頼された、元日本人で、英国籍を取ったケン・ベニング。ケンにとって、出演者の一人である歌舞伎役者の片桐清右衛門は、母親を捨てた男だった。ケンは、稽古期間中に、清右衛門を殺そうと画策するが…。様々な思惑の交錯、父殺しの謎の反転、スリリングな展開。結末は…真夏の夜の夢!?            サスペンスでこれほどの後味の良さを味わったのは初めてです。ハムレット上演の舞台裏が美しい文章で描かれており、どんでん返しも用意されています(さすが役者といったところ)。解説は俳優の江守徹氏ですが、ネタばれしています。

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