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ミステリの祭典

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ビブリア古書堂の事件手帖
栞子さんと奇妙な客人たち

作家 三上延
出版日2011年03月
平均点6.44点
書評数25人

No.5 7点
(2012/04/18 10:08登録)
一話ごとに謎解きあり、最終話では大きな謎が解明する、典型的な連作短編集。
どの短編もプロット良し、謎解きレベル高し?
しかも、しっとりとした雰囲気も良し。安楽椅子探偵役は対人恐怖症気味で本好きな美人店主の栞子さん。よって、キャラクタも良し!

4話とも、古書にまつわる薀蓄を散りばめながら話が進み、栞子さんが少ない情報をもとに真相を解明していく。テーマは、ほのかな恋愛というところか。どれがベストということはなく、甲乙はつけがたい。ただ、最終話はそれまでのしっとり感とちがって、ややドタバタ気味(ある意味、スリルとサスペンス)なのは評価が分かれるところでしょう。まあ、このぐらいでないと連作短編の最終話として盛り上がりに欠けるのでしょうね。ちょっと微妙な印象ではありますが。

ネタ元書籍の「○○○○」を読んだくせに最終話の真相を見抜けなかったことには悔しい思いもありますが、それ以上の満足感が得られました。
こういう作品は、少ないファンの間でひそかに読んでもらいたいなという気持ちはありますね。でも、これだけ目立って売れてしまえば、「告白」「謎解きはディナーのあとで」を追い抜くぐらい、とことん売れてほしいという期待感もあります。

No.4 6点 E-BANKER
(2012/03/19 23:44登録)
北鎌倉の住宅街にひっそり佇む古書店「ビブリア古書堂」・・・
店主である栞子さん(美人で巨乳!)とアルバイト店員の五浦を中心として、古書を巡る不思議な世界が紡がれる。

①「夏目漱石『漱石全集・新書版』」=五浦が本を読めなくなった理由がこの夏目漱石全集の中の1冊、「それから」。栞子さんと出会い本に関する彼女の類まれなる推理力で、五浦の祖母の秘密が明らかになる。
②「小山清『落穂拾い・聖アンデルセン』」=ビブリア古書堂の常連の「せどり屋」が巻き込まれた古書の盗難事件。で、盗まれたのがタイトルにある小山清の作品なのだが、「新潮文庫」だけにある「ある特徴」が事件の鍵に・・・本好きならすぐに分かるよね。
③「ヴノグラードフ・クジミン『論理学入門』」=タイトルだけ見ると、「何だそりゃ?」という気になるが、ストーリーは不器用な男と、男を一途に愛する馬鹿な女のちょっと泣かせる話。「三段論法」なんて小難しい話にしなくてもいいのに・・・
④「太宰治『晩年』」=本作では、栞子さんのある秘密が明らかになる。そして知る敵の存在。古書の世界ってこんない熱いものなんだなぁー。そして今後に期待を抱かせるラスト・・・

以上4編。
さすがに売れてるだけのことはあって、軽そうにみえてしっかりしたプロットを感じる作品集。
1冊の古書は多くの人の人生を背負って書店の棚に並んでるんだねぇ・・・
そう考えると、某「Book-○○○」で無造作に並べてある均一本に対しても愛着が湧くかもしれません!

連作形式で、「栞子さん」の謎が徐々に解きほぐされるのもなかなか良い。
ミステリー的なガジェットとは無縁だが、まずは軽~い気持ちで読める佳作でしょう。
(ベストは①。②④はまずまずだが、③はちょっとなぁ・・・)

No.3 7点 メルカトル
(2011/11/30 22:08登録)
このような良作が世間の注目を集め、人気を博しているのは非常に喜ばしい事だと思う。
古書にまつわる日常的な謎を、入院中で安楽椅子探偵の栞子さん(ビブリア古書堂の店主)が最低限の情報だけで解決に導いていく、という連作短編集。
しかし、最終話では思いもよらない展開が・・・
途中、何度も女性作家による作品と勘違いしそうになるほど、描写が細かいと言うか繊細である。
栞子さんと、ビブリア古書堂でバイトをすることになった大輔との微妙な関係も、今後どう発展して行くのか気になるところだ。
続編も読みたいが、makomakoさんのように近所に大型書店がないため、しばらくは我慢するしかなさそうである。

No.2 8点 makomako
(2011/11/24 07:50登録)
こんな雰囲気の小説好きです。奇抜なトリックや連続殺人などはまったくなし。きわめて不器用な美人の女性が一冊の古書から隠されていた過去を推理していく。4つの古書にかかわる話が有機的に絡み合ってなかなか面白い。繊細な栞子さんと普通の大男大輔の掛け合いもほほえましい。

No.1 7点 kanamori
(2011/10/27 18:28登録)
北鎌倉の駅近くにひっそりと営業する昔ながらの古書店。そこの極度に内気で美人の店主・栞子さんの安楽椅子探偵もの4作が収められたビブリオ・ミステリ。

語り手であるアルバイト店員「俺」の亡き祖母の秘密が、漱石全集の「それから」と綺麗にリンクする第一話。新潮文庫にあって他の文庫にない特徴から解かれる”日常の謎”の第二話など、古書にまつわる蘊蓄を絡めながら、秘めた恋、淡い恋、爽やかな夫婦愛など、男女のさまざまな人間模様を描き出していて、読み心地のいい連作短編集でした。
最終話の内容から続編は期待できなさそうなのが残念です。(と、思っていたら早くも続編が・・・笑)

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