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ミステリの祭典

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彼女がその名を知らない鳥たち

作家 沼田まほかる
出版日2006年10月
平均点6.60点
書評数5人

No.5 5点 HORNET
(2024/06/16 20:06登録)
 あまりに感情に任せた主人公・北原十和子の生き様に、呆れや反発を感じながら読み進める。そんな十和子のわがままを無条件に許容し受け入れる陣治にも、何だか嫌悪を感じながら、それでも作者特有の複雑な心理描写の巧みさに魅入って読み進めてしまう。
 十和子が疑いを抱いている、「黒崎殺し」の真相がミステリとしての核だが、それについては…それほど驚天動地の結末という感もなかった。
 独特な世界観に、高く評価する向きもあるようだが、自分としては「まぁ楽しめた」。

No.4 8点 レッドキング
(2018/08/19 11:10登録)
現実と幻想の耐えがたい分離。幻想を維持するために現実を殺す女と、女の幻想を守るために信じがたいまでの献身を尽くす男。けれども現実から引き離された幻想は、土から引き抜かれた植物の様に儚く、新たな汚れた現実に呼び寄せられてしまう。ミステリの面白さと小説的リアリティ。相反する二つの要素の見事な融和。
※この作家への個人的思い入れから点数にはオマケ加算。

No.3 9点 touko
(2012/07/28 17:57登録)
(ネタバレかも?)












ダメな男女の共依存ということでは桜庭一樹の「私の男」、ミステリ的には東野圭吾の「白夜行」を思わせるものの、それぞれ評判のいいこの2作よりは、文学的には上だと思います。
美化しまくったそれらに比べて、みもふたもない生理的に不快な人物造形と歪な人間関係と、これまた歪んでいるし、ある意味絶望なんだけれど、感動すら覚えさせるラストのギャップが素晴らしい。

山田詠美が、これが直木賞を取ってないことに驚いたそうですが、直木賞は一作だけじゃなく、中堅作家の業績評価でもあるからそれは流石に無理でしょうが、まぐれにせよ、これは傑作。
桜庭一樹は色々なジャンルで、コンスタントに安定した作品を書ける力のある作家ではありますが、直木賞受賞作の「私の男」と単品で比較してしまえば、それが取れて、これが取れないのはおかしいと思っても仕方ないのかも?
山田詠美も好きな谷崎潤一郎の系譜でもありますが、芥川賞作家の金原ひとみなんかがよく描く病的なカップルものなんかより、(あくまでこれ一作だけなら)、うまく描けているとも思うんですがどうでしょう?

No.2 5点 シーマスター
(2012/07/18 22:36登録)
これは個人的には評判倒れ、期待外れの感が大きい。
帯の黒木瞳さんの絶賛ぶりには「あなたホントに読んだんですか?」と問いたくなる。まぁ限りなく恋愛小説でありミステリであることは間違いないと思うが。

プロットだけで言えば、いくらでも前例がありそうな代物だし、それにこれでもかと言わんばかりの衣付けのサイケデリック調の心情、情景描写には作者の表現力の無尽蔵ぶりを感じさせるが、感性が合わなければダラダラ水増しで面白いと思える代物でもない。自分的にはこの3分の1ぐらいの長さに纏めてもらえればまぁアリかなと。

読後に作者の生年を見てチョットびっくり。

No.1 6点 メルカトル
(2011/11/01 22:22登録)
主人公の十和子(33歳)は同居人の陣冶の不潔さ、いい加減さを忌み嫌い、憎んでいるが、なぜか離れられない。
彼女は失踪した元恋人との過去を引きずりながら、陣冶が彼を殺したのではないかとの疑いを抱いている。そこへ新たな恋の相手、水島が現れる・・・。
といった展開で、もうドロドロの男女の愛憎劇が繰り広げられる。
しかし、意外な真相とラストシーンは間違いなくミステリであり、全編を通してサスペンスが効いていて、限りない嫌悪感を抱かせながらも、最後まで読ませてしまう腕は確かである。
同作家の『猫鳴り』も読んだが、とても同じ作家の手になるものとは思えない作風の違いで驚かされる。

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